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私のガイドブックになりなさい

息抜きローファンタジーです。肩の力を抜いてご覧ください。


 目が覚めると、真っ白でだだっ広い、何もない空間が広がっていた。

 確かオレは死んだはずだ。確か車に轢かれて...、つまりこれは、もしや?



「そーです、みんな大好き異世界転生ですよー」


「うわっ! びっくりした!」



 突如背後から声をかけられ、オレは驚いて振り返った。



「するとそこに立っていたのは、煌めく黄金のような金髪に、雪のような輝きの白翼、そして1000人いれば1000人が振り替えるほどの美貌を持った、超絶可憐なパーフェクト美少女な女神様であり...」


「そこまでは思ってねえよ!」


「おかしいですねぇ、経験則から導き出した、完璧なテンプラ導入文なのですが...」


「それを言うならテンプレな...」



 コテンとおどけたふうに首を傾げるジト目女神様に、呆れながらツッコミを入れる。



「ま、戯れはこれくらいにしておきましょうか」



 コホン、と女神様は咳払いをする。

 正直、勢いがありすぎて全くついていけないんだけど...。



琴城(ことだて) 白穂(はくほ)さん、21歳大学生。趣味は一人旅。その一人旅の最中に交通事故に逢い死亡。魂の損傷が少なかったので転生可能により、超絶美少女女神フレイヤさんの元へやってきたのです。はい拍手ー」


「わーパチパチパチ... じゃねえよ! えらい説明が簡素だな!」



 渾身のノリツッコミを炸裂させて女神フレイヤさんを問い詰める。

 もっとこう...こうなった過程を聞きたいんですけど...。



「いや、誰も貴方の生前の設定に興味なんてありませんて」


「メタい!」


「最近多いんですよ、貴方のように転生願望を持って死んじゃう日本人。何なんですか? 流行りなんですか?」


「あっ、ハイ。ソウデスネ...」



 ジトーっとした目線に目を逸らしてしまう。



「まぁそれが悪いとは言いませんよ。異世界転生を夢見るのは自由ですし、死亡するのは意図しない不幸によるものですから。そんな貴方のような人々の最期の望みを叶えるために私のような完璧女神がいるのですから。讃えてください」



 相変わらずジト目のまま、ふんすとドヤ顔で胸を張る。



「えーっと、つまりその、オレはチートを貰って異世界に転生できるってことですね!?」


「本来なら、まぁそうですね」


「へっ?」



 ”本来なら?” 思わず変な声を出してしまう。



「今期ぶんの異世界便、タッチの差でちょうど貴方の一人前で埋まりまして。定員オーバーなので異世界に遅れないんですよ。そして私はこの業務が終わったら晴れて長期休暇! ぶいっ」



 えっ... はぁっ...?



「いやっ... "ぶいっ" じゃねーよ! おいそこ! 荷造りすんなし!」



 オレをほったらかしで早々に仕事を終えて、バカンスモードにシフトチェンジしようとしているアホ女神を慌てて呼び止める。



「転生出来ないんじゃ、オレはどーすりゃいいんだよ!」


「んー、どうしても異世界転生したいのであれば、次の旬の時期が来る三ヶ月後の私の休暇終わりまで、この空間で待ってもらうことですね。でもオススメはしません。こんななにもない空間に三ヶ月も居たら、多分気が狂って精神が崩壊しますから。神界には国民保険も精神科もありませんから、そうなったらパーフェクトな私でも手に負えませんよ?」



 次の旬て。回遊魚か何かかオレたちは。



「そうでなければ、フツーに輪廻転生の輪に乗っかって、地球で次の生を受けることですね。それならサービスで今すぐやってあげますよ」



 残念だが、そうするより仕方ないか...。死んだあとで孤独死すんのも嫌だし。

 

 そうやって悩んでいると、荷造りを再開していたフレイヤさんが、パンフレットのような冊子を片手に、ティンときた! というような表情で突然こちらを向いた。

 さっきまでの業務モード感満々のとは打って代わり、興奮した様子で目をキラキラとさせている。それはまるで、見た目相応な18歳ほどの超絶美少女だ。



「そういえばハクホくん。キミって旅行が趣味だよね?」


「えぇ、まぁ...」


「確か、そういう資格も持っているよね?」


「あ、はい」



 確かに、俺は国内旅行業務取扱者の資格を数年前に取得している。



「よしっ、決めた! ハクホくん、私のガイドブックになりなさい」


「...は?」



 突拍子もないことを言い出したフレイヤさんに、間抜けな声を思わず出してしまった。



「いやぁ私ね、この三ヶ月の休暇を使って300年ぶりに日本観光しようと思っていたのだけれど、この"ワクワク天界トラベル - 地球・日本編"の案内じゃ不安でさ。そこでボッチ旅のプロであるキミに観光ガイドを勤めて貰えばいいじゃないかと!」


「ボッチ旅って言うな! 虚しくなるだろ! 一人旅と言え!」


「まぁまぁ。ちゃんと職務を果たしてくれた暁には、最優先の特A待遇で次期の転生の際に手続きすることを約束しよう。それに特別だ、旅行好きなキミのために、とっておきのチートスキルを授けようじゃないか。sどうだろう、キミにとっては暇潰しにもなるし、異世界転生もできるし、言うことなしの提案だと思うのだけど?」


「う、う~む」



 た、確かに好条件ではある...のか? でもそんな急に...。



「いや、拒否権なんて不要だね。私が決めた、だから行く。うん決定! それじゃ早速出発だよ! ハクホ!」


「いや、ちょっ、まっ」


「待たないよ! じゃ、最初の目的地に出発だ!」


「いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁああ!!!」



 そうして有無も言わせない勢いのまま、フレイヤ様とオレは転移魔方陣に吸い込まれていくのだった。




 こうしてオレたちの三ヶ月にわたる、怒濤の長期休暇満喫・ハチャメチャ日本旅行が幕を開けるのであった。



琴城 白穂

こ と だ て は く ほ

は こ だ て ほ く と

函館北斗



というわけで最初の目的地は函館です。

読者の皆さんが100回は読まされて飽き飽きしてるテンプラ導入は2000文字程度で終わらせて、さっさと楽しい旅行を始めようではありませんか。


次話くらいは頑張って明日投稿しようと思うので、暖かい目で応援してください。



~フレイア

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