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SS版『魔法少女え~す・ショートショート』-3

☆ヤキソバパン‐1☆


「今日最後のヤキソバパンだよ!」

「買った!」

 男子生徒の一人が、購買のおばちゃんからヤキソバパンを受け取り、130円を渡す。

 媛崎中学校のお昼は基本弁当だが、用意できない生徒のために、購買が用意されている。

 ま、中には学校を抜け出し近所のコンビニに食べ物を買いに行く強者もいるが、たいていの生徒はここでサンドイッチなり惣菜パンなどを買っている。


「……またヤキソバパンが売り切れている……」

 一人の女生徒が絶望に打ちひしがれている。

 2年B組、赤副理沙――この、媛崎中学校で一番体重の重い女生徒だ。


「また、私がこえなくてもいい一番が現れた!!」

 どうでもいい叫びを上げる陽子。


「ヤキソバパン、欲しかった……」

 理沙が涙ぐむ――彼女はその体重ゆえ、購買に来るのがだいぶ遅れてしまう――そのため人気のパンは大抵売り切れた後なのだった。

「ヤキソバパンだけじゃない、メロンパン、クリームパン、スイートデニッシュ、チョコレートクロワッサンも売り切れてる!! う、うお~ん!!」

 売れ残りの人気のない商品を前に理沙は泣き崩れることとなった。


「そういうのでよければ、僕が何かしてあげるよ。この天逆衆、クロマントがね――」


☆更衣室☆


『俺は何も見ていない、何も聞こえない、何も見えない、何も言わないぞ!!』

 体育の授業の前に女子が体操着に着替える場所――女子更衣室――

「……ちょっと、うるさいかなぁ……、でも我慢してね小鳥君……」

 瀬里奈の中で一生懸命外の情報を得ないように頑張っている隆幸の心にそう呼びかける瀬里奈――

「瀬里奈ちゃん、ちょっと胸大きくなってない?」

 クラスメイトの一人が、突然、胸を揉んできた――

「きゃっ!」

『うわっ!!』

 視覚情報や聴覚情報を遮断しても触覚情報は瀬里奈と一緒に感じてしまう。

 女の体の中にいる男の魂は、今日も大変だった。


『見えない、聞こえない……私は何も見ない……』

「そういうんなら、黙っといてくれないか? 由良……」

 隆幸の体の中にいる瀬里奈も、まあ似たような状況だった。

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