S版その5-1
「魔法少女にいじめられたから、学校を休んだ……? 鹿康、あんた、何言ってるの?」
高校3年生の入田凛華は、布団を頭からかぶってふてくされている弟、入田鹿康を呆れた目で見ていた。
「それで、お父さんや兄、利康を伴って復讐しに行ってまたやられたって訳……?」
「そうだよ! テヘラゲラ!!」
「……」
有名女子高校の制服を私服にしている変態の父、蛸康、家族を研究する生物系大学自宅大学の大学院生である兄、利康――変態二人を伴って復讐しに行っても、成功することはまずないだろう――
「……鹿康、あなたはまだ若いんだから、あの二人みたいに変態になったらダメなんだよ」
蛸康、利康はもう手遅れだろう。
「それならまず、魔法少女をどうにかして、俺が学校に行けるようにしてくれ!! ゲヘラゲヘラ!!」
「……わかったわ、お姉ちゃんに任せなさい……」
入田凛華、変態家族、入田家の長女。
入田蛸康と入田UMA子の娘――兄である利康に対してはもう諦めているが、弟である鹿康はまだ正常な道に戻せると信じている――――変態――――
「ここが、媛崎中学校ね――」
凛華は自転車で、ここまで来た。
中学校の時は父、蛸康がそこの制服が欲しいということである女子中学校に通わされていたため、ここに来るのは初めてだった。
「さて、弟をいじめた魔法少女を見つけなさいといけないわね」
誰か聞いて回るというのも考えたが、凛華はもっと実直な手を使った。
すなわち、直接呼び出す――
「魔法少女!! てできなさい!!」
校門の前に立ち、持参したスピーカーでそう叫ぶ。
「こら、そこの女子高生!!」
凛華の声を聞いてやってきたのは魔法少女ではなかった。
学校の男子教師数人が、警備用のさすまたをもってやってきたのだ。
「迷惑だからやめなさい!」
相手が、女子校の制服を着た少女だということがわかり、力による制圧はなく注意して帰ってもらおうということになった。
「魔法少女、でてきなさい!!」
凛華はかまわずスピーカーで叫びまくる。
「なにアレ?」
「魔法少女のファンじゃないか?」
「俺も、俺達を助けてくれた魔法少女には会いたいけどな」
「俺は魔法少女を彼女にしたい」
前回の事件で自分たちを助けてくれたという記憶を持つ生徒達は魔法少女に対し好意的だ。
だからこそ、その魔法少女の事を大声で呼びまくる凛華に対し疑念の目を向けていた。
「魔法少女、いいから早くでてきなさい!!」
「はいはい、いい加減しないと警察に補導してもらうことになるよ」
そう言って男性教師は、凛華からスピーカーを取り上げ校門から引き離した。
「まったく、魔法少女はどこにいるのよ!?」
校門から引き離された凛華は、媛崎中学校の近くにある喫茶店でコーヒー一杯を頼んで居座っていた。
「そんなに、魔法少女に会いたいの?」
ふと、凛華の横からそんな声が聞こえてくる。
「……?」
いつの間にかカゲホウシが、凛華の隣に座っていた。
「魔法少女に会いたいならば、私が力を貸してあげましょう。
そう言ってカゲホウシは凛華の顔に仮面をかぶせる――!!




