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当たり前だった日常生活の異世界化  作者: 結城楓
序章 新たなる時代
3/3

第三話『二つ目の学校』

国立短期魔導師学校は単位制となっていて火、水、風、雷、木、地、光、闇、回復、補助の計十単位のうち、六単位を習得をすると、卒業ができ図書館の利用権や研究権なども同時に獲得できる。


説明書をもらい教室に案内された悠樹と風香を合わせた第一期の三十人が集まった。


「それでは教科書配るので席についてください。配布をした後二時間の授業をしたら解散となります。」


この学校は教科書配布があり、少しの授業があるだけで後は自習の後試験を受ける仕組みを設けている。


教科書の配布も終わり、魔導演習場に移動した生徒の授業が始まった。


「まずは最初のイメージトレーニングです。火はライターを、水は水鉄砲を、風は団扇を、雷は静電気を、木は芽生えを、土は岩を、光は携帯のライトを、闇は暗闇をイメージすると分かりやすいです。また、回復と補助はイメージしづらいですが、ゲームをやっている方でしたらイメージしやすいと思います。やっていない方でしたら回復は傷が治るイメージを、補助は幻惑や幻聴、動物などをイメージすると良いと思います。それでは各自実践してみて、もしわからないことがあれば聞いてください。」


各自の魔法イメージトレーニングが始まり悠樹たちも始めると半数くらいはすぐにできたが、残りの半数はなかなかうまくいかず躓いているようだったので、できた半数は次の日程の告知を受け解散となり、残りは先生から指導を受けることとなった。


「風香、俺は総合センターいってギルド登録してから実戦行こうと思ってたけどどうする?」


「私も一緒に行くよー!」


 二人が建物を出て帰ろうとしたときふいに後ろから声をかけられた。


「あ、あの!すみません!」


声をかけてきたのは後を走って追いかけてきたのだろうか、少し汗をかきいきをきらした一人の少女だった。


「初めまして、優奈といいます。高一です。今入れてくれるギルド探していまして、もしよかったら私もお二人のギルドに私も入れて頂けないでしょうか?」


「えっと、優奈さん?なんでまた俺らのギルドに?」


「はい。これを託せる方を探していまして。」


そう言って優奈が渡してきたのは巫女の証だった。


「こんな貴重なものをどうして俺たちに?」


「はい、私はギルドを作ろうとは思っていなくて、信用できる人を探していたところお二人の会話を偶然耳にしまして。」


「あ、なるほど。わかりました、そういうことだったら力になるよ。俺は悠樹、こっちは風香。これからよろしく。」


「よろしくね!」


「は、はい!こちらこそよろしくお願いします!」


(まあ、インターネット先行予約版の限定チュートリアルモンスター、しかもそのモンスターを倒した人だけの限定レアアイテムである『巫女の証』は移譲しかできないトレード禁止アイテムだからこそ、恐らく持っていることがばれただけで変な輩に絡まれる原因になるアイテムでもある。当然持っていたくない人も出るだろうな。)


こうしてギルドのステージをⅢにする事が出来るようになりメンバーも三人に増えた。この事を総合センターにステージⅢの登録をしに行くと思いもよらない事態になった。


「天空魔導団の皆さん、初のステージⅢギルド登録おめでとうございます。この事はマジックヘブン・フロンティアのニュースになりますので、恐らく入りたいという方が集まると思います。トラブルには十分ご注意ください。」


受付の人に忠告されあまり実感の湧いていない三人は気を付けようとだけ思いながら外に出るとすぐに忠告の意味を理解することとなった。


総合センターから外に出ると周りから注目が集まり入れてほしいという人がざっと百人ほど集まり有名人が出てきた現場のような人だかりができていた。


そのほとんどの人からギルドに入りたいとせがまれ俺は聖徳太子じゃない、と思いながら悠樹は言った。


「ちょ、ちょっとまってくれ、そんないっぺんに言われても分からないって。申し訳ないけど巨大ギルドにするつもりはないから他をあたってほしい。」


「なんだよけち臭いな、もう行こうぜ。つまらねー。」


「残念だったねー。」


と愚痴を言いながら八割くらいの人が帰っていく中、残りの二割くらいはなぜかその場にとどまり話を続けた。


「あ、あの!ステージⅢのギルドになるとメインギルド管轄のサブギルドを作れると聞きます。サブギルドでもいいので入れていただけないでしょうか?」


一人の男性がそういうとそれに賛成する人が多く、悠樹はサブギルド『右翼・攻略班』、『左翼・研究班』、『天輪・運営班』のそれぞれ役割の違うサブギルドを設立し、およそ二十人の仮入団の承認を始めると総合センター周辺はイベントの大行列のような状態になっていた。


