S版その5-3
「待て~い!!」
一人の男子生徒が、媛崎中学校の生徒を次々と魔法少女の衣装に着せ替えていく、凛華の前に立ち塞がった!
「あなたは魔法少女?」
「いや、俺はどう見ても男だろ? 魔法少女な訳がない」
ちんぷんかんぷんな凛華の言葉に、一瞬あきれかけたが、仮面をかぶせられた人間がおかしくなるのを思い出し、気を取りなおして竹刀をかまえる!
「俺は、魔法少女ロイヤルセレナの友人小鳥隆幸!! その仮面は魔法少女の敵によってかぶせられたものだろう? 魔法少女を守るために俺がその仮面を引きはがす!!」
「……」
凛華は、上から下まで隆幸を見る。
「……あなた、魔法少女じゃない、なんて言ってるけど……本当は魔法少女でしょ!?」
「そんなわけないだろ!!」
なぜか突然断言してきた凛華に、思わず突っ込んでしまう隆幸――
「正体を現しなさい魔法少女!!」
ぶわぁ!!
「うわ!!」
凛華の手から不思議な力が発せられる――
「ゲ……」
隆幸の体がフリフリの魔法少女衣装に包まれる……
「……確かに俺は、一回魔法少女になったことあるよ! でもあれは瀬里奈の体だったし、こんな風に自分の体でこんな格好すると……やっぱり、嫌なものが……」
「覚悟しなさい! 魔法少女!!」
「――!!」
ブン!! バギ!!
凛華が、ハリセンで隆幸を叩こうとする。が、隆幸は竹刀でそれを受け流す!!
「これでも俺は、小学校時代の敗戦は御陵との戦い一回だけなんだよ!!」
竹刀をかまえ直す隆幸。そして、凛華のハリセンと叩き合う。
「手ごわいなぁ」
凛華は相手が手ごわいとわかるや否や逃げ出した!!
「あ、おい!! 俺をこの姿のまま放っておく気か!?」
隆幸は慌てて追いかけるが、凛華の逃走速度はかなり早く見失ってしまった。
「あれ? 魔法少女?」
「じゃないぞ、あいつ……」
「あ……………………」
数人の生徒が魔法少女の衣装を着せられた隆幸に気づく。
そして、ひそひそと……
「あ~~くそ!! 何で俺はいつもこういう目に合わなきゃいけないんだ!?」
隆幸の悲鳴が虚しく響いた。
「ロイヤルセレナ、敵が現れた!!」
レオが瀬里奈にささやく。
「……わかった、場所は!?」
少し考え込んだ後、瀬里奈は立ち上がる。
「行くんだな? ベル・ホワイトには知らせないのか?」
瀬里奈は、少し考え込む……
「天逆衆が、現れたってことは……またいろいろな被害が出てるんでしょ? だったら急いだ方がいいよね!」
(そうでしょ? 隆幸君)
心の中で、自分の代わりに戦ってくれる少年の心に呼びかける。
(……)
(隆幸君?)
(あ、ごめん……俺に何かようか?)
心の中の隆幸は、少しづつ弱まっていってるのか? 最近はその存在を意識しないと感じることができない。最初の頃は瀬里奈も違和感を感じていたが、今では隆幸の心があるなとは思えない。
――瀬里奈の心と隆幸の心は同化しつつある――
「戦いが始まる。魔法少女ロイヤルセレナ、いくよ! 『魔力解放・変身』!! ロイヤルセレナ・オーロラデビュー!!」




