時代劇の影響
今は減りましたが、一昔前までは時代劇というジャンルが当たり前のようにゴールデンタイムに放送されていました。
週末には暴れん坊な将軍様が女忍者や町娘をはべらせるハーレムチートな立ち回りを披露し、ちりめん問屋のご隠居さんが悪人を跪かせて「カッカッカッ」と笑いながら竹の杖をついていたものです。
もっとも私の好きな時代劇は「伝七捕物帳」という岡っ引きが出てくるような、規模の小さいものでした。下町人情的な舞台で、中村梅之助さん演じる伝七が、鎖分銅片手に悪者を懲らしめる。最後のヨヨヨイって締めを子供ながらに真似したものです。
7月にはNHKで息子さんの中村梅雀さんがリメイクするそうで楽しみですが、ももクロゲスト出演の報に触れて、一抹の不安も滲む今日この頃……とまあ寄り道がすぎるので、エッセイの本筋に強引に戻しますね。
時代劇の中で当然のように出てくる酒飲みスタイルは、白い焼き物の酒壺と徳利にお猪口、いわゆる日本酒ですね。冬場に煮干しを焼いて燗酒などを用意しながら、
「けっ、こんな肴しかありゃしねぇ」
などと口走りつつクイッと酒をあおった日には、
「クーッ、沁みるゼェ」
などと、素浪人気分になれるってものです、本当は心躍っているくせに。
素浪人といえば、テレ東で再放送されていた素浪人花山大吉という時代劇が好きでした。当時ですら古い映像だったのですが、調べてみたら1969年放映との事。私が生まれる前の時代劇でした。
渡世人との掛け合いの楽しい時代劇でしたが、主人公の花山大吉が大のおから好きという設定で、演じてらした近藤十四郎さん(俳優松方弘樹さんのお父様)がまあ美味そうに食べるんですよ、おからを。
子供だった私はこれでいっぺんにおから好きになりまして、以来大好物で自作したりもします。その際には酒のあて用に、少し辛めに炊いたり、水分を加減してウェットタイプを楽しんだりと、バリエーションが沢山ございますが、少しだけ挽肉を入れると、断然お酒のおつまみとして、頼もしくなりますね。まあ邪道ですけど。
勝新太郎さんの最後の作品である座頭市の冒頭シーンも良いですね、牢獄か何かで汁物を石の床に落とすんですが、それを盲目のいちが四つん這いになって啜るシーン。その汁物の美味そうな事。
流石に床にこぼしたものを啜るのは躊躇われますが、死ぬ前に一度はやってみたいですね。
その時は汁物じゃなくて、純米酒なんぞを零して、お隣の窪みには焼いた煮干し、そのお隣にはガツ刺し、とくれば当然ホッピーが……そうだ、床酒場なんてものを作っちゃいましょうかね、そしてお客さんは転がりながら酒肴を啜り食う。気が向けばそのまま寝ちゃうのも可なお店「床酒場 牢獄亭」……うん、速攻潰れます。




