S版その3-1
「何これ……?」
苺はデジカメの画像フォルダに収められている画像を順繰りに見ながらそう言った。
それは、この間現れた怪物をデジカメで写した画像……のものだったはず――
しかしその画像はブレ、かすれ、黒く染まり、オーブが飛び、中には心霊写真のようになっている物まである。
「…………」
苺は黙ってそれらの画像を削除するしかなかった。
「おはようございます! 苺先輩!」
元気な声で魅咲が部室に入ってきた。
「草薙編集長よ、魅咲ちゃん」
苺はいつもの突っ込みを入れる。
「そういえば魅咲ちゃん、あなたこの間の怪物の写真を撮ったかしら?」
「怪物? いいえ、そんな写真は持っていません。魔法少女の写真ならいくらでもありますけど?」
「……もういいわ……」
一年の子に期待した方が悪かった……苺はそう思った。
「ものすごいスクープだったんだけどな……写真がうまくとれてなけりゃ誰も信じてはくれないだろうし……」
実際は、怪物とそれと戦う幾人かのコスプレ集団を目撃した生徒達が多数いるのだが、彼らも夢か幻か現実かそうでないか、わかってない人間が大多数だった。
ちなみに、たまたま持ち合わせた携帯電話やスマイルヴォン略してスマヴォのカメラ機能を使って写真を撮った生徒達も何人かいたそうだが、撮れた写真はすべて苺のデジカメ画像と同じようなことになっていた……
「魅咲ちゃん、何かスクープある? あなたのでっち上げ魔法少女以外で」
「でっち上げ……」
魅咲はちょっと傷ついたようだった。
「……そういえば……何か美術室で騒ぎが起こってましたけど?」
「騒ぎ?」
野次馬根性をではない、記者としての本能が動き苺は立ち上がった。
媛崎中学校の美術室――美術部の部室も兼ねているそこには、美術部の部員たちが怒り、嘆き、悲しみ、叫んでいた。
新聞部のような弱小部では無い美術部は、結構人数がいる。苺はその中から同じクラスの知り合いを見つけだした。
「十和子……一体何があったの?」
「あ、苺! 見てよコレ!!」
苺と同じクラスの長谷堂十和子は、美術室に飾られている絵を指差した。
それは、中学校の美術室にあるとは思えない、アニメキャラクターみたいな物が描かれた幼稚な絵だった。
「なにこれ?」
どっかのアニメに出てきそうな悪役の女性幹部のようなものだ。ただしすごく不細工……いや、ただ単に描き手を技量不足が原因か?
「知ってそうな友人がいますからちょっと呼んでみますね」
その絵を見た魅咲が携帯電話を取り出す。
「よんだかしら? 魅咲ちゃん!」
「――!? 瑠璃!? 来るの早すぎ!! まだ携帯かけていないよ!!」
「ふっふっふ……この間手に入れたばかりのヒーローカード、スターフェザーの御導きよ!」
そう言って翡翠瑠璃は高々とスターフェザーのヒーローカードを天に掲げた。
「誰?」
十和子が魅咲に聞く。
「あ、同じクラスの翡翠瑠璃。こう見えて結構なヒーローマニアなんです」
「そういえば、この間魅咲ちゃんのクラスに行った時、いたわね。確か占い好きのヒーローマニアがいるって噂も聞いたことがあるわ」
苺が瑠璃を上から下まで様々とみる。
「……ついでに、その子は中学一年生にして彼氏持ちのリア充だって噂もあったわね」
「ええ! 私には辰君っていう彼氏がいます!!」
ザワ……!!
瑠璃の台詞に周りにいた美術部員たちがざわめきたった。
「はいはい、のろけは今いいからこれが何かわかる?」
瑠璃の反応に慣れている魅咲が例の絵を指さして言う。
「ええっと、これは――」
魅咲は悪の女性幹部みたいなものが描かれた絵を眺める。
……………………
「イセリア・ル・イライザ………誰がこんな最低な物を描いたの?」
瑠璃の声のトーンが数段、低くなる。
「最低?」
魅咲がそう聞く。
「イセリア・ル・イライザっていうのは擬音戦隊ドンレンジャーの悪役でスペシャル戦隊史上最低最悪の悪役って呼ばれているキャラクターよ」
「……最低最悪?」
「ええ、出番自体はワンクールで終わったんだけどね。演じていた役者さんがこいつを演じるのは嫌だて言って、実に5人も役者が変わったっていう、日本特撮界でも有り得ない伝説を残した最低の悪役よ」




