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君と歩く永遠の旅  作者: 夜野うさぎ
第一章 時を超えて愛する君のもとへ ―第一の現代編―
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大学三年生 夏休み合宿1

やっぱりお酒を飲むシーンが欲しかったので、時間が飛んでいます。

 あれから2年が経ち、俺たちは3年生になって夏休みを迎えた。


 うだるような暑さが続く。

 一年生の夏休みに俺は自動二輪、春香は普通自動車の免許を無事取得することができた。

 月に一度の割合で実家に帰っているが、うちの両親もお義母さんも変わりなく過ごしている。


 変わったところと言えば、昨年から専攻に関する研究会に顔を出しているところだ。……いや、もう一つあったか。

 去年、無事に二十歳になり成人式も済ませた俺は、お祝いと称してロトを買ったんだが、……見事に当たったんだ。

 驚きとともに俺の脳裏に、「――せいぜい幸運になるくらいだ」という天帝釈様の声がよみがえった。

 ……うん。これは自制しないとえらいことになりそうだ。

 とはいえ、お陰であの病室での結婚式の時に父から借りたお金も全額返済することができた。大学の学費と生活費に関しては、父さんに申し出たんだけれど、父さんの方で出すとのこと。人生何があるかわからないから大事に貯金して無駄遣いするなとのことだ。

 春香の驚きようはすごかった。ま、俺だって舞い上がって、まさかこの年にして億万長者になるとは。ただ、これは双方の家族だけが知っていて、内緒にしている。……もちろん貯金を分散して定期や定額にしてあり、資産として別に管理することにしている。

 あ、一点だけ買い物に使った。それは、春香のしているルビーの指輪がどうしても目立ちすぎるので、改めてプラチナのペアリングを買って、ルビーの指輪が大切にしまっておくことにしたのだ。



 今日は、ちょっとした伝手つてで、メンバーじゃないんだけれど、とあるサークルの合宿にお邪魔している。

 俺たちを入れて、男が4人、女が4人の総勢8人だ。うち4人が三年生、二年生が2人、一年生が2人だ。

 このサークルは特段の目的があるわけでなく、いわばみんなで集まってわいわいやろうぜって感じのサークルだ。やはり3年前のスーパーフリーの事件があって、既存のサークルを敬遠していた当時一年生だった俺たちの同級生が集まって作ったらしい。

 普段は都内で集まって食事会やら映画鑑賞会、土日や連休、長期休暇を利用して、地方の民宿などで合宿と称する小旅行をしているようだ。その際は、幹事を持ち回りですることにして、企画、手配を順番にするようにしているとのこと。

 俺たちがお呼ばれしたのは、そこのサークルのメンバーが同じゼミになったことが切っ掛けだった。俺たちはバイトもあるし、月例の研究会もあるので、なかなかサークルのメンバーになるのは難しい。今回みたいに飛び入りがオーケーなら、今後もこういう機会に参加させてもらうのも悪くないと思っている。


 さて、今回の合宿は二泊三日で行き先は、伊豆にあるスポーツヴィラだ。メゾネット(コテージ)タイプの客室を男女別に利用する予定。20面を超えるテニスコートもあるし、車で海に行くこともできる。また本部棟には大浴場とサウナも完備されているらしく、楽しみだ。


 車は2台。俺と春香のムーブと、同じゼミの久美子さんの日産のキューブだ。俺たちのムーブには二年生の男子の二人組。武士たけしくんと勇輝ゆうきくんが同乗している。久美子さんの車には、同じ三年の女子京子さんと一年生の女子の希美のぞみさんが一緒だそうだ。

