第7話 帰還
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不定期とはいえ、もう少し頻繁に更新できる如く頑張ります。
「よう、お疲れさん。大漁だったようだな」
夜営の準備をしてくれていたオステアに迎えられる。
「おう、上質の鉄鉱石が二袋だ。もう一つは金鉱に銀鉱、僅かだが霊銀鉱もあった」
「おお、霊銀鉱までが。流石は泥棒鉱山といったところだな」
「まったくだ」
笑い合うボクソンとオステア。
「あの、霊銀鉱というのは何ですか?」
孝太郎が自分の知識にない物について尋ねる。
いや、この場合は予想したことが間違っていないか確かめる意味合いのほうが強かったかもしれない。
「ミスリルという金属がある。その原料となるのが霊銀鉱だ」
「おお、やっぱり。貴重な物なんですよね」
「いや、たしかにミスリルは貴重だが、霊銀鉱はそうでもない」
「え???」
「はっはは、ミスリルはな、精製するのが大変なんだ」
「そうそう、精製には大量の魔力を込めないとならない。エルフ銀と呼ばれるのはそのせいだ」
「それほど大量の魔力を込められる鍛冶師はそういない。だからミスリルは貴重なのさ」
「ボクソンは作れないの?」
「無茶をいうな。ミスリルの剣を打ったこともあるが、そりゃあくまでミスリルのインゴットが手に入った時のことだ。鉱石からは無理だ」
「じゃあ、この霊銀鉱はどうするの?」
「玄鉄だな。鉄と混ぜて使う。こいつは鋼と比べて硬い上に軽い。その上粘りもある。武器、特に刃物にはうってつけだ」
今日の成果を喜びあう。
その後は、フェルの作った晩飯に舌鼓をうち、夜の見張りのレクチャーを受けた。
二人ずつの交代で見張りをする。
まずはオステアとフェルが、次に孝太郎とボクソンという順番だ。
夜は何事もなく過ぎ去り、東の空が明るくなってくる。
「何事もなかったな。新人レクチャーは余裕で達成だ。本来は襲撃の一つぐらいあった方が本人のためなんだが、コタローなら特にもんだいあるまい」
孝太郎は、見張りのレクチャーの時から、出された問題の全てに完璧な解答を出していた。
元の世界での修行で身につけた知識は、この世界でも有効なようだ。
「ところでボクソン、昨日採取した鉱石で4人分の日当と馬車代ぐらいは稼げてるの?」
「はっはは、そんな事考えてたのか。馬車代やら俺達の日当なんて気にするこたぁねぇ。この間の四本腕の時の稼ぎでお釣りがくらぁ」
「いやいや、ボクソンは自分の分も俺にくれたじゃない」
「ありゃ四本腕から剥ぎ取った素材やら装備の分だ。コタローに採ってもらった鉱石はそのまま儂のもんだ。それだけでも随分と儲かってる、気にするなって」
「そうなんだ。儲かってるならいいんだけど」
自分に付き合って不利益を被っていない事が解り、ほっとする孝太郎。
不利益を被ると離れていく人は多い、そしてそれは、付き合いが浅いほど顕著である。
孝太郎は、乱暴な言葉遣いながらも、自分を気遣ってくれるボクソンを信頼している。
異世界への転移により、今までに築いた人間関係は役に立たなくなった。
敵も味方もいない状態である。
ボクソンをはじめとする『創造の槌』のメンバーが唯一の味方と呼べる存在だ。
金銭的な事が原因での仲違いは、何としても避けたいのだ。
「そういや、コタローはそのトビクナイとかいう武器の他に何か使わないのか? 霊銀鉱も手に入ったし剣の一本ぐらいあったほうがいいんじゃないか?」
ボクソンは、孝太郎の飛苦無を使っての戦闘が洗練されたものだという認識はあったが、その間合いは素手で戦うのと大差ないもであることを危惧していた。
「ええ、欲しい武器は確かにあるんですが、製法が特殊らしいので。でも剣ぐらいはあった方がいいのかな」
「欲しい物があったら遠慮なく言えよ。儂が打ってやるからな」
「とりあえず飛苦無の追加が欲しいんですよね。投げる事が多いので予備も必要ですし」
今後もハンターとして暮らしていこうと思えば、武器と防具は手に入れる必要がある。
自分が身につけてきた技を発揮するために、必要な物を記憶や知識からひっぱり出す。
「あとは防具ですかね、鉢金に手甲と脛当てと鎖帷子」
「わかった、飛苦無は実物をじっくり見せて貰うとして、防具は売り物の中から似た物を見繕って作ることにしよう」
「ありがとうございます。宜しくお願いします」
「おう、任しとけ」
向かい合う二人の笑顔は朝焼けに照らされて輝いていた。
本来ならば、もう一潜りするところだが、今回は孝太郎の初心者講習だということもあり、朝食後そうそうに帰り支度を整える一行。
