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第29話 メンター

エタってませんっ!

2ヶ月以上開いてしまいました。申し訳ありません。

 カッファは、倒した熊を積み込むための馬車のための馬を捕まえに行った。


 一方、孝太郎は倒した熊の番をしている。


 熊の肉は美味であり、死後硬直が解けたあたりから強烈な香りを放ち出し、他の肉食獣などを誘引するらしい。


 それまでにカッファが馬車の設えを終えなければ、熊を巡る新たな戦いが始まってしまう可能性もある。


 これをどう捌くかが肝要であり、最悪であれば獲物を諦める事にもなる。


 これが、カッファ達のパーティーが熊の手をほぼ独占できている理由である。


 逃した馬は、すぐ近くに留まっていたようで、カッファは程なく馬車とともに戻ってきた。


 とはいえ、川原から馬車の位置までは、巨大な熊を運び上げる必要があった。


 ロープを掛けて馬車で引っ張りながら、押し上げる。


 最後には、引き上げた熊を馬車へ持ち上げて馬車に乗せなければならなかった。


「戦闘よりも、回収の方が大変だなんて聞いてないよ」


「はっはっは、そう言うな。結構な儲けになるんだからな」


「私は、手だけ切ってくればよかったんですがね?」


「分かってるって。手以外を山分けにするからよ」


 カッファは、巧みに馬車を操り山道を下っていく。


「人数が多いと、もっと楽なんだがな。今日は二人だったからな。どうだコタロー、よかったらうちのパーティーに入らないか?」


「いえ、お誘いは有り難いのですが、試験が終わったらカフェルの街へ戻りますので」


「即答かよ。そりゃそうなんだろうけど。一応悩むふりぐらいはして欲しかったな」


「本当に有り難いと思っていますよ。パーティーに誘われたのは初めてですしね」


「ふうん。パーティーに誘われた事がないってのもいがだな。コタロー程の腕なら、あちこちから誘われてそうなもんだが。全部断ってるのかと思ったぜ」


「そんなことはなりませんよ」


 苦笑する孝太郎。


「残念だな。それじゃあ、そんなコタローに一つ忠告だ。お前みたいな奴は、早くパーティーに入った方がいい。それも、気の合った仲間と作るんじゃなくて、ちゃんとしたリーダーがいる既存のパーティーへ入った方がいい」


「理由を聞いても?」


「いや、このタイプは理由を聞くと逆の事をするからだめだ」


「なんですか、それ」


「聞き入れるのも、聞き入れないのもコタローの自由だしな。ま、多くのハンターを見てきた俺からの忠告だ。聞く価値はあると思うぜ。そうだな、パーティーを組んだ後なら理由を教えてやらんでもないぞ」


「意地でも聞かないという理由もありませんが、パーティーを組むとしてもカフェルに戻ってからでしょうから、理由を聞くことは無理そうですね」


「ははは、そうだな。ま、お互い長生きしてれば、いずれ会うこともあるだろうさ」


「では、その時にでも」


 獲物は、商都に着く頃には、人の鼻でも解るほどには匂いが強くなっていた。


 ギルドへ持ち込み解体してもらう。


 孝太郎も、熊の手を納品して、無事遂行能力テストに合格し、残すは指導能力テストのみとなった。


 納品カウンターから、試験課題のカウンターまで移動するコタローの後ろをカッファが着いて回る。


「なんで着いてきてるんですか?」


「そりゃあ、次のテストの内容によっては、俺の力が必要になる事もあるかもしれないじゃないか」


「ああ、そうですか」


 指導能力テストで、課題が武器技能の指導などが課題となれば、カッファは間違いなく着いてくるだろう。


 事実、ホーンズビーの角の納品で組んだロークスは、Eクラスに対する剣技の指導が課題であるらしい。


 孝太郎の戦い方が、孝太郎自身によって解説される可能性がある。


 カッファのような戦技のマニアにとっては、必要十分な理由である。


 むしろ最上のご褒美と言って良い。



「納品テストの合格おめでとうございます」


 受付嬢のところで、遂行能力テストの合格を告げられる。


 なにしろ、ロークスはホーンズビーの角だけで合格なのだから、当然と言えば当然である。


「3つ目の試験の前に一つ質問があります。記録を拝見しますとメンターをやった記録がないのですが、間違いありませんか?」


「メンターとは何でしょう?」


「初心者のための指導員といえばいいでしょうか。コタロー様がギルドに登録された時は、ボクソンという戦士の方がメンターをなさって、メーキット山に行ったと記録にありますが」


