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AS版その2『魔法少女エース』-3

『ボク達の世界で産まれた君に、魔法少女になってもらいたいんだ』

『だけど断る』

『なんで!!』

『この神城綾花が最も好きなことの一つは、自分の思い通りになると思っているやつに、『NO』と断ってやることだ!』

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「なんですか? この寸劇は?」

 グレン・ナジャが言う。

「う~ん、私が異世界人だって話は、いくらなんでもありえないと思ってね。だからこういう風に断ったっていうシーンを挿入してみました」

 綾花はにこやかにそういった。

「エース! あなたはその気になればロイヤルセレナやベル・ホワイトを超える魔法少女になれるのにどうしてそれを自覚しようとしないのですか? とりあえず、これをもってみてください」

 そう言ってグレン・ナジャが取り出したのはロイヤルセレナやベル・ホワイトが使っているステッキだ。

「これをもって、呪文を唱え変身してみてください! 今のあなたならできるはずです!」

「いや、まったくわからないだけど。第一私は神城綾花だし……」

 そう言いつつも右手でステッキを受け取る綾花。

「呪文……? 呪文、呪文ねぇ……」

「ちゃんと思い出してください!」

 そう言うグレン・ナジャの瞳は再び怪しい光を放っている。

「……化身、撫子化生?」

 ――しかし、何も起こらなかった――

「……」

「……」

 しばらく沈黙が流れる。

「ナデシコレンジャーに変身できないよ?」

「そもそも魔法の呪文が違ってます……あなたの記憶にあるはずですよ、ワーボワールで教えられた変身の呪文が……」

「だから、そんなわけないって。それ多分そっちの間違いだよ」

 そう言って綾花はステッキをグレン・ナジャに返す。

「……どうやら、記憶を取り戻すことができていないようですね」

 グレン・ナジャはしつこくそう言ってくる。

「あなたは魔法少女エースである事はほぼ間違いないと思います。ですが、ロイヤルセレナやベル・ホワイトのように記憶を取り戻す事がうまくいっていないようです。仕方がありません。あなたが記憶を取り戻せるよう、我々の仲間を一人、あなたにつけます」

「じゃあさ、あれがいい! この前いたカピバラ!」

 カピバラとは、グレン・ナジャの護衛の一人、フォウ・リンスの事だろう。

「彼女はいけません……あれでもあの三人は私の護衛です。代わりにこの者をあなたにつけます。『ゲート・オープン』! キャロ、おいでなさい!」


 シュワアアアアン!!


 グレン・ナジャの召喚魔法により、空間がゆがみ一のヌイグルミが姿を現す!

「うさぎ……?」

 現れたのはうさぎとしか思えないヌイグルミだった。

「キャロと言います。よろしく魔法少女エース」

 キャロ、そう名乗ったうさぎのヌイグルミはヌイグルミとは思えないほど丁寧に頭を下げた。

「ワーボワールでの記憶がないのはさぞかし寂しいことでしょう。ですが、私が共にいればそのうちきちんと思い出すことができるはずです」

「だから違うって。私はその……ワーボワール? そんなところで生まれてないって」

 新しく現れたうさぎのヌイグルミに対し綾花はグレン・ナジャに対して言ったことと同じようなことをいう。

「とりあえず、キャロ……あなたの役目はエースがきちんと自分の役目を思い出せるよう、導くことです。わかりましたか?」

「おまかせください。グレン・ナジャ殿。このキャロ、魔法少女エースの供の役目を仰せつかったからには立派に勤めあげてみせます!」

「うさぎっていう、小動物みたいな外見なのに、堅苦しいというか硬派というか、わけがわかんないキャラクターだね」

 キャロとグレン・ナジャの会話を見ていた綾花の感想はそれだった。

「とりあえず、私はロイヤルセレナのほうにも助け舟を出さなければいけません。エース、あなたにはこれから先、数々の苦難があると思いますがキャロと共にそれらを乗り越えワーボワールの記憶を取り戻し、立派な魔法少女になってくれるよう、願っていますよ」

 そう言ってグレン・ナジャはロイヤルセレナ、そして翡翠瑠璃と夏樹陽子が入る方向へ向かっていった。

「……では、魔法少女エース……今後はこのキャロがそなたの力となる。まず、そなたが魔法少女ということが周囲にバレるとまずいという事を自覚してもらいたい」

「その前に、一つ聞いてもいい?」

 堅苦しい喋り方で綾花に注意をうながそうとするキャロに、綾花は言う。

「あのグレン・ナジャっての、私に何の魔法をかけようとしていたの?」

「――!?」

 予想外の綾花の問いにキャロは固まる。

「何の魔法を、とは……?」

「う~ん、気づかれてないとでも思ってたのかもしれないけれど、私これでも魔法にはかなり敏感なんだ。もし、自分に何かの魔法がかけられてと思ったらほぼ無意識でこれが発動してしまうの」

 そう言って綾花は左手を上げる。

 そこには綾花の固有能力である聖柩――アーク――があった。

「――それは――一体いつから――」

「さっき言ったじゃない。気づかれてないとでも思ってたのかもしれないって。最初からだよ。あなたや、グレン・ナジャが現れる直前から……」

 アークの能力は、他者が使っている能力の吸収および封印。

 それゆえ、アークが発動している状態の綾花に対しどんな能力や魔法をかけていたとしても効果がないということを意味する。

「回復や治癒系統の能力まで効果なしにしちゃうのが欠点なんだよね。でも今回みたいに明らかに私に対して何かしらの魔法をかけていたっていう場合なら話は別だよ」

 キャロは戦慄する。

 彼は綾花という人物がグレン・ナジャからある程度彼女に魔法をかけている状態で接すると教えられていたからだ。

 それが、効果がない――グレン・ナジャの魔法が一切効いていない状態だとすると――

「で、あのグレン・ナジャは何の魔法を私にかけようとしていたのかな?」

 綾花はアークを逆さまにする。そこから、効果を失ったグレン・ナジャの魔力がこぼれ落ち消えていった……

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