さらに、うわさや騒ぎが人を呼び二十人の仮入団の承認を終える頃には周りの人数が百人を軽く超える程まで増えお祭り騒ぎとなっていた。


騒ぎが収まり落ち着いた頃を見計らいカフェに入った三人は入団条件を相談したのち承認した二十人にギルドメッセージで入団条件を送信した。


《入団条件:最低限ソロで戦っていける強さを基準にしたいため、最初のボスをソロで攻略し、称号を獲得してくる事》


「さて、想定外のこともあったし俺たちは実戦トレーニングでも行きますか。」


「あ、あのー…実戦に行くんですか?」


「早く魔法覚えたいならこれが一番なんだよ!」


そんな会話をしながら最初のダンジョンまで来た悠樹たちはダンジョンの入り口付近で攻略に向けて色々な準備をしていた。


「そういえば、優奈さん魔法は使える?」


「悠樹さんの言ってる魔法とは最初から使える初期魔法の事ですか?」


「いや、学校の授業でやったイメージトレーニングを魔法にできたかって事。」


「ごめんんさい、私まだそこまで行っていなくて・・・」


優奈が属性魔法を使えないことを打ち明け、とても申し訳なさそうな顔をしていると悠樹と風香が一言ずつ声をかけた。


「それなら多分俺たちの事見てるといいと思う。」


「一人で悩んでるより使える人の戦闘見た方が覚えやすいよ!」


「わかりました。できる限り子のダンジョンで覚えられるようにします。」


そんなやり取りをしながら準備を終えると三人はダンジョンへと足を踏み入れた。


ダンジョンに入るとそこには土を掘って道を作っただけの普通の洞窟が広がっていて奥からは湿った空気流れてきていた。また、少し進むと辺りは真っ暗になり始め、悠樹が得意魔法の一つである光魔法であたりを照らすと辺りが見え始めた。それと同時に明かりによって来たのかモンスターの気配が近づいてくるのがわかった。


出てきたのは空中をふわふわと浮く泡で大きな泡の周りに小さな泡がいくつもまとわりついており中心の泡がブレスをすると小さな泡がこちらに向かってきて近くまで来ると一斉にはじけはじめた。


「地味に痛いけどあんまりダメージ入らないな。これ初期魔法でも倒せるんじゃないか?」


 悠樹がそういうと試に三人でマジック・ボールを放ったところ案の定中心の泡は消えてなくなった。


そのあとも泡や蜘蛛なんかも出てきてダメージを受けながらも初期魔法で倒し気づけば自分たちが広場のような所にいた。


「ここは・・・あからさまに嫌な予感がするな。ボス部屋っぽいから二人ともHPとMPをポーションで全回復してまわりに気をつけろよ。」


 そう言った瞬間優奈が上に何かいるのに気づき、すかさず悠樹と風香が戦闘態勢になり優奈は悠樹の後ろに避難をすると、広場の周りの入り口がふさがれ周りにあったたいまつに火が付きはじめ上から大蛇が現れた。


現れた大蛇は暗闇でも見えるように赤く光る眼と鋸の様な刃の付いた大きな牙が二本に細かな歯が無数についた口、一メートルくらいは伸びそうな舌をもち悠樹の使う光魔法に照らされてきらきらと輝く純白の羽のような鱗を纏っていた。


大蛇の雄叫びと同時に戦闘が始まり、大蛇は威嚇しながら広場の周りをぐるぐるとまわり始め、様子をうかがっているように見えた。


「風香、まだ最初の方のダンジョンだし俺らもあんまり魔法が使えるわけじゃないから得意魔法で攻めようか。」


「りょーかい!ちゃんと心得てるよ!!」


 そう言って二人は息をぴったり合わせて悠樹が光、風香が雷の魔法を使いダメージを与えている中、優奈は一人でうずくまっていた。


(無理無理、チュートリアルの時と全然違うし。迫力ありすぎて動けないよ・・・)


「優奈さん、優奈さん!大丈夫?」


「は、はい。」


「チュートリアルよりでかいし迫力あるもんね。でも大丈夫、手貸すから一緒に魔法打てるように頑張ろ。」


悠樹がそういうと風香にひきつけを任せ、悠樹が優奈の近くに行き掌の中で小さな風の渦を出した。


「こんな感じで風の渦が出せる?コツは竜巻をイメージする事かな、学校では風って言ってたけどあれはイメージしずらし。」


「こんな感じですか?」


そう言いながら何回かやっていると優奈も小さな風の渦が作れるようになった。


「そうそう、後はこれができるようになったら俺らがさっき戦ってたみたいにこれの大きいイメージを思い浮かべてモンスターの方に放ってみて。ごめん、風香の負担が大きいから戻るね。」


 戻った悠樹が風香に何かを伝えると地の拘束魔法を使い優奈の方を見て合図を出す。それを見て優奈がどういうことかに気付き、先ほど掌の中でイメージした風の渦を悠樹の言うように拡大イメージにして魔力を込めると、拘束されていた大蛇のいる場所に大きなな竜巻が出てきた。


「で、できました!私魔法が使えました!」


「上の方の魔法になってくるとイメージだけじゃなくていろいろ絡んでくるけど、最初の方の魔法ならイメージだけで打てるから一回実物を見てもらってからの方がいいと思って。でも使えるようになって本当によかったよ。」


