6.王女のマリッジブルー、そしてウルクへ
1/2
ウルルの月後半になった頃には、これからバビロニアへと嫁いでいくアミュティス王女の予定も大体が決まっていた。
てっきり結婚式はバビロンで行うと思っていたんだけれど、実際はクドゥリ王子が最高位の行政長官として君臨しているウルクの街でするらしい。
というのも、ウルクの都市神は高位の女神イシュタルなのだそうで、やはり神様への礼儀を尽くすという意味があるのだろう。
そのイシュタルの神殿で式を行い、その後にバビロンのマルドゥークの神殿へと挨拶へ行く予定になっている。
とまあ、それは置いておいて、私たちは一足先にウルク入りすることにしたので、今日はその挨拶をするために王宮へとやってきた。
王女の部屋に入ると、部屋には赤いペイズリー柄のタペストリーが掛けられている。
アミュティス王女は窓のそばで籐の椅子に腰掛けていた。エクバタナの街を眺めているようで、その横顔はどこか物憂げに見える。
「王女、ナツキ殿とハルカ殿が見えましたよ」
侍女のライラさんが声を掛けて、ようやく王女が私たちを見た。
やつれた表情。よく眠れないのだろうか、目の下にクマが浮かんでいる。
うん。この様子には見覚えがある。
「アミュティス様、どうやらマリッジブルーみたいですね。よく眠れないのでしょう?」
そう問いかけると、王女はじっと私を見て、
「……あなたの言うマリッジブルーというのが何なのかわからないけど、慥かにここのところ眠れていないのよ」
無表情に近い王女の顔。これはいけない。症状が重めのようだ。私はマリッジブルーとは無縁だったけど、こんな様子の友人がいた。
「今日は、出発の御挨拶にと思ったのですけど、不安なのでしょう。少しお話ししませんか?」
すると王女はそっと目を閉じて小さくため息をついた。その仕草が辛そうで痛々しい。
「……そうね。そうさせてもらおうかしら」
夏樹の方を見て、
「あ~、夏樹は……」と言うと、夏樹が察したようで、
「では、私は先に失礼――」と言いかけた。
けれどその時、王女が、
「一緒に聞いてもらえるかしら? 男の人の意見も聞いてみたいし」
ちらりとこっちを見たので肯くと、
「そういうことであれば、失礼させてもらいます」
と言った。
ライラさんが王女のそばに敷物を広げてくれたので、お礼を言って夏樹と一緒に座る。
「なんだか、自分が結婚しているところを想像できないのよ。相手のクドゥリ王子のイメージもできないし、王族として嫁いでいくのは当たり前だってわかっているんだけど……」
王族や貴族の結婚の場合、それも政略結婚の場合はこういうのがあるから余計に難しいことだと思う。
「そうですよね。不安ですよね。だって相手の顔すらわからないんですし、人柄はお聞きになりましたか?」
と尋ねると、
「それがね。向こうのアパル王が軍人出身だけあって、王子も軍属で、明るく面倒見の良い性格とは聞いたんだけど」
「上手くやっていけるかは、実際に会ってみないとわからない?」
バビロンから2人の使者が来ているから、王子の人物評を聞いてみたのでしょう。けれども、結局、人づてでは不安は消せなかったみたいだ。
「そうそう。それに私って、けっこう自由に行動させてもらっていたから、それももう終わりなんだとか、向こうで上手くやっていけるのかとか、もうこの街も見ることができないんだなとか考えてしまって」
「ははあ、なるほど」
肯きながらも、簡単にマリッジブルーと言って済ませることはできないなと思った。
だって、こうして近くで王女の様子を見てみるとよくわかる。やつれ方が酷くて、声も少しかすれている。
こういう時は気が強いとかはまったく関係がない。迷う時は迷う。そういうものなのだから。
「色々と考えはじめると目が冴えちゃって。最近は、何でもないことなのに急にイライラすることもあって――」
でもね。王女の場合は、実際に向こうに行って、実際に王子とあって、実際に結婚してみないと、根本的に解決しない悩みなんだよな~。
そんなことを思いつつ、わざと明るい口調で言ってあげた。
「じゃあ、結婚を取りやめましょうか?」
「え?」
「ああ、それは難しいですか……。なら王子と性格が合わなければ離宮を用意してもらって、今まで通り自由にさせてもらうなんてどうです?」
「え、ええ?」
「同盟のための結婚に過ぎないのなら、そんなことも可能なんじゃないでしょうか。向こうが嫌になったら、半年くらい国に帰らせてもらうなどは?
