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第5話 ハンターギルド

「ハンターですか?」


「なぁ、コタロー、儂が見たところ、おめぇさん腕っ節には自信があんだろ?」


「前に居たところでは、そこそこには」


 同年代に負ける気はしなかったので、謙遜も込めて孝太郎は答える。


「だったら、ハンターに登録したらいいんじゃねぇかと思ってよ」


「とりあえず飯は喰わなきゃならねぇし、そのためには稼がなくちゃならねぇ」


「なるほど」


 他に日々の糧を稼ぐ心当たりが在るわけでもなく、ゲームやラノベでもお馴染みのテンプレ展開に否を唱えるつもりもない。


「んじゃあ、早速登録しちまおう。と、言いたいところだが、実力があっても、釦の掛け違い一つでこの世から消えてしまうのがハンターだ。お前さんにその覚悟はあるかってことだ。」


 ゲームやラノベに親しみ、自分の武技に些かの自信がある孝太郎にハンターにならないという選択肢はすでになかった。


「やってみなければ、どの程度危険なのかも判りませんし、とりあえずハンターになってみます。あまり危険な事はやりませんけどね」


「そうかい!」


 孝太郎の反応にボクソンは上機嫌だ。


「よし、これから儂がギルドについて説明してやろう」


 孝太郎が興味を示したことで、ボクソンはいつもより饒舌になった。


「ハンターにはランクってもんがある。Fから始まってEDCBASの7つだ。」


「全員Fからなのか?」


「まあ、それなりに強いので有名な奴なら飛び級ってやつもあるらしいが、滅多な事じゃ無理だな」


「へぇ」


「なにはともあれ最初はFだ。これはルーキーってことで希望するならギルドが指導官を用意してくれたりもする。大抵はEクラスのパーティーに潜り込んだりするがな。」


「ハンターになるとあちこち見て回れるのか?」


 テンプレならば、国境すらもパスできるはずである。


「残念ながら、そいつは無理だ。ルーキーは街のギルド管理なんでな。登録した街のギルド以外での依頼は受けられない。で、ランク上がってEクラスになると、領地管理ってことになる。登録した街の領主の管理地に出された依頼まで受けられるようになるって訳だ」