「優奈すごいじゃん!これなら一人でボスソロ攻略も余裕だね。」


 優奈が初めて魔法を使えたことに二人が喜んでいると突然岩が砕けるような大きな音とともに大蛇にかかっていた拘束が解け、羽のような鱗の先端が赤く染まり、鼓膜が破れそうなほどの大きな雄叫びを上げるとかまわずこちらに襲い掛かってきた。


 三人はとっさに回避すると場の空気が一転し一瞬にして三人に緊張感が走り、戦闘態勢に入ると大蛇は続けて雄叫びを上げた。


「こりゃまあ、相当お怒りなようで・・・。これはもう三人で一斉攻撃を畳み掛けるしかないかな。」


 そう言って悠樹は光魔法を、風香は地魔法を、優奈は風魔法をを使い大蛇を討伐しようとするも、しぶとい大蛇はHPをわずかに残して生き残ってしまい討伐には至らなかった。


 生き残った大蛇は悠樹の周りを取り囲み大技を使う構えを取った。次の瞬間、大蛇のお技と悠樹の光魔法がほぼ同時に放たれ一秒にも満たない一瞬の差で悠樹の攻撃が直撃すると大蛇はその場に倒れた。


「危なかったけど何とか倒せてよかったな。」


「最後悠樹かっこよかったよ!」


「お疲れ様です。」


 三人が勝利の余韻に浸っていると悠樹が突然意識を失ったがしばらくしてから悠樹は二人の声で目を覚ました。


「悠樹起きて、起きてってば。」


「悠樹さん、大丈夫ですか?」


ようやく状況がつかめた悠樹は二人を安心させた後、その日は何事もなかったかのように解散した。


それから数日後、再び学校に行き試験をすることとなった。


悠樹、風花、優奈の三人は試験のための列に並んでいた。


「ボス戦も全員ソロでできたし大丈夫でしょ。」


「そうだねー!優奈の成長スピードが恐ろしいよ(汗)」


「いえ、皆さんの教えがとてもわかりやすかったので簡単に覚えられました!」


この試験では各属性毎に『L→SSS→SS→S→A→B→C→D→E→F』に分かれていてD以上で単位修得となる。A以上で得意属性と認定され、Eは不得意属性、Fは戦闘時使用不可能属性(生活レベルのみ使用可能)という扱いになる。


三人の試験結果はこうなった。


『悠樹』

火→A

水→A

風→A

雷→A

木→A

土→A

光→S

闇→A

回復→S

補助→S


『風香』

火→C

水→C

風→C

雷→C

木→SS

土→SS

光→D

闇→E

回復→B

補助→C


『優奈』

火→S

水→S

風→S

雷→C

木→D

地→S

光→C

闇→F

回復→C

補助→C


「とりあえずみんな単位は修得だな。最初にしてはみんな高いな(汗)」


「そうだね!悠樹は置いといて、優奈風魔法Sなんてすごいじゃん!」


「いえ、悠樹さんの特訓のおかげです。」


「まあ途中から俺抜かれちゃったけど…」


「まあなんにせよこれでみんな卒業だね!」


全体どうは二割の生徒が合格することとなり残りの生徒は後日また試験を受けるとの事。


三人とも試験を合格し、図書館の利用権と研究室の利用権を獲得したが、優奈が何か言いたげな様子でこちらを見ていた。


「どうしたの?」


それに気づいた風香が優奈に声をかけると少し言いづらそうな感じで話し始めた。


「あの、悠樹さん達はあまり仲間を増やしたい感じではないのかもしれませんが、実は私の親友もこのゲームをやっていまして、もしお二人がよろしければギルドにお誘いしてもよろしいでしょうか?」


悠樹がギルド登録の際に二十人しか承認しなかった事を気にしていたようだ。


「友達ならいいよ。繋がりがない人をあんまり入れたくなかっただけだから。いつなら会えそうかな?」


「あ、もうすぐテスト終わる頃だと思うので読んできますね。」


優奈はそう言って校舎の方に戻って行くとひとりの女の子を連れてきた。


「改めてこの子が中学の時からの親友のいのりです。恥ずかしがり屋で猫みたいに可愛いのですが、友達作るのが前から苦手らしいので是非仲良くしてあげてください。」


「あ、あの。い…いのり、です。よ、よろしくお願いします!!」


緊張していたのか最後だけ大声で言った後顔を赤くしてしまっていた。


「俺は悠樹、あんまり気を使わなくて大丈夫だから、いのりのペースで仲良くなってこ。」


「いのりちゃんよろしくね!」


「あ、あの、これ一応私のステータスです。」


『いのり』

火→S

水→S

風→S

雷→S

木→S

土→S

光→S

闇→S

回復→S

補助→S


顔を反らしながらそう言って見せてきたステータスカードは驚愕の内容だった。


「こ、これは(苦笑)」


「すごいとしか言えないね…」


「いのりどうしちゃったの!?」


悠樹達が驚愕しているといのりも自分ではわかっていないようで、学校の教師陣の間でも話題になっていたらしい。


「ま、まあとりあえずギルド登録済ませた後総合センターでスキルステータスの更新に行こう。」


ギルド登録を済ませた後悠樹達はそう言って総合センターに向かい学校を去っていった。

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