日が中天にかかる頃には、カフェルの街へと戻って来た。
まず一行が向かったのは、ボクソンの店である。
鉱石とオステアとフェルが採取した素材を下ろして、工房へと運び入れる。
そのまま、オステアとフェルは空いた馬車を返しに行った。
「コタロー、トビクナイを見せてくれ」
「ああ、はいこれ。サイズは少々変わっても構わない。ただ、バランスと重さだけは出来るだけ近づけて貰いたい。あと柄尻の輪の大きさも」
孝太郎の使っている飛苦無は、既製品である。
とは言え、一般に売られている訳もないので、この場合はカスタムメイドされたものではないという意味だ。
刃部の長さが4寸、鋒から3寸で一番広いなり2寸、鎬の一番厚い箇所が半寸。
柄は直径が1寸であるの円柱状であり、長さが3寸、柄尻の輪の直径が2寸で輪の中の穴の直径が1寸である。
総て規格でできているので、物の長さをおおよそ測ることもできるようになっている。
「ふむ、結構厳しい注文だな」
ボクソンは飛苦無の長さを測りながら、木の板に炭の欠片でメモを採っていく。
「こっちはもうちょっとかかる。店からコタローの言う防具を見繕ってこいや」
「わかった」
店の陳列棚やワゴンセールよろしく雑多に積まれた防具の山を漁る。
最初に見つけたのは鎖帷子に似たチェインシャツ。
小手と脛当てもバラ売りの物の中から似た物を探しだす事ができた。
しかし、鉢金は似た物が見当たらない。
やむなく、ハーフキャップヘルムを手に取る。
防具を持って工房に戻ると、ボクソンも飛苦無の計測を終えたところだった。
「おう、きたか。で、どうしたい?」
孝太郎は、飛苦無を受け取りながら、それぞれの防具について説明した。
「まずは鎖帷子だ。このチェインシャツほど目が細かくなくていい。フード部分はいらないし、袖も肩の先まででいい。
なるべく軽い方がいい」
「ふむ」
「小手と脛当ては革製のこれで、甲の部分の中に鉄の棒を縦に3本入れて補強してもうらいたい」
「なるほどな」
「頭の防具だが、このヘルムの頭頂から額まで部分を切りとって、裏を革で補強してくれ。で、布に縫いつけてもらいたい」
「そいつは作ったことがねぇが、なんとかなるとは思う」
「あと武器は、槍に付ける木製の柄だけ欲しい」
「在庫があるにはあるが……」
ボクソンは工房の隅に立てかけられた長柄の中から一本を取り出す。
「こんなんでいいのか?」
孝太郎は手にとると、両手でしごいたり振り回したりして感触を確かめる。
「ちょっと太いか。とりあえずこれを買うよ。飛苦無の柄尻の穴に丁度入る太さの物が欲しい。長さはこれと同じで先端部分を拳二つ分ぐらい金属で補強してもらいたい」
「そいつもなんとかなると思う」
「あとはこれは相談なんだが、作って欲しい物がある。玄鉄が使えるならそれで。口で説明するのは難しいから、絵を書くよ」
「これを使いな、板はそのへんのを適当にな」
ボクソンは、メモを取るの使っていた炭の欠片を手渡す。
孝太郎は、細長い大きめの板を選び、飛苦無で寸法を測りながら線を引いていく。
出来上がった図をボクソンに見せる。
「これを作ってもらいたい。寸法はこの図どおりだ」
「ほう、サンプルは見たから何となく想像はつく。問題なく作れるだろう」
「ありがたい。いつできる?」
「飛苦無は4日だ。絵のやつ、補強した長柄と防具類はもう4日だ」
「わかった。値段を聞こう」
「飛苦無が2コルで5つ、絵のやつが50コル、長柄が5コル、防具類がまとめて40ってとこだな。占めて105コルだ。100コルにまけとくよ」
「いや、職人の腕を安く買うつもりはない。200コル渡しとく。余ったら返してくれ」
孝太郎は、金貨を2枚取り出して、作業台の上に置く。
「おう、わかった。預からせてもらう」
「よかった。取引成立ですね」
途端に、口調が元に戻る孝太郎。
「コタロー、お前さん職人ってもんがよく分かってるな」
「いえいえ、希望は信念を持って伝えないと伝わらない事がありますからね」
「まったくそのとおりだ」
値段を言われて、慣れない貨幣計算で必死にスリオラから得た知識を思い出して、金貨2枚を出したのは内緒である。
「儂は早速作り始めるとしよう。コタローはハンターギルドへ行って初心者講習が終わった事を報告してきな。次は4日後だ」
そういうとボクソンは炉の火を起こしはじめる。
ここから先は職人の時間なのだろう。
邪魔をしてはいけないと、孝太郎はボクソンの店を出ると、長柄を担ぎハンターギルドへと向かって歩き始めた。
絵に書いたモノが気になるように引いたつもりですが あまり効果がないようです。




