読めばわかる!?魔法少女え~す説明会!!
「僕は七瀬銀河。超常自衛隊特殊三佐――特佐と呼ばれている。恐竜型パワードスーツ‐S777型『シルバーファング』のメインパイロットでもある。その昔、超常自衛隊旗下のとある組織に内部監査員として入り、その組織のあまりにもふがいない様に、存続の価値なしと判断、組織をつぶした過去がある。特撮テレビ番組『シルバーファング』は僕のテスト映像を編集して作られた物。ドラマ部分はおまけだな」
「銀河さん!? いきなり出てきて何を言ってるんですか!?」
辰羅は、突然自己紹介を始めた青年に対し、突っ込みを入れる。
「いや、固有名詞に対し、説明不足を指摘されてるみたいだから、まずは僕の説明からと思ってね」
青年――銀河は、そう言って椅子に腰掛ける。
今日は休日だ。辰羅、瑠璃、魅咲、そして綾花の四人は、現状報告のために七瀬銀河の元を訪れていた。
「説明不足って、媛崎中学校は俺達が通ってる中学校の事だろ? 他に説明が必要なものなんて何があるんだ?」
「たとえば、『天逆衆』とかじゃない?」
瑠璃が辰羅に向けて言う。
「『天逆衆』っていのは古代日本から存在する能力者の集団……歴史的資料には悪者ように書かれているのもあるけれど、本来は異端とされた能力者たちの駆け込み寺的なものにつけられた名称だったらしい。占いなどを得意としていた星占部とは違い、権力者たちに必要とされていなかった能力者たちの集まりとも言われている……その能力者の中に『シックス・フェイク』を持つ者があったために、『星占部』に敵とみなされていた」
「おやおや、また新しい固有名詞だね。『シックス・フェイク』って、何なのさ?」
魅咲が、聞いてくる。
「『シックス・フェイク』とは……第六感――様は『シックス・センス』と呼ばれる能力に対し、嘘をつける能力と呼ばれている。俺達『天逆衆』は大抵の人間がこの『シックス・フェイク』を身につけている――予知や予言を、外すことのできる能力というわけだ」
「それを持ってる辰君がいるから、私みたいに『星占部』の血が濃すぎて、予知の力が強すぎる人間でも、普通の人間として暮らしていけるんだよね」
「……占いや予知を外されて怒った『星占部』が『天逆衆』殲滅のために雇ったのが『皇賀忍軍』だろ」
辰羅は瑠璃から魅咲に視線を移して言う。
「元々は山岳信仰の修験者から外れた山賊まがいの乱波でしかなかったのに、『星占部』からその力を認められて名と地位を得たからといって、『天逆衆』キラーとして最悪の恐怖として現代にまで語り継がれている」
「現代に語り継がれる伝説がどれほど真実味を帯びていか……実は全く違ってるって、こともあるでしょ? 伝説によったら『天逆衆』の方が悪者だって言うのもあるし……『魔法少女』達もそう、思っているみたいだしね……」
魅咲は辰羅に向けて笑顔でそういう。
「そうだな、あれには結構むかついている!! どうして『天逆衆』が悪者なんだ? 歴史的観点から見たら、『天逆衆』はむしろ被害者というべきだ!! それなのに『魔法少女』に敵対する悪の集団みたいに扱われている!! そもそも、あの『ヤミゴロモ』とか『カゲホウシ』 とか『クロマント』とか言うのは何者だ!?」
辰羅が握りこぶしをたたきつける!
「落ち着けよ。彼らも実は『天逆衆』の血を引いていた君の遠い親戚なのかもしれないだろ?」
「……まったく関係なく、『天逆衆』の名前をかたっている悪党かもしれませんけどね!」
「でもいいなぁ。辰羅君も瑠璃ちゃんも魅咲ちゃんも日本の伝統ある能力者の家系なんでしょう? だからこそ、『和風戦隊ヤマトレンジャー』なんだけど」
綾花が、うらやましそうにそう言う。
「その点、私は別にそういった和風系能力じゃないもんね。私の能力『アーク』はヨーロッパで『天覇の魔女・ジョアンナ』のおこした事件に巻き込まれたとき偶発的に目覚めた能力だから……」
「私や辰君の能力……『星占部』や『天逆衆』の能力は、そこに産まれついた人間が持ついわゆる『先天的能力』でも綾花ちゃんのは本来その素質があったんだろうけど、何かしらのスイッチがない限り発現する事のなかったいわゆる『後天的能力』だもんね」
「『先天的能力』は、そういう風に教育され、さらに周りの人間も同じような能力を持った人がいるわけだから、おのずと同じタイプの能力者が多くなる。『星占部』出身なら巫女の力を持ち予知能力に秀でている。『天逆衆』出身ならそれを阻害する能力を持ちさらには妖術を扱うことができる。『皇賀忍軍』出身なら忍術を扱える。など……しかし、『後天的能力』の場合は人それぞれ……使える能力が何なのかは、その能力に覚醒するまでわからない……」
銀河は中学生たちの説明をにこやかに聞きながら自分なりの解説を加える。
「その『後天的能力』が和風系じゃなかったから、私は『和風戦隊』に入れません……」