たいてい上手く行かない時は、向こうは向こうで別の愛人とか作っているでしょうし、こっちはこっちで自由にやればいいんじゃないですか?」
「ええっ、ダメでしょ、そんなの。……だって、バビロニアとの同盟のために結婚するんだし」
「同盟っていっても、それはアッシリアを滅ぼすためのものでしょう? 兄君様のところへリュディアの姫が嫁いでくると聞きましたけど、それも同じ目的ですよね。
ならばアッシリアさえ倒してしまえば、その後は問題ないんじゃないですか?」
「まあ、それはそう、なのかしら……」
言葉を濁して黙りこくった王女は、少しして顔を上げた。
「うん。……やっぱりそれはできない。だって私は――、ここメディアの姫なんだから」
まだやつれてはいる。けれどその目はさっきまでとは違う。覚悟をした人特有の力強さと言うか、そういうものが見えた。気のせいか、今では不思議な覇気まで漂っているみたいだ。
「どうやら元気になったみたいですね」
「――そう?」
「ええ。少し心が軽くなったんじゃないですか?」
「そう言われると、そんな気もするような」
今ごろ気がついたような様子で王女がつぶやく。それを見て、上手くいったと胸のうちでつぶやく。
先が見えなくても行くしかないんですよ。ぐずぐずと思い悩んでいても、どうにもならない。それなら覚悟を決めるしかない。どんな状況になってもどうにかなると。
そう思っていれば、大概は本当に何とかなるものなんだと思いますよ。
「結婚って、女性にとっては人生の大きな節目です。普段の生活と違うことをするのですから、普段とは違う苦労をするのは当然のこと。
ですが、苦労とか悩んだりした先にこそ、後から幸せだったと言える人生があるんじゃないですか?
何にもせずにいて思わず幸せになれたなんて。そんなのは幸せじゃないですよ」
なんか凄く語っちゃってるけど、ちゃんと王女には伝わっているようで黙って聞いてくれている。
……それにですね。アミュティス王女。貴女はもう一つ、大事なことを忘れてますよ。
「王女」
「ええ」
「一人で頑張りすぎなくても良いんですよ」
「……」
「王女にはライラさんだっていますし、私だって愚痴くらいならいくらでも聞きます。――っあ、でももう出発しますから向こうで合流してからになりますけど」
するとアミュティス王女は、斜め後ろに控えるライラさんをそっと見上げた。
「ハルカさんの言うとおりですわ。私でよければいつでも」
「そっか。ありがとう、ライラ。……ハルカも」
ようやく少し笑みを見せた王女に、にっこりと微笑みかける。うん。きっともう大丈夫。
というわけで、夏樹の方を向いて、
「じゃあ、ここまで黙って聞いていた夏樹に締めの一言を」
「おい! そりゃ無茶ぶりだ!」
ぎょっと慌てて素の表情を出す夏樹を見て、みんなが笑った。「ははは」「ふふふ」
一緒に笑い声を上げながら隣を見ると、夏樹と目が合った。やれやれと小さくを息をついてから、穏やかそうに微笑む夏樹。
その腕にそっと手を添えてぽんぽんと軽くタッチした。
からかっちゃったみたいだけど、私がやりたかったことは、多分わかってくれているはずなので問題ない。
王女が笑ってる。今はそれが一番だ。
◇◇◇◇
あれから王宮を辞した私たちは、その翌日、エクバタナを出発した。
途中の町や村に泊まりながら、ザクロス山脈を西へ西へと進んでいく。幾つもの山を越えて山脈を下りていくと、高原の空気がいつしか熱く乾燥したそれに変わっていた。