 一年生の男子のあきらくんは一人で電車に乗ってくるそうで、後で迎えに行かないといけない。


 「えっ、春香先輩は夏樹先輩の婚約者なんですか?」

 後部座席の武士くんが驚いてきいてきた。

 助手席の春香がうれしそうに、

 「うん。そうだよ。もう両親公認」

 それをきいた武士くんは勇輝くんに、

 「それでか! 京子先輩が絶対にムーブに乗らないって言っていたのは!」

 すると勇輝くんが、

 「だな。俺たちはめられたな。……こんな甘い空気。いたたまれないぜ」

 ハンドルを握っている俺は、笑いながら、

 「ははは。……まあ、甘い自覚はあるけど、道中はベタベタしないから安心して」

と言うと、春香がわざと、

 「はい。夏樹。あ~ん」

と言ってガムを俺に差し出してきた。「あ~ん」と言いながら口を開け、春香がガムを俺の口に入れる。

 二人が、

 「出た!」「やめてくれよぉ」

と情けない声を出すと、それを見た春香が、

 「あははは。ごめんごめん。もうしないから」

とおかしそうに笑った。

 にぎやかなお客さんを乗せて、ムーブは伊豆の道を走る。もうすぐで稲取だ。


――――。

 ヴィラの駐車場に車を停めると、春香が久美子さんの携帯に電話を掛けた。

 「あ、もしもし。久美子? うん。今ね、駐車場に着いたよ」

 トランクを開けて武士くんと勇輝くんの荷物を手渡してやり、俺と春香のバッグを肩に掛けた。

 忘れ物が無いかどうかを確認して、車をロックして春香を見ると、

 「久美子もあと10分くらいで着くから、先に本部棟のロビーに行っててって」

 「オッケー。じゃ、二人ともとりあえず本部棟だってさ」

と言いつつ、本部等に向かって歩き始めた。


 夏の強烈な日差しが俺たちを照りつけ、そばにある木からたくさんの蝉の声が聞こえる。

 「あっついなぁ」と漏らすと、日傘を差して歩いている春香が、

 「本当ね。でも今日と明日はお天気なんでしょ?」

 「ああ。三日目の午後が雨みたいだけど、まあ大丈夫だろ」

 後ろから二人の男子が、

 「いいなぁ。先輩」

 「やめようぜ。むなしくなる」

と慰め合っている。春香には聞こえていないようだが、俺は苦笑しながら本部棟の玄関をくぐった。

 「いらっしゃいませ」

 カウンターの中から女性の従業員が声を掛けてきた。

 「すみません。代表者がもう少しで来るので、ちょっと待たせてください」

と言うと、にっこり笑って、

 「どうぞ。お揃いになりましたら声を掛けてください」

と何かの作業に戻っていった。

 勇輝くんが、

 「はぁぁ。涼しい。生き返る」

とつぶやくと、春香が、

 「ちょっとの距離なのに……。でもわかる気がするよ」

と笑った。武士くんが、「ジュース買ってきます」といって荷物を足元に置くと、自販機に向かって歩いて行く。


 「そういえば明日は海水浴だっけ?」

 残された勇輝くんにきくと、「ええと」と言いながら、

 「予定ですけど、今日の午後はみんな揃ったらテニスの予定ですね。……それで明日は一日海水浴。明後日は河津から伊豆の中央を通ってあちこち寄りながら帰ることになってます」


 その時、玄関の自動ドアが開いた。

 「ども~。待った?」

と手を上げながら久美子さんがやってきた。その後ろには京子さんと希美さんもいる。

 久美子さんはショートの髪に白と黒のボーダーTシャツにジーンズの短パンというスポーティな恰好だ。後ろの京子さんは白のブラウスにジーンズ、希美さんはTシャツに七分のパンツの組み合わせ。うん。久美子さんの色白の健康的な足がまぶしい。


 「む……」

 女子の服装を見ていると、春香が俺の左脇腹をぎゅっとつねった。……いけない、いけない。ちょっと嫉妬したようだ。

 ちなみに春香は黒のキャミソールに白のサマーニットカーディガンを羽織り、ヒョウ柄のホットパンツ。しっかり色っぽさを出しながらも全体としてエレガントな服装。俺は、紺色のかりゆしにノンウォッシュジーンズという出で立ちだ。

