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AS版その4『魔法少女の帰還』-2

 カチャ……


 屋上へ出る階段のドアが開けられる。屋上にでてきたのは3人の人間だった。

「グレン・ナジャ!」

 ベル・ホワイトが三毛猫のヌイグルミに似た預言者に声をかける。

「ようこそ、魔法少女ベル・ホワイト、ロイヤルセレナ……そして……」

「俺は、付添人だ。気にしないでくれ……」

 隆幸は、邪魔にならないようにドアの横の壁にもたれかかる。

(本当に、瀬里奈や白鈴先輩が異世界人だとして、いつかは生まれた世界に帰る……その時俺は……どうしたいんだろうな?)

 トコトコと、一匹のヌイグルミが隆幸の側に来る。

「あなたにはそのうち重要な役目ができるような気がします。しかし今はその時ではありません。本来なら、眠っていてもらいたいとこですが、邪魔をしないというのならば、見学していってかまいませんよ」

「ありがとう、ええっと……グレン、ナダ?」

「グレン・ナジャといいます。ワーボワールでは預言者として知られています」

「預言者、ね……俺や、瀬里奈がこれからどうなるかわかっているのか?」

 隆幸がグレン・ナジャに尋ねる。

「……ロイヤルセレナは、ベル・ホワイトがワーボワールに帰った後、この学校唯一の魔法少女として活躍していきます。やがて新たな魔法少女が現れますが、性格に難のあるその少女と共に成長していき、やがて……」

「やがて……?」

「やめましょう、これ以上は話しても仕方がないことです」

「……」

「私が言える事はほんの少しだけ……あなたにはこれからもロイヤルセレナを支えてもらいたい、ということです」


「レオ、そういえばパクもベル・ホワイトと一緒にワーボワールに帰るだったよね」

 ロイヤルセレナはそこにいたヌイグルミの一匹に声をかける。

 ロイヤルセレナの使い魔、レオに声をかける。

「寂しい?」

「いや……入れ替わりで何人かがこちらに来ることになってる。寂しくない。それにお前がワーボワールに帰るときには一緒に帰れるからな」

 見た目は黒彪のヌイグルミなんで笑ってるかどうかわからないが、その声は弾んでいる。


「今日、私は生まれた世界に帰る――フフ、ただそれだけなんだけど、なんか大きな騒ぎになってるね」

 ベル・ホワイトだけはいつもと変わらない。

「……思い出すな、サーヴィン・メプルがワーボワールに帰った時の事……」

 目を閉じて、過去のことを思い出すベル・ホワイト……

「あの時は、先輩だったサーヴィン・メプルの意思を受け継いで天逆衆を倒そうなんて思った……でも、」

 ベル・ホワイトはロイヤルセレナを眺め見る。

「それは、あなたに託すしかないよね、ロイヤルセレナ」

 ベル・ホワイトの目にはいつの間にか涙があふれていた。

「故郷に帰る……そう、私はこの世界の人間じゃない……でも、この世界で生きてきたのは事実……」

 目を閉じて、思い出す――

 仮とはいえ、自分を育ててくれた両親――仲の良かった友人……クラスメイト達……たくさんの思い出が浮かんでは消えていく……

「………これも、魔法少女として生まれた人間の運命、なんでしょうけど………」

 そのお礼として、魔法の指輪やアクセサリーを渡してきた。自分がこの世界から消えても、寂しくならないように……自分がかつてこの世界にいたと言う証を、少しでも残しておきたかったからいろんな人たちに渡してきた。

 直接手渡したものもあるし、さりげなくカバンに忍ばせこともある。

 もしかしたら、不審に思われたかもしれない。今となってはどれもいい思い出だ。

「……そういえば……宍戸先輩に、告白できなかったのは心残り、かな……」

 演劇部部長、宍戸秀作……成績学年トップの秀才。でも、いつもユーモアを忘れないナイスガイ……いつも見ていた、気がついたら目で追っていた。

 そして、気がついたことがある。

 彼もまた、追っている人がいると…………


 ―――草薙苺―――


 クラスメイトの女の子で、仲の良い親友…………彼女と話すとき、宍戸秀作は本当に嬉しそうな顔する。本人たちは、気がついていないかもしれないがそこには自分が入り込むのは難しい絆がある……

 それがわかった時、それが自分の初恋であり初恋は実ることがないということを、知らなくてはいけなかった。

「これはまあ、仕方ないことかな。苺ちゃんとの友情もこわしたくはなかったしね」

 それに、自分は異世界人だ。

 どんなに人を好きになろうと、住んでる世界がちがう…………

「寂しい別れもあるかもしれないでもそれは、魔法少女として成長していくひとつの道……生まれ故郷に帰ることも、また………」




「……この学校の事は任せたわ。ロイヤルセレナ。天逆衆から、生徒達をしっかりと守ってあげてね」

「はい、わかりました、ベル・ホワイト!!」

 そう言って二人の魔法少女はしっかりと手を握り合った。


「そろそろゲートを開きます」

 グレン・ナジャがそう言う。


 その時、だった――――――




「茶番は、そこまでにしてもらおうか……」

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