とある峠に出た時、目の前に茶色い大地に刻まれた渓谷、そして流れていく大河とその周囲に広がる緑が広がる。
……久しぶりのメソポタミアだ。
「ティスリトムの月だというのに、やっぱりこっちは暑いね」
広がる景色を眺めながらそう言うと、隣に並んでいた夏樹が苦笑した。乾燥しているからカラッとした暑さなんだけど、すぐに喉が渇いてしまう。
「特にエクバタナから来るとそう感じるよな。これでも過ごしやすい季節に入ってきたはずなんだけどさ」
「私たちにとっては平気だけれど、王女にとっては最初はキツいかも」
「ああ。じきに慣れるだろうけど、とりあえず1年は我慢か……」
ホームシックになるかもだけど、夏樹が言うようにまずは1年の辛抱だろう。2年、3年と時が経つうちに、王女も少しずつバビロニアの人間になっていくはず。
いちおう私たちの契約期間は5年になっている。その期間が終わる頃には、こっちに友達が増えていることだろう。
「それはともかく、行きましょうか」
「だな」
目的地はまだ先。あんまりゆっくりもしていられない。私たちは再び坂道を歩き出した。
完全にメソポタミア地方に入った後は、チグリス川に出てから川沿いに南下。途中を船で川を渡り、一路バビロンへ。
久しぶりにバビロンの巨大な外壁を見上げる。ただ私たちの用件はウルクにあるので、すぐに通過してウルクへと向かう。本当は少し滞在してみたかったけど、いずれまた来よう。
とまあ、駆け足でウルクへとやって来たわけだけど、この都市だってかなり広い。人口は5万人ほどと聞いている。かの有名なギルガメッシュ叙事詩の舞台となった都市だ。
町の周囲にはバビロンと同じくナツメヤシや麦の畑が広がっていて、いざ城門ともいえるようなレンガを重ねた巨大なゲートをくぐると、からっと晴れた空の下に日干しレンガの家が建ち並んでいた。
町並みの向こうには2つの神殿と王宮が見える。
東にあるのが壁で市街と区分されているエアンナ、つまりイシュタル神のジックラト、西にあるのが大神アヌの聖域で、それぞれ一番上の階層に焼きレンガを積み上げた神殿が築かれている。アヌはシュメル最高神に位置づけられる天空神である。
ジックラト自体が一つの丘とか山を模していて、天と地を結ぶ、神に近い所という意味があるらしい。神殿に向かう階段は、日本に置き換えてみれば、さしずめ神社の本殿に通じる階段といったところだろうか。
あちこちに水路が設置されていて、あたかも砂漠の中のオアシス都市といった風情だ。大きい水路では舟で物資を運搬さえしている。こうした水路が街中に張り巡らされていて、人々の暮らしを支えているのだろう。
「久しぶりすぎて、何だか初めて来た街みたいだな」
そう言って笑う夏樹に、私も肯きながら、
「前に来てから300年くらい経ってるもんね。どれだけ変わっているか楽しみかも」
「それはともかく……まずは住居を紹介してもらわないと」
何をするにしても、一番最初に私たちの住居を斡旋してもらわないといけないんだよね。
そんなわけで、2人並んで王宮に向かって通りを歩く。
サンダル越しにゴツゴツした地面と太陽に熱せられたあつさを感じる。
日射しを避けて建物の影で一休みしている老年の男性、ラクダを連れた商人、水路で遊ぶ子どもたち。今は夏樹もそうだけれど、男性はみな白い円筒型の帽子を被っている。
途中で見かけたフルーツの露店では、店先に絞り器が置いてあってジュースを提供しているようだ。ちょっと寄ってみたかったけれど、今は我慢。
