交通事故で死んだフリをして慰謝料をボろうとしたら轢き逃げされた。
俺は神崎徹。
高校一年生だ。
一見普通の高校生な俺だが、一つ特技がある。
死んだフリだ。
俺の死んだフリはマジで心臓が止まるし、最近出来るようになった技(命名 完全版永久睡眠)は医者ですら完全に死亡してる、と診断する程だ。
ある本で、「自分だけの特別があるならそれを生かす職業に就くべきだ」と書いてあったので、将来の夢は「当たり屋」だ。クズですまんね。
無論、社会の役に立つ感じの「当たり屋」を目指しているので、アルバイト的な感じで「知り合いの政治家の政敵の車に"わざと"轢かれて死んだフリをする」という依頼を受けた。
あっ、受け身は完璧に出来たよ。
そしてその仕事っぷりでいろんなジャンルの方に声をかけられ、彼らの依頼を受けるようになり、裏の業界では「殺され屋」として有名になった。
これは、そんな俺の不幸で胸糞悪い話である。
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ある雨の降る日の事だった。
俺は学校からの帰り道で人気の無い坂を登っていた。
そして、ぬかるんだ道を滑らないように気をつけて曲がり角を曲がった時、それは起きた。
曲がり角の先で車が走っていたのだ。
勿論、その車も俺の存在に気づき、運転手が焦った顔で何かをしていた。おそらくブレーキを踏んでいたのだろう。
しかし、道がぬかるんでいた所為でブレーキが利かず、俺はその車に轢かれた。
勿論、来るとわかっていたので受け身は完璧だったが、後ろに電柱があったので減速させるべく足で踏ん張ったのが坂を登ってできた疲労を倍増させた。
疲れたし、死ぬところだったし、ぬかるんだ下り坂であんな速度で走っている方が悪いので、死んだフリをして慰謝料をぼったくってやろう。
そう思っていた。
しかし、運転手の男と助手席のギャルはしばらく騒いでから俺の胸に耳を当てたり、俺の脈を測ったりした後、
逃げた。
救急車も呼ばずに逃げたのだ。
「モラルは無えのか!」って心の中で全力でツッコミをかましたね、手じゃなくて回し蹴りで。
そしてツッコミをかました所為で蘇生した後には消えていた上に、カーナンバーも見れなかったという胸糞悪い思いをした。
「策士か!」ってまたツッコミをしたね、回し蹴りで電柱に。
それ以後、神崎はその二人組に会うことは無かった。
死んだフリで死んでると勘違いされ、神によって天に召されて異世界に転生した所為で。
これは「異世界に行く羽目になった死んだフリの天才」の主人公の過去の話です。
興味があったら是非そっちも読んでください。