S版その3-4
「ナンダオマエ、ソノダサイボウハ……ダサイカカッコウハ……」
仮面をつけた鹿康が、気味の悪い球体をいくつも投げてくる!!
「ゲヘラゲラ~~!! オマエモワレガゲイジュツニカエテヤロウ!!」
ちなみに、入田鹿康のあだ名は『イルダサイ』である。
バシュバシュ!!
「く……」
鹿康が投げる球体をかわし、接近する隆幸!! が、鹿康は竹刀を受け止め……
「うわっ!!」
鹿康の体から気味の悪い色が立ち上り、竹刀を禍々しい代物へと変化させる。
「ゲイジュツ、ゲイジュツ、ゲヘラゲラ~~!!」
もはや吐き気すらするほど気味の悪い笑い声を上げ、両手を隆幸に突き出す!
「うわわわわわ!!」
隆幸の服装が、 歪でダサく、そして動くことができないものに変化してしまう!
「く……」
バタ!!
ふざけているため着た人の動きのことなど全く考えていない衣装は隆幸の自由を奪いその場に倒れさせてしまった。
「ゲイジュツ! バンザ~イ!! ゲヘラゲラ~~!!」
鹿康は、下品な声で満足そうに笑うとまだ正常な空間を自分の芸術だと思っている異常空間に変えるため動き出す!
「……」
「ぐう、う、動けない……」
鹿康が去った後、瀬里奈は動くことができない隆幸の前に立った。
「君は……動けるなら今すぐ魔法少女に伝えてくれ! 悪の天逆衆が現れたと!!」
「ねえ……」
瀬里奈は隆幸を見下ろしながら口を開く。
「あなたは、どうして戦えるの?」
「おい……何やってるんだ?」
隆幸に問いかける瀬里奈を理解できず見守るレオ。
「どうしてって……決まってるだろ俺は皆を守る魔法少女を助けたいんだ。いや、魔法少女に助けられるのは俺の役目じゃないって、魔法少女に教えたいんだよ」
「……魔力解放・変身……『ロイヤルセレナオーロラデビュー』……」
「――!!」
キラキラキラ、バシュ~~ン!!
隆幸の目の前で瀬里奈がロイヤルセレナに姿を変える!!
「お、お前は!! あの時の、役立たずの方の魔法少女!!」
「ええ、私は何の力も持たない役立たずの魔法少女――私にもあなたのような勇気があればいいのに……」
ロイヤルセレナは隆幸の前にひざまづく。
「お願い……あなたの勇気を私にちょうだい……」
「ゲヘラゲラ~~!!」
鹿康の進撃止まらなかった。あちこちをむちゃくちゃな最低芸術に変えながら進んでいく。
「なんだよこれ!!」
「いやあ、動けない!!」
「変態だ変態が来るよ!!」
何人もの生徒、そして一部の教職員が鹿康の最低芸術の犠牲になる。
「魔力解放・変身……『ベル・ホワイトフルスロット』」
リン!
白鈴愛美はベル・ホワイトに変身する。
「やっぱりあれは隣のクラスの変態男、入田鹿康のようね……」
「天逆衆は変態に力を与えた訳か……」
ベル・ホワイトの使い魔パクが最低芸術を生み出しまくる鹿康を睨み付ける。
「いくよ!! あの変態から、皆を守るために!!」
リン!!
「ゲヘラ!?」
鹿康の前に立ち塞がるベル・ホワイト!!
「ゲヘゲヘ! ナニソノカッコウ! センスノナイオンナノコ!! ワレガスバラシイゲイジュツヒンニカエテヤロウ!!」
「『マジカルランス』……」
リリン!!
いつになく真剣にベル・ホワイトは構えを取る。それだけ彼女も関わりたくないのだ、入田鹿康と言う変態男に……
「たあ!!」
「ゲヘゲヘ! ゲイジュツ、ゲイジュツ!!」
いろいろな物を変態芸術に変える気味の悪い鹿康の力も、魔法の剣の姿を変えることができない――
「仮面さえ、打ち落としさえすれば……」
「ゲヘラゲラ~~!!」
リン! パン! ブワッ!! リリン!!
魔法の剣で叩かれても全く動じることなく気味の悪い光を放ちまくる鹿康。
当たると変態芸術に変えられてしまうその光を必死でかわしながら戦い続けるベル・ホワイト!
