8
時は遡り、玄一が望月家のダンジョンで鬼達に襲われた次の日
唐沢家ダンジョンにて王種が誕生する
その王種はもっとも浅いダンジョン地下1階で生を受ける
生まれながらにして周りの兎とはなにか違う事を感じ取る
地下1階にいる通常種の兎達も自分たちの頂点に立つ者が現れた事を本能で感じた
王種は近くの水面で自分の姿を確認する
周りの兎にあるはずの角がなく、顔つきが他の兎とは違っていた
王種(角なし)はその場で叫びその階層にいるすべての兎を集めた
生まれたばかりでなんの情報ももたない まずは情報がほしかった
集まった兎達から いろいろな話を聞く
・自分達はダンジョンで一番最弱だという事
・魔素が濃い下階層に行きたいが 縄張り意識が強く ここにしか居場所が無い事
・最近はないが以前人間が仲間達を虐殺したこと
角なしは話を聞き自分よりも弱いこの兎達を導く事が自分の使命だと感じた
まず2階の兎達に話をつけに行く、2階の兎達も将来自分達の王になるであろうことは本能で
わかっていたが、2階層の体が一回りでかい強化種(色付き)である兎が自分より弱い者にしたがう道理
がないと、かたくなに話に応じる気がなかった
「と いうわけでみんなで仲良くだな?」
「はッ!!まぁお前は将来俺たちの王になる素質はあるようだが、儂より弱い相手のいう事を聞くわけにいかねーなぁー」
「どうしてもっていうなら力ずくできな!」
「・・・・」
「臆病兎の話なんて聞くことはねぇ!おとといきやがれ!」
仕方がない、一階へもどり 今度は地上に思いをはせる
地上は魔素がダンジョン内よりかなり薄いと聞いていたが 外の世界なら魔素が濃い場所もあるかもしれない
かすかな望みを抱え 一羽で外にでる
洞窟を抜けると急激に魔素が薄くなる
これでは自分はともかく一階の兎達には死活問題になりかねない だが近場に魔素の濃いところがあるならば・・・
そんな思いで、洞窟を囲っている建物の扉を開ける
外の様子を伺う 聞き耳を立てるが、音もなく、なにもいる気配はなかった
何度も安全を確認し一歩外の世界に足を踏み出すと さきほどまで何もいなかった場所に
大きな鹿が現れた
兎はなんの音もたてずに現れた神鹿を見てすぐにダンジョンへ逃げ込む
本能で気づいてしまった あれは関わってはいけない 自分達とは対極のはるか高みにいるもの
これで外の世界の望みの潰えた
ダンジョンに戻り考え込む
なにか解決方法はないのかと、だが思いつく事はなかった
数日後
もう一度2階へ赴く
色付きである兎に対しタイマンを申し込む
自分が勝てば 一階二階ともにいききをできる様にし、共存する事
相手が勝てば 二度とこの階層へこない事であった
場所を2階のフロアへ異動する
色付き、角なしの周りには二階の兎達がギャラリーになっていた
角なしは生まれて間もない自分と、古豪であろう色付きでは現時点で色付きの方が強いという事はわかっていた
だがもうここにしか可能性は残っていなかった
戦いが始まるが戦況は一方的であった 角なしが本気で蹴りをいれてもまるで利いていないのだ
角なしは必至で蹴りを入れる 色付きはそれに対し角と蹴りを返す
角での攻撃を受けると致命傷なのは見るからに明らかなので必死に回避する
だがそのせいで蹴りまで注意が回らず 蹴られてしまう
色付きの蹴りは体の芯まで響く
皆のように角があればまだどうにかなるのに そんな恨み言がでてきそうであった
その後も角を避けるが蹴られてしまい 徐々に体力を失い もう角を避ける事ができなそうであった
色付きは角なしにとどめをさすべく 角を振り上げる
その時角なしは、はるか昔の事を思い出したかのようにつぶやく『超躍』・・・・
使い方は本能でわかっていた
足に力を込め 強化種にむかって 跳ぶ
色付きは振り上げた角を下ろす前に角なしの体当たりにより壁にぶつかり意識をなくした
角なしは色付きに対して命を取る事も可能であったが、そこまではしなかった
色付きが意識を取り戻し 角なしの元へ戻る
「この勝負儂の負けですわ、命まで助けてもろうて、すみません」
色付きが角なしに対して頭を下げる
「お、おう、これで約束は守ってもらうぞ?」
「へぇ」
「ひとつ儂の願いを聞いてもらえんでしょうか?」
「なんだ?」
「儂をあなたの子分にしてくだせぇ」」