「ああ、泥棒鉱山の。そうですね、メンターの経験はありません」


「わかりました。それでは、コタローさんの指導能力テストの課題は、新人ハンターのメンターをやっていただきます」


「わかりました。頑張ります」


 後進の教育は、先達の重要な務めであるとこは、孝太郎にも理解できた。


 孝太郎の武術の師匠は誰も、癖は強いが人間的に魅力的な人物ばかりであったし、魅力を感じる人から学ぶ方が習得が速い気がするのは、錯覚ではないであろう。


「クロノさーん、あなたのメンターが決まったわよー」


「は。ありがとうございます」


 受付嬢のかけた声に、後ろにある待合席から返事が聞こえた。


「メンターをして頂くコタローさんよ。コタローさん、あなたに担当してもらう新人ハンターのクロノさんです」


「よろしくお願います」


 受付嬢の紹介で孝太郎の目の前に現れたのは、サラサラのブロンドに、中性的な顔立ち、左手だけに着けられた光り輝くガントレット、そして孝太郎の鳩尾よりやや高い程度の身長。


「ああ、コタローという。よろしくな」


 そう返事をしながらも、顔は受付嬢へと向けられる。


 そのまま上体を倒すように受付嬢の耳元に顔を近づけて訪ねる。


「おい、ホントに成人してるんだろうな?」


「本人の申告では、間違いありません」


「どう見たって、してねえだろ?」


「見かけは重要な要素ではないのは、コタロー様ならご存知なのでは?」


 確かに、エルフや獣人の一部は、成長が人とは違い年齢で推し量れないところがあるのは、孝太郎も承知している。


 重要なのは、見かけではなく真実であり、ことハンターに限って言えば実力こそが最も重要である。


 怪訝そうに孝太郎の顔を見上げるクロノ。


「ああ、貴方も僕の年齢を疑っているのですね」


「ああ……いや」


「隠さなくても結構です。見たとおりですから、成人してからというもの、無条件で信じてもらえた事は一度しかありませんので、慣れていますから」


 ハンターになるための条件は、成人していることぐらいしかない。


 以前は、食い詰めた者や孤児などが年齢を詐称してハンターになっては、無駄に若い命を散らすというのは珍しい事ではなかった。


 それ故に、今は審査は厳しいものになっているはずであった。


 クロノの首には、既にウッドのプレートが掛けられていた。


 既にハンターになっている者の資格を理由なく剥奪する権利は、例えギルドと言えでもありはしない。


 それは同時に、孝太郎の指導能力テストの課題が眼前のクロノのメンターであるという事は決定したということであり、孝太郎のメンターとしての指導の如何によって、今後のクロノの命と稼ぎが左右されるということである。


「わかった。クロノ、出発は3日後とする。期間は7日間の予定だ。それまでに必要だと思う物を揃えておけ。金はあるのか?」


「いえ……、手持ちのお金はほとんどありません……」


「だろうな、これを使え。出発までの宿と食事を賄っても構わない」


 孝太郎は、革袋から5枚の銀貨を取り出してクロノに与えた。


「3日後の朝に、ギルドの前に集合だ」


「わかりました」


 クロノは銀貨を受け取ると、握りしめてギルドを飛び出して行った。


「やる気はあるようだな。さて、ここでお知恵を拝借だ」


 クロノの後ろ姿を見送った孝太郎は、カッファと受付嬢に向き直す。


「一番近いダンジョンとか、迷宮までは何日かかる?初心者向けならいいんだが」


「本格的なダンジョンは近くにはないぞ。片道一週間はかかるな」


「そもそも、初心者向けのダンジョンが有る訳がありません。ダンジョンとは言わばダンジョンマスターと呼ばれる強力な魔物のテリトリーの事です。ダンジョンと言うだけでシルバー以上のハンター向けですよ」


 孝太郎のファンタジー知識は、またしても役に立たず、思惑は大いに外れた。

お待たせした皆様申し訳ありません。

新展開までもう少し。

プロットはありますが、ストックはありません。

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