アジフライの豆サラダのせ
肉体労働の後、陽の高いうちに家路を急ぐ。途中でコンビニによると、500ml缶のビール(サントリー・モルツ)とエクレアを買った。エクレアはビールという、自分の好物を買った事への、奥さんへの罪滅ぼし、免罪符、カウンター・バランスだ。
まだ五時前だが、帰り着いてビールを見た奥さんは、何も言わずに晩御飯の支度をしてくれる。
なぜなら今夜のメニューはカキフライだからだ。
家に帰ってから、冷え冷えのビールを我慢することのできない夫。そこらへんは何も言わなくても、まあ分かる。単純な男だから。
そしてビールとカキフライの組み合わせは……神だ。
この世に神が居るとすれば、揚げたてのカキフライをかじり、アツアツと空気と一緒に飲み込んだところに、流し込まれるビール。この極致、この舌の上に顕現するに間違いない。
まだ米は炊けていない。突然の晩餐に、炊飯ジャーは急速炊きに切り替えられて、消費電力を上げているところだ。電気会社さん、ありがとう。
ここでトマトとサニーレタスに玉ねぎドレッシングとマヨネーズをかけたサラダをほおばる。
そこにまたビールを流し込むと、口の中はリセットされた。
そこにもう一品の揚げ物、アジフライが到着する。そこに醤油をかけて、子供用にフライを細切れにしてやると、冷ます間に自分用に齧り付く。
うまし! そこにビール……天国!
こんな所にあったんですねヘブン。知らずにノッキン・オンしちゃいましたよ。
と、横を見ると、子供が細く切ったアジフライの上に、もう一品のおかず、三種豆のマヨネーズサラダを乗っけだした。
おいおい、何してんだよ? きたねえなぁ。と、思いつつも、アジフライの上にのった豆サラダが、美味そうなのである。
ピン! ときた私は、齧りかけのアジフライに、豆サラダをたっぷり乗せて、醤油を3滴ほど落として、齧り付く。
おお、これは美味し! すかさず残りのビールを飲み干すと、そこでピピーッ、と米が炊けた。
さあ、米も炊けて、残りのフライも揚げ上がったよ。と言う奥さんに、
「リンゴジューチュ、嫌!」
と、手元のコップを手ではらう子供。テーブルに広がるリンゴジュース。その魔の手は揚げ物の上に!
何しとんねん! と慌てて片付けながら、ここでもピンと来た。もしや、リンゴジュースのかかったアジフライも、いけるのではないか?
早速そこに数滴の醤油を垂らした私は、二杯目であるグレープフルーツサワーを片手に、アジフライに齧り付く。
おお、これは! ……不味い。
力なくサワーを置いた私は、カオスの坩堝と化したテーブルを、黙々と拭くのであった。
考えてみれば、フライにタルタルソースは鉄板、豆サラダも似たようなものですね(´・Д・)」