「・・・・・?」
ちょっとなにいってるかわからない
「いや俺は子分をとるつもりはねえよ、みんなで仲良くやれりゃあ・・・」
「そんな事いわねえでくだせえ・・・このとうりです」
色付きは体を伏せ 耳を地につける・・・・服従のポーズであった
「わかった・・わかったよ・・・じゃあ子分にしてやるから・・・」
「へい 親分、ありがとうごぜぇます」
「お・・・や・・ぶ・・ん・・・だと・・・」
「なんですか 親分!! なんでも命令してくだせぇ!!」
すると周りのギャラリーからも
「おーやーぶん!!おーやーぶん!!」 「おーやーぶん!!おーやーぶん!!」
「おーやーぶん!!おーやーぶん!!」 「おーやーぶん!!おーやーぶん!!」
角なしは軽くこめかみを抑えながら
「うん、ちょっと俺一階に戻るから後よろしく」
そう告げ一階へと戻った
一階の兎達を集め事の成り行きを話し、みなを引き連れ二階へと降りる
通路の左右に二階の兎達が並んでいた
みなを引き連れ 先へ進むと自分が進むと同時に左右の兎達が頭を下げた
すると一番奥でさきほどの色付きが待っていた
「親分、この階全羽にすべて伝えてあります、よろしくお願いします」
と頭を下げた
「そういえば お前 名前ないの?その、呼びづらいんだけど・・・・」
「へぇ 儂には名前なんてもんはありやせん」
「そ、そうか・・・・」
「よかったら名前を付けてくだせえ」
「そんな大事な事、今すぐ決められない・・・だろうよ・・・・」
「このとうりで・・・」
そうつぶやき服従のポーズをしようとする・・・
「わかった わかったから そのポーズやめろ・・・」
色付きの顔を眺める・・・・眺める・・・よくみるとこいつの顔・・・・
周りの兎より自分に近い 通常種だけ顔があんな感じなのだろうか・・・
すると
その時角なしに電流走る 圧倒的閃き!!
「フレミー・・・・?」
なぜか色付きのでかい体をみて閃いた
「フレミーそれが儂の名・・・」
「親分ありがとうごぜえます」
服従のポーズを(ry
「わかった わかったから 」
「一階から来た兎達を案内してやってくれ」
「へい 親分」
「お前ら聞いてのとうりだ 案内して差し上げろ!!」
すると二階の兎達が一階の兎達になにか耳打ちをする
すると一羽ずつ自分とフレミーに頭をさげ案内が始まった
その後一階と二階のいききは自由となり一階の兎も数日で二階に慣れ生活できるようになった。
一階の兎は二階に移り住んだがフレミーの指示により外敵がいつきてもいいように一階の警備を当番制にした
一階にはそのためいつでも数羽の兎達がいた
その後、通常種達がフレミーの事を名前で呼び始めたが その名は親分だけが呼んでいいといいだし若頭と呼ぶ事になる
通常種の中でも名がほしい者達がいたようだが、フレミー(若頭)によって強くもないやつにやる名はないと一蹴された
全羽に名前を付ける苦行は回避できたが 少し可哀想にも思える
「フレミーそういえば聞きたい事があるんだが?」
「へい なんでしょう?」
「下の階に行ったことあるか?」
「一度力試しで5階までいった事がありやす」
「そうか!詳しく聞かせてくれ」
「3階4階はそれなりの兎達がいやす、2階の兎達には少し荷が重いと思われやす」
「儂一羽ならどうにでもなりやす、ただ5階には通常種なんですが長生きしている兎がいやして」
「喧嘩売ったんですが・・・その相手にされないというか、小難しい話をされやして、興がそがれたんで戻ってきやした」
「そうか・・・・驚かないで聞いてくれ、俺はこのダンジョンの兎達をまとめようと思う・・・」
「親分・・・そういう事なら儂にまかせてくだせい 力ずくで下のやつらを・・・」
「いやいやいやいや フレミーの話だと5階の長生きしてる兎は話わかりそうだ その兎のところまで案内してくれ」
「そうでございやすか? 儂と親分でなら力でも余裕で・・・」
「俺がいいっていうまで力ずくなしな?いいな?わかったな?」
「へ、へい」
「それじゃあ、案内頼む」
「へい親分!!」
3、4階へいくと兎達はフレミーの姿をみて逃げ出してしまう、無駄な争いが無い事はいいことだが、話をする間もなかった
5階の兎は逃げはしなかった、むしろ俺の事を興味深そうに見ていた・・・・
それを見たフレミーが