王宮前は賑やかな広場になっていたが、それを突っ切って奥にある大階段へとたどりついた。警備の兵士に夏樹が声を掛け、許可を得てから2人で階段をのぼる。案内に1人の兵士が付いてくれるようだ。
オレンジ色がかった焼きレンガを積み上げて作られた階段。真っ直ぐに続いている階段は、あたかも天に昇るための階段のようにも見える。
町中にある階段はロバが上れるように一段一段が広く、また低く作られていたが、ここは普通の階段と言えばいいか、そこまで配慮されていない。二十段も上がれば視界が高くなって、街の様子がよく見渡せた。
灰色の日干しレンガで作られた家々。どこまで言っても、その薄汚れた灰色と大地の黄色が広がる街に、ナツメヤシの緑色が、まるでアフリカのサバンナにいくつものバオバブの木が立っているように見えた。
階段をのぼりきったフロアで、ちょうどよく官吏らしき男性が居た。案内役の兵士が、その男性に話しかける。
私たちの身分を証明する粘土板を見せて用件を伝えると、少し慌てた様子で王宮の中に入っていった。おそらく中が役所になっているのだろう。しばらくすると1人の少年を連れて戻ってきた。
その少年は文官見習いだそうだけれど、元々アミュティス王女の担当になる予定らしい。今は、私たちの住居の手配をやってくれるとのこと。
12歳ということもあって幼さの残る顔立ちだけれど、なかなか賢い子どものようだ。名前はネリグリッサル君と言う。
「クドゥリ王子の妃が来るということで、今、王宮も神殿も準備に忙しいんですよ」
「たしかにそうでしょうね」という夏樹。つづけて、
「王女は気難しい方ではないし、元々の王女の侍女も一緒に来る予定ですから、あまり心配しなくても大丈夫だと思いますよ」
「助かります。……お二人の気が合えば良いのですが」
「はは。それは私どもも同じ気持ちです。王女は明るく活発な性格で、私どもも誘われて一緒に森に狩りにも行きました」
ネリグリッサル君と夏樹の会話を聞きながら、一緒に歩いて街の大通りから少し外れたところにやってきた。
「すみません。たしかこのあたりだったと思うのですが、ちょっとあそこで聞いてきます」
そう言ってネリグリッサル君が巡回している兵士の方へと歩いて行った。
なにやら少し時間がかかりそうなので、夏樹と一緒にすぐそばの露店を覗くことにした。
年配のお爺さんが店番をしていて、たくさんの籠や壺に果物や穀物などが入っている。
「少し見せてもらっていいですか?」
「もちろんいいとも」
ちょうど少し前に収穫のピークが来ていたピスタチオ、セミドライタイプのデーツに、同じく乾燥させたイチジク、麦が数種類にお米、いくつかの豆や乾燥ハーブもある。
思いのほか種類が豊富だったほか南部特有のものもあって、どれを買おうか迷ってしまう。
「この乾燥ライムとデーツ、それとこっちのお米をいただけますか?」
「このデーツはうちの農園のでね。他のより味が良いよ。ピスタチオなんかも食べ頃だけどどうするね?」
「ふふ。そうですね。じゃあ、ピスタチオと、あとこのニンニクももらおうかな」
「あいよ。……ここいらじゃ見かけない顔だね」
その質問に夏樹が、
「ええ。私たちはもっとずっと東の出身で、今日ウルクに到着したばかりなんですよ」
「ほうほう。それはそれは。ただの旅人なんてことはないの。どこぞの商人さんってところかな」
「ま、夫婦2人だけの商人ですけどね」
支払いを終えたところで、タイミングが良くネリグリッサル君もやってきた。
「ああ! ちょうど貴方を探していたところでした」
え?