鹿康は変態だ。だから、動きを読むことができない。
リン!
常人が百人中、九十九人選ぶ行動を、鹿康は選ばない。
「ゲヘゲヘ! ゲイジュツニ、ナレ!!」
だから、苦戦してしまう。
長い間天逆衆と闘い続けているベル・ホワイトでもこの男は理解することができないのだ。
「あ~もう、和風戦隊でもスーパーヒーローでもいいから誰か手伝ってよ!!」
ベル・ホワイトは思わずそう叫んでしまった。本来なら彼女が一番頼りにしてみるのは同じ魔法少女であるロイヤルセレナなのだろうが……
「あの子にはこんなバカを相手するのは早すぎるものね……」
隣のクラスの変態男入田鹿康――愛美のクラスでも、よく噂をきく……
新聞部員である草薙苺ですら関わりたくないとそう言う男だ。
天逆衆に仮面をかぶせられたかといって救う価値などありはしないのかもしれない。だがその男の変態的なセンスによって変えられた学校や生徒達は助けなければいけない。それは、和風戦隊やヒーローだって同じことなのに……
今、彼らは現れすらしなかった。
「あ……」
パクが何かに気づいて声を上げる。
「あ……ロイヤルセレナ……」
鹿康の変態芸術によって変えられた方向からベル・ホワイトの仲間の魔法少女が歩いてくる。
「近づいちゃダメ! こいつは大変態なんだよ!!」
ベル・ホワイトが大声で忠告する!
「マタ、ウツクシサモナニモナイスガタノオンナダナ……ワレガゲイジュツヲオシエテヤロウ!!」
鹿康がロイヤルセレナに向けて気味の悪い球体を放つ!!
「『スピード』『ウインド』……」
ロイヤルセレナが魔法の言葉を唱え、力を解放する。
ビュオ!!
目的の位置まで風で道を作り、そこにスピードの魔法をかけた自分を突っ込ませる!!
「『ソード』!」
シャラン!
ロイヤルセレナのステッキが剣へと変化する!
――そしてそのまま鹿康の目の前まで――!!
「ゲヘラ!?」
キィン!! ザシュ!
「――!!」
――一瞬――
動きが読めなくても、止まっているのならばそこにいるのは確か――高スピードで動いたロイヤルセレナは一瞬で鹿康の前に行き、一瞬だけ……鹿康が動く一瞬前に行動を開始する――その一瞬だけで、正確にロイヤルセレナの魔法の刃は鹿康の顔に付けていた仮面をきり落とした!!
「ゲ、ゲ、ゲ、ゲハア!!」
訳の分からない声を上げて倒れ落ちる鹿康。それを見下しながら剣をステッキに戻すロイヤルセレナ。
「……」
だがその表情は何かがおかしい――
「……すごい、すごいじゃない! どうしたのロイヤルセレナ!?」
「あ……」
後輩の思いがけない活躍を嬉しく思ったベル・ホワイトが思わずロイヤルセレナに抱きつく。
「あ、ちょっ、ちょっとごめなさい!!」
今さっきの活躍が信じられないのか、顔を赤くしてベル・ホワイトを離そうとするロイヤルセレナ。
「どうやら、やっと魔法少女としての力が備わってきたみたいだなロイヤルセレナ!」
パクも喜びながらそう言う。
「おお、レオ! お前も気分いいだろ!」
パクはロイヤルセレナの後ろからついてきた同じヌイグルミ仲間のレオを見つけて、そういう。
「……いや、ちょっと違うんだけどね……」
レオがほんの少し歯切れの悪そうな口調で言う。
「?」
何かありそうだ。パクはそう感じた。だがそれが、魔法少女ロイヤルセレナの成長につながったのなら喜んでいいものだろう――そう思うことにした。
「あ、あの……」
顔を真っ赤にしながらロイヤルセレナは言う。
「これって……元に戻せる……んですよね……」
「あ、入田の変態芸術ことね! 任せなさい!」
そう言ってベル・ホワイトは鹿康の変態芸術を打ち消す魔法を唱え始めた――
「あ、あの……」
ロイヤルセレナはまだ何か言いたそうだったが……