「おう!!なに親分にガンくれとんじゃわれ!!尻の穴に角つっこんで前歯がたがたいわせたろかい!!」
喧嘩を売っていた・・・・・
「どうどう どうどう」
フレミーを諫める
落ち着いて話をしてみると案内をしてくれるらしい
5階の兎達の中ではその兎は長老と呼ばれているようであった。
そして6階へ降りるための階段があるフロアへつく
そこには十数羽の兎達がいた それをみるとフレミーが案内した兎に対して
「われ!!罠にはめようって魂胆やったんか?この腐れ畜生が!!」
と案内してくれた兎の首をしめる
案内してくれた兎は首を絞められ声が出せないが否定の意を込めて必死に首を横に振っていた
俺はフレミーの頭に蹴りを入れる
「フレミー 子分やめるか?いう事聞けないならやめるか?ん?」
兎の首から手を放し
「親分、すいやせん、いう事聞くんで破門だけは・・・・・」
「次やったら本当に子分やめさせるからな?いいな?」
「へ、へい」
「じゃあ 首絞めた兎に謝れ」」
「へ、へい」
フレミーは首を絞めた兎に対して詫びを入れていた
その後フロアの隅の草が茂っているところを草をかき分け奥に進むと先ほどのフロアの1/3程度の小部屋があった
部屋に入ると他の兎達と違い長毛の兎がいた
俺に気づくと
「お待ちしておりました、われらが王なる兎よ・・・」
「騒がしいと思ったら、色付きお主も一緒であったか・・・・」
「おう、じいさん久しぶりだな?今日は親分が用があるってよ!!」
「親分・・・?王の事をいっておるのかな?」
「フレミーが勝手にいってるだけだ気にしないでくれ」
「フレミー・・・色付きお前すでに王から名前を授かっているとはな・・・」
「へへ・・・」
「で本題だが 俺はここのダンジョンの兎達をまとめるつもりだ・・・長老といわれるお前に力を貸してほしい」
「ええ それは私達の本懐ですから喜んで受けさせていただきます」
「ただ 今 問題がありまして・・・・・」
「ん?なんだいってみろ」
「6階から狼どもが5階に上がってこようとしているのです」
「ここ数日の間に変化がありまして 見ていただいたと思いますが そのためにフロア十数羽の兎達を置いているのです」
「今日までに二回ほど5階に上がってきております、多数の犠牲がありましたが 追い返す事には成功しております」
「6階からの攻撃があと数回あればば5階の兎達の将来はありますまい・・・王、このとうりです我らをお助けください」
服従の(ry
「わかった わかったから」
どいつもこいつもすぐ服従のポーズを このポーズをとるという事は死と同意義でもあるというのに・・・・
「だがなぜ狼たちはこちらに上がってくる?なぜ魔素の薄い上の階に・・」
「種族が違うため、交流もなく、なんの情報もありません」
「ただこのままでは、5階の兎の全滅は必至、そうなれば4階、3階と・・・・」
「新しく生まれてくる兎はどうなる?」
「狼共が定住した場合、時間はかかりますが、狼が発する魔素によってその階層のサイクルが変わり
兎ではなく狼がうまれる事になると思われます」
「種族ごと根絶やしになるか・・・・」
「そうしたら まず兎達をまとめなければ・・・・5階はまとまるか?」
「はい、どの兎も私のいう事なら聞くでしょう」
「となれば問題は3、4階か・・・・」
「フレミー急ぎだ!3,4階の兎達をまとめ上げてこいすぐにだ 多少なら力をつかってもいい」
「へい!!親分!!まってやした!!」
フレミーは急いで部屋をでようとする
「色付き待て 5階の兎達もつれていけそのほうが速かろう・・・」
「おう、じいさん悪いな、 親分いってきやす!!」
「おう気をつけてな」
「で どこかにすべての兎が収まるようなフロアはあるか?」
「5階の中央に広いフロアがあります」
「最低限の警備を残してそこに集合させてくれ」
「はい わかりました」
フレミーと5階の兎達は数時間で3、4階の兎達をまとめあげ、1-5階すべての兎が5階中央フロアに集まった
見渡すと壮観であった 白い兎達が部屋いっぱいに敷き詰めていた
「みんな集まってもらってありがとう」
「みんなに集まってもらったのは我々兎の種が危機に瀕しているからだ」
「理由はわからないが6階から狼共が攻めてきて、すでに多数の犠牲がでている」