思わず夏樹と顔を見合わせる。
「お若いのは王宮の役人か。儂に何か依頼でもあるのかの?」
「ネリグリッサルです。カームラーン・エギビ殿。……貴方に用があるのは、こちらの2人です」
「……ほう?」
そう言って、カームラーンさんと呼ばれたお爺さんは、私たちを見上げた。
露店の前でカームラーンさんに、役人から預かった粘土板を渡して、用件―エギビ家が所有する不動産のうち家を一軒借りたいと申し出ると、ちょうど良く先日購入した建物があるらしかった。
なんでもカームラーンさんはウルクのエギビ家家長だそうで、一族としては他にバビロン、ボルシッパという街に物件を持っているとか。
お店の交代の人がやって来たので、その物件へカームラーンさんが直々に案内してくれることになった。
道すがらウルクの歴史などを話してくださったが、それがなかなか興味深い。
たとえばアミュティス王女が嫁ぐクドゥリ王子だが、もともとアッシリア時代のウルク知事にクドゥリという人がいて、その息子が現バビロニア王のアパル王なのだという。つまり、王子の家は元々ウルク出身で、王子は祖父の名前をもらったらしい。
父のアパル王が出征の時は、実質クドゥリ王子が国内行政を担っているそうで、やはり相当な人物のようだ。
ちなみに王子が一緒に出征していて不在の時は、その代官が行政を担っている。
「さて、着いたようじゃ」
そこには裏にナツメヤシの林を持つこぢんまりした一軒の家だった。大きさ的にはエクバタナの家とさほど代わらないくらいだろうか。
さっそく中に入ると、さすがに最近まで使われていただけあって状態は悪くなく掃除もされているようで綺麗だった。
部屋は3つでテーブルや寝台などの基本的な家具は置いてくれてあった。奥に倉庫スペースがあるから、前の住人も商人だったのだろう。そして、その倉庫の奥にナツメヤシが植えられている庭があった。
庭の周囲はぐるっと壁でかこまれているけれど、一箇所スリットのような縦長の細い穴があいている。何だろうと思ってカームラーンさんに尋ねてみるとナツメヤシのための取水口だという。なんでも、灌水といって年に何度か根元に水を流してやる必要があるらしい。
それにしても……。
裏口の近くから庭を眺める。それなりに広い庭。夏場はナツメヤシのお陰で一部に日陰ができる一方で、空も見上げることができるので星空が綺麗に見えるはず。
ここで2人でバーベキューしながらゆったりと過ごすのも良さそうだ。
一通り建物を確認したところで、そこからは商談となった。
最初に出てきたのは経営資金の話。
エギビ家は豪商のようで経営資金の貸し出しも行っているという。しかし、もしその貸し出しを受けたら、私たちはエギビ家から出資を受けた小商人となってしまうし自由がきかなくなる。
私たちはアミュティス王女直属の商人という形になるし、お金にも困っていないこともあり、それは夏樹が断った。いざとなれば物質創造できるしね。
一方でエギビ家との提携はおこなっておきたいので、共同出資金を出すことにしたようだ。
ちなみに家の買い取りの場合は410シュケル、賃貸の場合は月に10シュケルとのこと。夏樹と相談して賃貸にすることにした。いつまでウルクに居ることになるのかわからないし。
その後で、その他の細々したことを話し合って、夏樹とカームラーンさんは正式な契約を結ぶことになり、ネリグリッサル君が保証人として文書を粘土板に刻む。
契約書というか契約粘土板を確認した夏樹とカームラーンさんが、互いに印章で印を押し、この契約は有効なものとなった。
「よい商談ができたわい」
というカームラーンさん。ネリグリッサル君も用件が終わったので帰っていくが、エギビ家の場所を知りたいということで夏樹も出かけて行った。
私は残って改めて家の清掃だ。今回はテーブルや椅子を雑巾で拭くぐらいで大丈夫そうなのでさっと済ませてしまうと、今度は時間が空いてしまったので、どこに何を置こうとかレイアウトを考える。
……新しい家って、なんだかドキドキするよね。
そんなことをやっている間に夏樹が帰ってきた。2人で部屋の使い方を決めたわけだけど、こうして私たちのウルクでの生活が始まったのです。