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S版その4-8

『うん……』

 ロイヤルセレナの中で、隆幸の心が目を覚ます……

『……俺は……戦いは、どうなって…………


「『コロナリング・スピキュール』!!」


 ズウウウウウウウン!!


「3回目かよ!!」

 現実の隆幸が叫ぶ!

 その声も、爆音にかき消されてしまう――


「まだまだいくぜ!」

 爆発の中心でヤミゴロモが平然と立ち上がる――


「「フレー! フレー! ヤミゴロモサマ!! カッコイイー!!」」

 黒衣のチアガール集団がヤミゴロモに黄色い声援を送る!!

「まったく、もうあいつ一人で勝っちゃいそうだね」

「私たちの出番がなくなってしまいますわ」

 胸元に付けた仮面に体を乗っ取られた生徒達の側に、カゲホウシとクロマントは避難している。ヤミゴロモは、意識して彼らを巻き込まないように技を放っているようだ。


『今の技って……!?』

「あ、小鳥君、目が覚めたんだ……」

 弱々しくロイヤルセレナが自分の心の中の少年に言葉をかける。

「とんでもない攻撃だよね、小鳥君に変わってもらっても、どうにもできそうにない……」

『さっきも、あいつは同じ技を使っていた――あいつはあの技に絶対の自信を持っているってことか……』

 心の中の隆幸は、冷静にヤミゴロモの技を観察しているようだ。

『あと、何回か見れば弱点がわかるかもしれない――』

「あと何回もくらったら、バリアがもたないよ!」

 ロイヤルセレナはバリアを維持するのが精一杯のようだ。

「あいつの技は、自分を打ち上げ花火に変えて地面に落ちた衝撃で爆発を起こしている……そんな感じだ――」

 ロイヤルセレナの中の瀬里奈と隆幸の会話が聞こえていたのだろうか? 現実世界の隆幸がそう声をかけてきた。

「――コロナリングというのは、日食の時に起こる太陽が光の指輪のようになった状態、スピキュールというのは、太陽の表面で起こる爆発のこと――名称は太陽に由来している」

 隆幸の横で、秀作がどうでもいい豆知識を披露する。

 そして二人は声をそろえて言う――

「「――弱点は、ある――」」


『そうか――』

「何がそうか――なの?」

 ロイヤルセレナが不安そうに言う。

『ロイヤルセレナ、お前、風の魔法、使えたよな……?』

「風の魔法?」


「これで決めてやろう! 『コロナリング・スピキュール』!!」

 呪文を唱え、身体の周りに炎の輪を出現させ、天へと向かって上昇するヤミゴロモ!


「バリアはいらない! 行きますよ宍戸先輩!!」

「わかった!!」


 上空のヤミゴロモを見、その落下地点を予測――その場所に向かって走り出す隆幸と秀作!!


 ズウ…………………


「おら!!」

「とりゃ!!」


「―――!?」


 ヤミゴロモが地面に激突する寸前、2人の男子生徒が剣でその体を空中で絡め取る!


「打ち上げ花火なら打ち上げ花火らしく、上空で爆発しろ!!」

「太陽は昇るから美しい。落日は悲しみを誘うだけだ……」


「何を――!?」


 ヤミゴロモが驚愕する。


「「うおりゃあ!!」」


 2人は剣を思いっきり振り、ヤミゴロモを再び上空へと押し上げた!!


『今だ! ロイヤルセレナ!!』

 心のなかの隆幸がロイヤルセレナに指示を出す!!

「『キラーウィンドウ』!!」


 ヴォン!!


 ロイヤルセレナの風の魔法がヤミゴロモをさらに高く上昇させる!!


「し、しまった!!」

 ヤミゴロモは、自らの秘術コロナリング・スピキュールに絶大な自信を持っていた。

 炎属性の魔法というデメリットはあるが、素晴らしい攻撃力と広い攻撃範囲、何より見た目に派手な視覚効果があるからだ。

 だが、最大の見せ場、地面に拳を叩きつけて自分の体に出現させた炎の輪を爆発させる瞬間を邪魔されるとは思っていなかった。

 もう一度炎の輪の攻撃を繰り出そうと地面に向けて拳を伸ばす――――


「ベル・ホワイト!!」


「まかせなさい――!!」


「この場合は、火の技の方がいい! 相手の魔法を暴発させるんだ!!」


「『ファイアーアーチェリー』!!」


 リリィ~~!!


 ベル・ホワイトが放った炎の矢がヤミゴロモに突き刺さる!!


「――――――――!!」


 ドオオオオオオオオオオオオオン!!


 自ら生み出していた炎の輪の誘爆を引き起こし、上空で大爆発!!


「うわあああああああああああああ!!」


 ヤミゴロモが吹っ飛んでいく――!!


 やがて校舎の方からカシャンという遠い音が聞こえた――

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