「もし5階がやつらの手に落ちる事があれば、その上の階の将来も時間の問題だろう」
「我々は今岐路に立っている、このまま怯えて種を根絶やしにされるか、狼共を倒すかだ」
「俺は兎である事に誇りを持っている、兎を根絶やしにされる事を許す事はできない」
「だが生まれて間もない俺一人の力では狼共を倒すことはできないだろう」
「俺にはみなの力が必要だ、どうか俺に力を貸してくれ!!」
フロアに集まった通常種の兎達は話が始まる前から、本能で王たる兎だという事はわかっていた
本来なら力で伏せられ 死にに行くのも役目だが、王が我々通常種に耳を下げ頼んだのである
すると1、2階の兎達が
「おーやーぶん!!おーやーぶん!!」 「おーやーぶん!!おーやーぶん!!」
「おーやーぶん!!おーやーぶん!!」 「おーやーぶん!!おーやーぶん!!」
この歓声に3,4,5階の兎達も続く
「おーやーぶん!!おーやーぶん!!」 「おーやーぶん!!おーやーぶん!!」
「おーやーぶん!!おーやーぶん!!」 「おーやーぶん!!おーやーぶん!!」
フレミーが一歩前へでる
「お前らー いまから全兎で狼共にかちこみじゃー!!!」
「親分と儂についてこい!!!」
「おー!!!!!!!!!!!」
6階への階段へ向かって、俺とグレミーと長老が先頭を走る
後ろからも皆がついてきて 通路はまるで白い川のようであった
「よし フレミーは俺と前線で 長老は後ろで兎達の指示を頼む」
「王と一緒に戦いたかったのですが、それが命であれば従いましょう」
「まかせたぞ」
長老は速度を落とし後方へと移動していく
6階へ突入
通路に数匹の狼たちが 勢いを落とさず俺とグレミ-で一撃を入れていく
だが俺やフレミーの一撃で倒す事はもちろんできない だが一撃で怯んだところに数百羽の兎の川が狼達を飲み込む
そんな調子で6階の狼達を飲み込んでいく
1時間足らずで6階を制圧してしまった
その後各階へ警備を残し6階へ定住した
「長老、サイクルが変わるまでどれぐらいかかる?」
「一ヵ月もあれば可能だと思われます」
「そうか、それまでは7階の入り口 各階の警備の指示を頼む」
「親分 わかりました」
とうとう長老まで親分呼びになってしまった・・・・・
「そういえば長老も名前ないのか?
「親分につけていただけたら・・・・」
「服従のポーズはしなくていいぞ」
俺は食い気味に言った
長老の顔をじっくりみる うーん うーん 長毛だから下から覗きこまないと目がみえない
でもフレミーと同じように普通の兎と比べると俺よりかな?
うーんうー!?!??!?
ピコーン!!
「アンゴ・・・」
「アンゴですな?親分ありがとうございます」
だが悲運な事にその後グレミーに叔父貴と呼ばれるようになり、他の兎達からも叔父貴と呼ばれる事に・・・
6階が安定するまでの一ヵ月の間、生まれてくる狼を複数の兎達で倒していく
すると通常種の白い兎の中に色付きが出始めた
アンゴに聞いてみると狼を倒した事により魔素を吸収し色がついたのではないかとの事だった
「そういえば親分、親分って名前ねぇんですか?」
「そういえばそうですの」
「いや俺は親分でいいよ・・・・・」
実は自分の名前は生まれた時にわかっていた あえて隠していたのだ
なぜかはわからないが 少し恥ずかしい感情があったからだ
そして一ヵ月ぐらいたったころ 新しく兎が6階で生まれた
6階のサイクルの変更が完了したのだと確信した
7階への侵攻を考るため、フレミー(若頭)、アンゴ(叔父貴)と一緒に話をしていると
「地上より侵入者あり、地上より侵入者あり!!!」
警備にあたっていた兎が俺たちのところへ飛び込んできた
「わかった俺達がいく フレミー、アンゴついてこい!!」
「へい」
「はい」
「他の兎達はみつからないように6階に隠れていろ!5階で迎え撃つ!!」
5階中央フロア
中央のフロアで待ち受ける3羽
警備の兎が人間を引きつけこちらへやってくる
侵入者の姿が見えた こいつ狼より強い・・・・直感で感じた
五階の中央フロアで対峙する3羽と一人・・・・・・・・・
-----------------------------------------------------------
一部フレミーがグレミーになっていたので修正しました