「まあ、そこら辺の事は置いておこう……問題は、歴史的に見ても悪役じゃない『天逆衆』を悪役にし、その倒すために戦っているという『魔法少女』のことだろう」
「『ベル・ホワイト』や『ロイヤルセレナ』のことね」
魅咲がデジタルカメラの画像を出す。
「『魔法少女』というよりは、その力を彼女たちに与えた異世界から来たと言うヌイグルミ達『ワーボワール』についただろうね。君たちは、彼ら『ワーボワール』をどう思っている? 僕は直接見たことがないからなんとも言えないけど」
「かわいい連中だと思います」
「『天逆衆』を悪党扱いするいらつく連中」
「『魔法少女』のお供だと思うけど……なんか違うんだよね」
綾花、辰羅、魅咲がそう言う。瑠璃は何かを考え込んでいる。
「魔法少女物や、スーパーヒロイン物の異世界から来たお供キャラクターって、いうのは自分たちの世界が何らかの敵に襲われて、その襲ってきた敵を撃退してもらうために主人公の魔法少女やスーパーヒロインに力を与えるのが王道設定なんだよね――プ○キュアみたいにさ……でも、『ワーボワール』は、わざわざ異世界から来ているのに、異世界の敵はいないみたいだしさあ……わけわかんない連中だよね。何か理由があるのかな? 『魔法少女』を生み出さなきゃいけない理由が……」
ヒーローマニアでいろいろな特撮やアニメをよく見る瑠璃にとって理解できない連中のようだ。
「それについてはちょっと考えなければいけないな。君たちは、『サーヴィン・メプル』と言う『魔法少女』を知っているか?」
「――?」
「『サーヴィン・メプル』?」
「『ベル・ホワイト』や『ロイヤルセレナ』以外にも『魔法少女』がいたんですか?」
銀河の言葉に驚く中学生たち。
「僕に弟子入りしている君たちの先輩、媛崎中学校3年D組の『浅科星羽』――の幼馴染『南九條楓』って子が変身した『魔法少女』それが『サーヴィン・メプル』という名前だったらしい。だが、その子と親しかった人間やその子の血縁者――両親や兄弟達までその子の存在を忘れている……」
「――!?」
「それって、世界からその『南九條楓』って人の存在が消えちゃってる……ってことですか?」
「魔法少女物でよくある事――魔法世界から来た魔法少女が元の世界に戻った時、この世界の人間の記憶から消えてしまう……最終回などでよくある事柄ですよね?」
「……世界中から、記憶を消すなんて芸当はまず不可能だと思うな。実際に『浅科星羽』の記憶からも『南九條楓』および『サーヴィン・メプル』の事は消えていたんだが、『星羽』の姉、『浅科梨乃亜』は覚えていたらしい。彼女は弟に逆行催眠をかけて、失われた記憶をわざわざ呼び戻したらしい」
「……なんか、南九條先輩や浅科先輩などよりもそのお姉さんのほうに興味がいくんですけど……」
「まぁただ者じゃ無いけどね。彼女からは、みすみす相手の術中にはまる弟が情けないだけなので、鍛えてやってほしいって、頼まれたよ。だから彼は今僕の弟子として活動している」
「あ、それってもしかして……『スターフェザー』なんじゃ?」
「ああ、そうだよ。超常自衛隊開発の飛翔ユニットパワードスーツ800型『スターフェザー』それのテストパイロットとして活躍してもらっている……っていうか、あれ戦闘用じゃなくて実は玩具用パワードスーツなんだよね」
「ええ!! あんなにかっこいいのに!?」
「まあ、超常自衛隊がどんなに空想的な組織だとしても、中学生に攻撃力がある武器を渡すほど非常識じゃない。まあ、彼は来期の特撮の主役に決まっているからあれを使いこなしてもらわなければいけないけどね」
銀河はそう言って微笑む。
「それよりも、彼が持ち帰ったあの石についても話しておかなければならないだろう」
「石……? ああ、あの怪物が変化したあの石ですか?」
「そうだ。それと、この間魅咲ちゃんが持ち帰ってきてくれたあの『仮面』……ふたつは分析の結果同じ成分だと言うことがわかった。この世界じゃ希少とも言われている魔法石だと言うこともな」
「……ふたつともあの似非『天逆衆』に関わりがあるものなのだから不思議とは思いませんけど……」
辰羅が言う。
「でも魔法石って事は……その『魔法少女』とやっぱり関わりがあるんでしょうか?」
「そこら辺わからない。『天覇の魔女・ジョアンナ』に代表されるようにこの世界にも魔法に係わりある人間は何人かいる。その中には魔法石自体を生み出すことができる人間もいるはずだ。すべてが万事異世界の仕業という発想はできない」
「でも、『魔法少女』や魔法の異世界『ワーボワール』そして『魔法石』……これだけ魔法に関わりのあるものがあると言うならば何かしら関係があるかもしれない…………」
「まあそこら辺は君たちがもっと情報を集めて行けば分かることだと思う。頑張ってくれ。こちらも出来る限りの援助はさせてもらう。たのんだよ、『少年少女能力団』……いや、『和風戦隊ヤマトレンジャー』」




