光
適当に書きました
適当に読んでください
天使を見た。
冬の澄んだ空気がそう思わせたのではない。
少年はその日、確かに天使と出逢ったのだ。
「……やっと見つけた。これからよろしくね、メイドくん」
「え?」
理解するより早く、天使は奪っていった。
少年の心を、唇を。
12月21日。午後の授業を終えた斉賀ハルは早々に帰宅の準備を整えると、担任によるHRをBGMに窓の外を眺めていた。
いつもと変わらない、都会のごみごみとした風景が絶え間なく流れている。担任の話もまたいつもと変わらず事務連絡をするだけだ。別に聞く必要もないだろう、ハルはそう思っていた。
「斉賀ぁ、3学期はいつからだ?」
不意打ちである。
「わかり……」
「……ました1月7日からです」
担任はうむ、とだけ告げると連絡事項を続けた。窮地を逃れ視線を担任から窓の外へ戻したハルは、隣の席に向かって親指を立てた。
「危なかったね〜」
隣の生徒はニヤニヤと笑いながらささやいた。
垣本マナ。彼女の身振り手振りアシストによってハルは担任の奇襲を免れたわけである。
所謂"席替え"のないこの高校において、第3学年に上がってからずっと隣の彼女は、いわば良き隣人である。
「助かったわ」
「感謝くらい目を見てしなさいな〜」
隣人との今日のやり取りはそれで終わった。
明日から高校は冬季休暇に入る。部活動をしている生徒たちは休みなんてあってないようなものらしいが、ハルにとっては2週間ちょっとの長い虚無である。
というのも、彼の悩みが原因であった。これといって没頭できるものがない、それこそがハルが17年間抱え続けている人生最大の悩みである。
人並みに友達はいるし遊びもする。が、心から楽しめるものが存在しない。ゆえに部活動はもっぱら帰宅部であり、趣味もこれといって存在しない。
両親はそのことを心配してくれてはいたが、最近ではもう諦めてしまったようだ。
「さて明日からどう過ごすかな……」
窓から見える景色はなにも答えない。
答えないはずだった。
「ねぇ、あのひか」
隣人の声は激しい光と轟音によってかき消された。窓の外はいつもの日常から地獄へと、瞬く間に姿を変えた。人が宙へ舞い上がり、消えていく。窓ガラスは割れ、建物が光に飲まれる。
ハルの意識もまた、光の中へ没した。
やる気と余力があれば続き書きます