第七話 マルチに
「職業っていくつまで選べるんですか?」
あの研究者は、賢者でもあったらしいし、武器作りにも造詣があった。おそらく今でも複数職を持てるはずだが。
「複数の職業に就きたいということでしょうか。でしたら可能ですよ。」
ああ、良かった。これで研究者から貰った武器を全部使うことが出来る。あの武器達は、一度使ったら使用者を記憶するらしいので、俺が使えなかったら誰かに託さなければならない。
ただ、俺の目的は世界を救うことなので、誰かにその役割を一部担って貰うことになるかもしれない。それでも、この武器は俺が使って活躍させなければならない、そんな気がする。これは、思い込みだと言われるかもしれないし、横暴だと思われるかもしれない。実際そうなのかもしれないが、複数人が使うことが想定されていたら、初めて使用した者を記憶する機能なんか邪魔にしかならない。だから、俺はこの武器を全部、自分で使いたい。
話が逸れたが、俺は複数のジョブに就くことが出来る。とりあえず書けるだけ書いてみよう。
「一番は、魔術師かな。剣士とか槍士、弓使いも書いておこう。」
「あの…」
受付のお姉さんに止められる。
「はい?」
「あの、複数の職業選択しても、適性がないと合格出来ませんよ。」
「え、でも複数のジョブになれるんですよね?」
「ですが、複数っていっても、[治癒術師と調薬師]とか、[鍛冶師と剣士]等の取り方が一般的でして…」
「え、調薬師とかってジョブ必要なの!?」
「驚くところそこじゃないのですが…。調薬師等の非戦闘職は、ジョブがなくても商売自体は可能です。ですが、ジョブがあれば[ギルド認定の実力]と証明することができます。」
なるほど。それが宣伝材料となり、商売を優位に進められるってわけか。
「さらにランクを上げると、商売も好待遇になります。」
「へえ、そういう職もランク上げられるんだ。」
「はい。戦闘職とランクの上げ方が少し違うのですが、例えば調薬師の場合、高品質のポーション等を納めることで、ランクが上がります。ランクを上げると商売で有利になるだけでなく、ギルドから土地や賞与がもらえる場合があります。」
「なるほどなあ。」
これで非戦闘の職業のことがわかった。まあ、資格のようなものだろうか。これは、いくつかとってみるべきかもしれない。
あと、もう一つ気になることが。
「あの、戦闘職とは他に、冒険者というのがあるんですが。」
「はい。冒険者になる方は必ずとって頂く職業です。冒険者はギルドへの貢献度を表すもので、その他の戦闘職は実力を表すものといった感じです。」
更に詳しく聞いていくと、冒険者ランクは依頼をこなした回数や質、難易度を加味して考えるらしい。それに比べて、剣士等は、試験官の試験を受け、合格したら昇格といった感じだそうだ。
冒険者ランクもギルドへの貢献度が示準になっているので、非戦闘職に扱いが近いのだろう。
「ですから、先ほど説明させて頂いた通り、戦闘職は試験に合格しなければならないので、それを踏まえて…」
「じゃあとりあえず冒険者、剣士、戦士、槍士、魔術師、治癒術師、弓使い、武闘家だけお願いします。」
「あの……もう一度説明しま…」
「いえ、全部試験受けます。」
「わかりました。では、冒険者に関してはFランクで今すぐ登録しちゃいます。試験は午前と午後毎日やってますので、一つずつ受けてください。予約は明日の午前から全ての職空いてますので、最後に予約していってください。それでは、ギルドに関する簡単な説明をします。」
簡単な説明を更に簡単にまとめる。
・入り口から右手の壁一面は依頼ボード。毎朝貼られるので、依頼受け付けに持って行く。
・ギルドカードの表面は冒険者ランクや、非戦闘職のランクに簡単なプロフィール。裏面は戦闘職のランク。銀行を利用するときにも使う。再発行は金貨1枚と、ペナルティ(冒険者ランク降格など)。
・地下は酒場がある。受付の脇の通路奥には、素材の解体等を行う作業場みたいなのがあった。。二階は応接間などで、基本立ち入り禁止。
・この建物以外にも訓練場や、ギルド運営の不動産等が街の中にある。
・全部の職はFからSランクまである(昇格条件はまちまち)。
ギルドからの説明はこんなところか。他にも通貨についても分かった。
【石貨<大石貨<銅貨<銀貨<金貨<大金貨<白金貨】
の順だ。石貨10枚で大石貨1枚というように、『<』で価値が10倍になっている。
そんなわけで、明日以降の試験の予約を済ませ。登録手数料分を引いた金貨9枚と銀貨8枚を持って、俺はギルドを出た。
これで、ここでの生活基板の基盤は出来上がった。これからたくさん貯金して、家を買う。そのために、宿をしばらくとる必要がある。更にその準備として、今日ギルドに登録した。まだ俺の旅は始まったばかりだ。
「まずは宿をとらないと…」
もう、日が暮れそうだ。とりあえず寝ようか。