S版その1-2
魔法少女ベル・ホワイト――その名の通り、純白の魔法衣装に美しい鈴を飾りつけたような姿をした魔法少女だ。
リンリン……!
美しい鈴の音がベル・ホワイトの持つ美しいステッキにつけられた鈴から奏でられる。
年の頃は瀬理奈達とそう変わらない。この媛崎中学校の生徒のだろうか?
「さて、天逆衆の仮面をかぶせられた時、君の欲望はそれでかなったのかな?」
「お前でもいい……俺の彼女に……」
弾け飛び、転がった仮面の疾風が起き上がる。仮面の下に見える瞳が、欲望でギラギラ輝いている。
「ダメだよ、私好きな人いるもの。それにぃ、あなたは好みじゃないし」
「うがぁ!!」
ベル・ホワイトの答えを聞いた疾風が吠える。
「か・の・じょ~~!!」
それと同時に気を失っている女の子達を拘束している蜘蛛の糸のような物を口から吐き出す!!
「なるほど~彼女が欲しいという欲望を天逆衆に付け込まれたわけね」
ベル・ホワイトを拘束しようとする蜘蛛の糸!! それを軽やかにかわすベル・ホワイト!!
「『マジカルソード!!』」
リン!!
ベル・ホワイトの呪文とともにステッキが光を放ち形を変え一振りの剣となる――!!
リリン!!
ベル・ホワイトの使う魔法道具は必ず鈴の音の効果音が鳴るらしい――
彼女の動きと重なって非常に美しい……断ち切られた蜘蛛の糸が空中で解けるように消えていく。
『マジカルソード』
これはまた魔法のひとつである。一見物理攻撃のように見えるが、魔法の力によって作られた剣の刃は少女の非力な力でも、あらゆるものを断ち切れるようになる必殺の刃となる。
また魔法による属性をつけることも可能。
可愛らしい魔法少女に切られる事を望む悪役が急増中とか……
tamia☆KARI書房刊『魔法少女大戦攻略本』より抜粋
「かのじょっ!! かのじょっ!!」
自分の糸が断ち切られたのを見た疾風が奇声をあげる!! まるで意思を持たない雑魚敵のように……
リン! リリン!!
ベル・ホワイトはそれに構わず女の子達を拘束していた糸を断ち切り、解放していく。
「パク! その子達をお願い!!」
ベル・ホワイトがまとっている魔法衣装の中から、何かが飛び出てくる。
「ああ、わかったよ!」
それは、茶色い犬、に見えた。だけど、犬にしては少しおかしい。
二足歩行で歩いているし、何より言葉を喋っている。
「おい、そこの! ちょっと手伝ってくれ!」
「うわっ! ヌイグルミがしゃべってる!」
瀬里奈が、茶色い犬のような物体に目を丸くする。
「俺はパク! ベル・ホワイトのお目付け役だ」
「それはパク、私の使い魔だよ」
ベル・ホワイトとパクが同時に言う。
「俺の彼女を、どこに連れて行く!?」
気を失っている女の子の一人に手をかけたパクに襲いかかるとする疾風!!
「待ちなさい、あなたの相手はこの私、ベル・ホワイトです!!」
女の子たちを守るように疾風の前に立ち塞がるベル・ホワイト!!
「相手? 俺と付き合ってくれるのか!?」
仮面の下のギラギラした瞳がベル・ホワイトを捉える。
「俺の彼女になってくれるのか!?」
「だから私には好きな人がいるって言ってるでしょ!!」
リン!
マジカルソードをかまえるベル・ホワイト!
「いやいや、付き合ってやってもいいんじゃないのか?」
突如、疾風以外の男の声が聞こえてきた。
「え?」
「なんだと!」
「え、何」
ベル・ホワイトとパクに緊張が走る。女の子を助けようとしていた瀬里奈は驚いてその声の主を探そうとする。
「かのじょ!!」
疾風は相変わらずだ。
「彼女が欲しいというその願い、叶えてやったらいいじゃないか。魔法少女は夢と希望を叶える存在なんだろ」
教室の一角に、何かが、黒い何かが集まっていく……
「天逆衆――!!」