 男子二人は……。武士くんは漢字Tシャツにジーンズ、勇輝くんは白のTシャツにアロハシャツに七分のサーフパンツにサングラスをしている。


 久美子さんは、春香に駆け寄ってきて、

 「ふふふ。今晩は夏樹くんとのあれこれを聞かせてね?」

と楽しそうに微笑んだ。春香が頬を引きつらせながら、

 「え、ええっと。お手柔らかに」

と微笑んだ。

 京子さんが、

 「ほら。久美子。先に手続きしないと」

と言うと、久美子さんはテヘッと笑って、

 「そうだった。……じゃ、ちょっと待っててね」

と一人で受付カウンターの方へと歩いて行った。

 それを見送りながら京子さんがため息をついて、

 「まったく。久美子ったら。……あ、そうだ。晃くんは到着が何時だっけ?」

と勇輝くんに尋ねる。

 「えっと。一時半の予定ですから……、あと三十分ですね」

 「じゃあ、コテージに荷物置いたら迎えに行かないとね。……夏樹くん、悪いんだけど迎えをお願いしていい?」

 「いいよ。稲取の駅で良いんだよね?」

 「そう。……ええっと春香も一緒に行く?」

 「うん。そうするよ」

 「ふふふ。……まったく熱いわねぇ」

 京子さんはそういうと熱い熱いというふうに、手を団扇にして顔を仰いだ。

 そこへ久美子さんが戻ってくる。

 「お待たせ~。さ、早速、コテージへ行こう」

 「「「おお!」」」


――――。

 本部棟から歩いてコテージに向かう。番号は3番コテージだ。

 「ん~。ここね」

 テニスコート脇のきれいに掃除された道を歩いていく。手前から三つ目のコテージの前で、久美子さんはそう言って、手にした鍵を持って玄関に向かった。


 ガチャリ。

 扉を開けた久美子さんが、

 「うわぁ。……熱そう」

とげんなりとした表情を見せた。

 どうやら中は締め切っていたみたいで、サウナのようになっているようだ。


 「よし。まず手分けして、各部屋のエアコンをつけて、窓を開けよう! 男どもいけ!」

 「「おす!」」


 久美子さんの号令の元、二年生の二人組が走り込んでいった。俺も苦笑しながら、その後に続き、二人がリビングと二階に分かれていったので、俺はキッチンと風呂場の窓を開けに行く。

 確かに熱い。……管理の人もエアコンを入れといてくれたら良かったのに。

 そう思いながら、次々に窓を開けているだけで、額に汗が浮いてきた。

 

 キッチンには冷蔵庫、コンロが完備されている。もちろん、冷蔵庫の中は空だ。

 一応、本部棟のブッフェ・レストランで食事をすることもできるが、極力、自分たちで自炊する予定だ。

 ただ、今日の夜だけは別棟にあるバーベキューガーデンの予約をしてある。

 二階を走り回る音がして、だんだんと階段を駆け下りる音がしたと思ったら、武士くんだった。

 男たちが開けている間に、女子たちは一階のリビングに移動していた。

 エアコンのフラップが動き続けていて、ようやく冷風が出始める。


 久美子さんが、みんなが集まったのを確認して、

 「さてとじゃあ晃くんはまだだけど、部屋割りを発表しようか。ええとシングルベッドが2つの部屋が4つあるから、男子女子で2部屋ずつね」

といい、春香に、

 「私と京子で一部屋にするから、春香は希美とでいい?」

と尋ねた。春香がうなづくと、

 「ま。夏樹くんがいなくて寂しいかもしれないけど。希美に抱きついてもいいから」

 「えっ! いやそれは」と春香が言いよどむと、希美さんが、

 「あら? 先輩、私はバッチこいですよ!」

と笑いながら両手を広げた。それを見た春香が笑いながら、

 「ええー! そっちの方が怖い!」

とのけぞり、女子たちが笑い出した。

 俺も笑いながら、

 「ははは。まあ、春香。身の危険を感じたら俺の所に来いよ。一緒に寝よう」

と言うと、春香が「えへへ。そうしようかなぁ」。

 ふと見ると、二年の男子のペアが、ちょっと頬を赤らめながら、

 「おい。希美ちゃんってあれか?」「百合?」

と後ろでゴニョゴニョと小声で話し合っている。それを見た希美ちゃんが、

 「ちょっと先輩。私、そんなんじゃないですよ!」

と言うと、二人は、

 「お。おう!」「だよね」

と、挙動不審気味に返事をした。


 俺は思い出したように、

 「あ。そうだ。そろそろ晃君を迎えに行くけど、ついでに冷蔵庫の中身買ってきた方が良いよな?」

と言うと、久美子さんが、

 「忘れてた。……んん。じゃ、メモを書くから春香にお任せするわ。若奥様よろしくね」

 「ふふふ。わかったわ。何かあったら久美子の携帯に電話するね」

 

 それから荷物を部屋に運んで、俺と春香は一年生の晃くんを迎えに稲取の駅に向かった。


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