「ランクを上げれば他の国にも行けるようになるのか?」


「そうだな。Dクラスになると、国の管理になるから王国内の依頼が受けられるようになって、Cクラスから上は、国の縛りがなくなる」


 孝太郎の適度な相槌でボクソンの解説は止まらなくなった。


「でな、傭兵ギルドの依頼にはカテゴリがあって、大きく三つに分けられてる。


討伐、探索、護衛だ。


 達成した依頼ごとにポイントが貯まって、それが基準を越えるとランクが上がる。


 討伐がDなら、探索がE、護衛がFでもDランクだ。


 討伐が得意なやつをリーパー、探索が得意な奴はサーチャー、護衛が得意な奴はワーダーって呼ばれてる。


 これで、そいつがどんな仕事が得意なのか大まかだが分かるってことだな。


 ま、あくまでも目安程度だがな。


 中には ダブルAという化け物みたいな奴もいるが、大抵は得意な分野でランクを上げていくってもんだ。


 それとは別にこれはギルドで管理されてない称号もある。


 それがハンター達がジョブって呼んでる称号だ。


 ギルドカードにある職業って欄には軽戦士とか魔法使いとか神官とかあるんだが、まあ一番多いのが軽戦士だ。


 その職業の更に細かいニュアンスみたいなものだと思っていればいい。


 ちなみに俺はバトルハンマーが得意な武器だから軽戦士の中でもブラジョナーって奴だ。


 早い話が、ぶん殴る武器を使いますよってことだな。


 まあ自己申告なんで、それを丸々鵜呑みにしちまってもヤバイんだがな。


 だがこのジョブってのも案外馬鹿にしたものでもなくてな。


 以前にジョブをサムライって名乗ってる奴がいたらしい。


 なんでも東方の曲刀を使う剣士って意味だったらしいが……


 凄腕だったらしくてな。有名になって弟子を増やして、今じゃギルドの正式な職業として登録できる。


 最初に名乗った奴は、開祖と呼ばれてるらしい。


 もっとも俺も実物を見たことたぁねえんだけどな。


 しかし、そのサムライの使う武器には興味があるねぇ」


 まくしたてる様にギルドの説明をするボクソン。


 中でも孝太郎の興味を引いたのはサムライの件だ。


 ボクソンの商品を見たときから半分諦めかけていた。


 刀が使えるかもしれない。


 孝太郎が幼い頃から修練を重ねてきた真田流剣闘剣術は刀を使うための剣術である。


 直剣では、その技量を十全に発揮できない。


 サムライに会って刀を手に入れたい衝動がくすぶり始めるのを自覚する孝太郎であった。




 その後孝太郎は、ボクソンの案内でハンターギルドへとやってきた。


 ハンターギルドは、石造りの二階建ての建物で、一階にカウンターとテーブル、簡単な食事程度ならできる施設となっていた。


 孝太郎の知識の中の某ファーストフード店に近いものがあるが、カウンターは幅広でその係は座っている。カウンターだけを見るなら銀行が近いかと孝太郎は感じていた。


 ファーストフード店や銀行と大きく違うのは、壁一面が使われている掲示板だろう。



「おはようございます。今日はどのようなご用件でしょうか?」


 受付に座ったポニーテールの女性が話しかける。


「よう、カーシャ新規登録だ。


それに、初心者実地講習だ。メンターは創造の鎚が受け持つ」


「冒険の槌に新メンバー加入ということですか?」


「いや、新人は創造の鎚ってわけじゃねぇが、ちょいと縁があってな」


「わかりました。ではこちらにご記入を。実地講習はどのような内容にしますか?」



「はっはっは。心配すんなって。初心者が最初に受ける依頼なんざ、採取系と相場が決まってる。だが、折角なら、実入りの良いとこへ行かねえとな」


 なにやら書類を書き込みながらサムズアップして孝太郎の方を見るボクソンの笑顔に、そこはかとない不安を覚える孝太郎であった。


 ギルドプレートができあがる前にボクソンは初心者講習の準備に出かけた。


 その後ギルドプレート受け取る。


 Fランクのプレートは木製で、普通にインクで文字が書かれているだけだった。


「木製かよ、しかもコタローって書いてあるんだろうな。」


 マジックアイテムのカードが貰えるのではないかと思っていた孝太郎の期待は、裏切られた形となった。


 登録名が孝太郎ではなくコタローなのは事実であり、登録の書類を書いたのがボクソンなのだから当然である。


「ボクソンさんから聞いていると思いますが、本日の初心者実地講習の内容を説明させていただきます」


「あ、お願いします」


「講習の内容は、鉱石採取となっています。指導官は創造の槌のボクソンさんで、採取場所はメーキット山の廃坑です。成功条件は、1泊以上の夜営をしていただいた上で、何らかの鉱石を持ち帰って頂くことです。講習ですので成功報酬はございません」


「ありがとうございます」


「説明は以上です、ではお気をつけて」


 カーシャ嬢の邪気のない笑顔に見送られて、ギルドを出る。


「ちょいとテンプレからは外れてるけど、ハンターコタロー爆誕!ってとこか」


 自分で言いながら、顔が紅潮しているのは、恥ずかしさのせいだけではいことは、孝太郎自身がよく判っていた。


 街の門まで行き、門番にプレートを見せる。


「おお、ルーキーか。頑張んな。命は大事にな」


「ありがとうございます。頑張ります」


 門番から激励を受け門を出ると、そこにはボクソンが馬車と共に待っていた。


 傍らには、見覚えのある狐獣人とローブ姿の男が立っている。創造の槌のレンジャーのフェルと魔術師のオステアだ。


「あれ?フェルさんとオステアさんがどうして?」


「いやぁ、久し振りだね。今日はサポートって事で参加させてもらうよ」


「そうそう、馬車の見張りとか必要だろう」


「とはいえ、こっちは待ってる間に別の採取もするんだけどね」


「そういうことですか。よろしくお願いします」


 太陽が中天に差し掛かる頃、一行はメーキット山の麓にたどり着いた。


「馬車はここまでだな」


「ではキャンプはここで」


「おう、頼んだぞ」


「コタロー、ちょいと休んだら坑道に入るからな」


「泥棒鉱山なら、運次第でかなり稼げるから、頑張ってね」


「泥棒鉱山っていうのも物騒な名前ですね」


「鉱山ってぇのは、大抵領主の持ち物だろ。


 ここも、いい鉱山なのは間違いないんだが、鳥型の魔物の住処になっててな。


 採掘には運が絡む上に、人の被害が尋常じゃない。


 採算が合わねぇんだよ」


「それで誰でも入れるようになっているのさ」


「ダンジョンにはなっていないけどね」


「で、その鳥型の魔物、ウグイットってんだが、変わった習性を持っててな。


 光る物を洞窟の岩棚へ溜め込む習性がある。


 そのウグイットの習性と、泥棒みたいにコソコソ立ち回らねえと鉱石が掘れねえのが泥棒鉱山の由来だって話だ」


 馬車から夜営用の荷物を卸す。


「フェル、オステア、キャンプは頼んだぞ。下見も兼ねて一潜りしてくる」


 しばしの休憩の後、フェルとオステアに夜営の準備をまかせて、坑道へと入って行った。

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