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S版その3-3

「ロイヤルセレナ! 天逆衆だ!!」

「……またなの?」

 勢いよく話しかけてきたレオに、瀬里奈は呆れた風に言う。

「またあんなバケモノが出てくるの?」

 瀬里奈は以前現れた怪物と、それと戦う魔法少女以外の戦士達の事……

「――そうだ、和風戦隊に、あの人たちに頼めば!」

 武士と巫女と忍者の三人組――

「またはスターフェザーに!」

 最後に出てきたヒーローっぽいパワードスーツの人――

「あいつらは、いったいどこにいるんだよ?」

「え……?」

 背丈や雰囲気から彼らが同年代の少年少女だという事は分かっているが、どこの誰かまではわからない。どこのクラスか、いや、学年さえもわかっていない……

「そういえば……あの子は……」

 瀬里奈はあの怪物と戦っていた人達の中に一人だけ、媛崎中学校の学生服を着た少女がいたのを思い出した。

「あの子がつけていたネクタイの色は……私達と同じ1年のもの――だとしたら、 1年の教室のどれかにはいるはずだよね!? 探しに行ってみよう!」

「お、おい! 天逆衆はどうするんだよ!?」

 立ち上がり、漫研の教室を出ていく瀬里奈。それを追いかけるレオ。


「ゲージュツハ、バクハツダァ!!」


 ドオン!!


 仮面をつけたデブ男が手から気持ち悪い色の球体を作り出し、投げつける! すると、その球体は本当に爆発を起こす。

「ゲヘラゲラ~~!!」

 爆発後、そこはへたくそな落書きのようにネジレまくった不細工な物へと変貌してしまう。


「うわ~~!!」

「きゃ~~!!」

「いや~~!!」


 それを見て、逃げ惑う生徒達……!! 怪物の時は好奇心が勝っていた生徒達も、生理的な嫌悪感を抱かせる鹿康の最低芸術に変えられるのは嫌なのだろう。

 それは、常人ではおおよそ考え付かない悪いの塊としか思えない物のオンパレードだった。

 おそらく鹿康の好物なのだろうか? 吐き気を催すような毒々しい色の食べ物があたりにちらばっており、芸術とは思えないなぞのオブジェが散乱し、いったい誰なのだろうか? 訳のわからない人物の肖像画があちこちに描かれている。その中で唯一描かれている人物がわかるものがあるとすれば、スペシャル戦隊史上最低の悪役と言われるイセリア・ル・イライザだろう。


「きゃあああああ!!」


 一人の女生徒が、運悪く鹿康の気持ちの悪い色の球体に当たってしまう!!


「い、いやああああああああああ!!」


 女生徒の服装が、ドンレンジャーの番組内でイセリア・ル・イライザが着ていた衣装に酷似したものに変化する!!

「こんなの、いや~~~~!!」

 その女生徒は気絶してしまった。


「ゲヘラゲラ~~ゲッゲッゲ!!」

 下品な声を上げながら辺り構わず最悪芸術の塊を投げまくる鹿康!!


「ふんぐ~~!!」

 そのかっこいいと思ってるんだろうか? 訳のわからない服装にされた男子生徒が廊下に転がっている。鹿康の考えているかっこいい服装は、実際に着せられると動くことすらできなくなる欠陥衣服だった。




「あの子を探そうと思っていたら、とんでもないところにでてしまった……」

 瀬里奈はまだ無事だった洗面台の影から仮面をつけた鹿康の様子をうかがう。

 鹿康が球体を投げつけた校舎内は百人中九十九人が気味が悪いと答えるような空間になっていた。それを芸術だと言うのは入田鹿康のみ……逃げ遅れた不幸な生徒達が、鹿康の趣味によるふざけた衣装に変えられしかもそれが欠陥衣装であるために逃げられなくなっていた。

「とりあえず、変身だ。ロイヤルセレナ!! これ以上放っておくと被害がどんどんどんどん大きくなってしまう!!」

 レオが叫ぶ!

「…………むちゃくちゃ怖いよ。できればあんな変態と戦う事なんてしたくない……魔法少女なんてやりたくないよ……」


「ゲッゲッゲ!!」


 最低の変態と化し、学校をむちゃくちゃにしようとする鹿康――


 それは、倒さなきゃいけない悪である事は間違いない。

 確かに鹿康自身は、欲望の仮面をかぶせられたて、欲望を増大させ操られた、いわば被害者だ。だが、本人のあまりにも最低な人間性が反映され、最低最悪のクリーチャーと同じようなものになっている。


「でも、私は……」


 ロイヤルセレナ、いや由良瀬里奈……彼女は魔法少女になった時どんな事を考えていたのか……

 最初は驚きだった。

 自分がこの世界で生まれた人間では無い、魔法の世界で生まれた人間だと言われ、驚きから戸惑いへ――


 そんな戸惑いを無視するかのように現れた天逆衆と言う名の悪者達。

 そしてその天逆衆に操られて様々な悪事を行う被害者達。

 最初は、それらを解決するために魔法の力を得たのは自分の運命だと思った――――


 ―

 ――

 ―――

 ――――

 ―――――

 だけど―――

 それは、違ったのかもしれない。


 結局、彼女は自分の力がどのようなものなのか全く分かっていないのだ。

 先輩の魔法少女ベル・ホワイトと訓練はしている。

 だが、長きに渡って魔法少女として戦いその力を自由気ままに使いこなせるベル・ホワイトと違ってついこの間魔法少女になったばかりのロイヤルセレナは自分が最低ランクの魔法少女であると思い込んでる。

 一番を連呼し、一つのクラスを巻き込んで騒ぎを起こした夏樹陽子――彼女を救ったのはベル・ホワイトと小鳥隆幸だ。

 ロイヤルセレナはあの時、何もできなかった。

 そして先日の怪物事件――あれは自分がいなくても解決できただろう。そう、思っている。和風戦隊やスターフェザーがどのような人間なのかは知らないが、自分よりもはるかに有能な正義の味方であることは間違いない。

 自分とベル・ホワイトにも実力の差がある。

 そして、この学校にはさまざまな正義の味方がいる。


 自分が、魔法少女である必然性はどこにもない。


 あの変態、入田鹿康のことも、和風戦隊なりスターフェザーなり、または先輩魔法少女ベル・ホワイトなど自分以外のものが活躍し、解決してくれる事を願わずにはいられない――――


「やめろ――!!」

「あ……」

 そんな事を考えていた瀬里奈は、誰かの制止の言葉で現実に戻される。

「あの人は……」

 竹刀を構えて変態鹿康の前に立ちふさがる一人の男子生徒。

「ナンダオマエハ? センスノナイブサイクナボオッキレヲモチヤガッテ!」

「俺は小鳥隆幸! その仮面をつけているって事は悪の天逆衆の被害者ってことだろうけど、学校にこんな被害をもたらすなんて許せない!! 覚悟してもらおうか!!」

 瀬里奈の目には彼が眩しく見えた。

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