A版その1-2
さて、翡翠瑠璃の特技は占いである。
彼女の彼と呼ばれる辰羅からは、
「当てにならない」
と言っているが、周りの生徒達は面白がっていた。
「まあ、当たるも八卦当たらぬも八卦って言うからね」
「お前八卦なんて使わないだろ。お前が占いで使うのは……」
辰羅が、瑠璃に突っ込みを入れる。
「そう、この翡翠瑠璃が占いで使うのは、カードだよ」
そう言ってカードの束を取り出す瑠璃……
「占いに使うのは大体は『トランプカード』とか『タロットカード』だけどこの翡翠瑠璃は違う………なんと、『ヒーローカード』で占いをするのだ!!」
「どうやって占うんだ!?」
彼氏というより漫才の突っ込みの相方という感じの辰羅が叫ぶ。
「ふっふっふっふ……この私のヒーローカードコレクションは伊達じゃないよ! 超有名どころの『タンジュンキッド』から、子供達に大人気『シルバーファング』、美しきヒロイン『パープルフェニックス』、現行の『擬音戦隊ドンレンジャー』なんて、『ボンレンジャー』『ドカレンジャー』『ゴンレンジャー』『パコレンジャー』『ガンレンジャー』そして追加戦士枠の『シーンレンジャー』まで揃ってるし、それぞれヒーローの別バージョンタイプ、味方キャラクター、悪役、敵役のカードまで常備する完璧さ!!」
「よくもまあ集めたもんだ。こんなんで占いなんてできるのか?」
「疑っているの? 辰君? じゃあ何か占ってあげるわよ」
それを聞いた辰羅はポケットから小さなサイコロを取り出した。
「じゃあ俺がこのサイコロを投げから、どの目が出るか、当ててみろよ!」
「うん、わかった」
「お、これは特ダネの予感!」
そう言ってカメラを構える新浪魅咲。
「わあ、面白そう」
神城綾花も興味津々で瑠璃を見る。
「ギャラリーも集まったところで私の占いを披露!!」
シャッ! シャッ!
ヒーローカードをシャッフルし一枚取り出す!! 出たカードは、
「パープルフェニックスの敵役の中でも一番の雑魚『イルダスライム』!! これはパープルフェニックスの番組内で一番最初に倒された相手だから、辰君のサイコロが出る目はおそらく『1』!!」
『イルラスライム』
イルダスライム族端末兵――ファンタジー要素も取り入れたスーパーヒロイン物のパープルフェニックスにおいて出てきた雑魚モンスター。
いっぱいいる。上級種にイライザスライムなる物も存在。
tamia☆KARI書房刊『パープルフェニックスの歩き方』より抜粋
ポイ、コロコロコロ……
「……出た目は……『6』」
「あ、あれぇ?」
自分の占いとは違った結果になり、愕然とする瑠璃。
「違ったな。やっぱりお前の占いは当てにならない」
「う~ん、おかしいなぁ……あ、解釈が間違っていたのかな? 一番最初に倒された、じゃくて一番多く倒された敵だっていうんなら、『6』になるよね!?」
「見苦しい、最初から言っているだろ? お前の占いは当てにならないって!」
「ああん、ごめんなさい~~! もう一度チャンスをちょうだい!!」
多分駄目だろう。
そんな翡翠瑠璃だが、実はけっこう占いを頼まれることがある。
まあ、物珍しさってのもあるんだろうけど。
時折、クラスメイトが占いしてほしいっていう人間を連れてくることもある。
「一年D組の鴨葱千景と言います。実は俺、ちょっと悩んでいて……」
別のクラスから、瑠璃の噂を聞いた男子生徒が占いを頼みに来た。
「恋の悩み?」
ザワッ!!
何気なく発した瑠璃の言葉に大きくどよめく周りのクラスメイト達。
「ちょっ、ちょっとそんな大きな声で言わないでください!!」
千景は顔を真っ赤にしてそう言う。
「同じ恋する男として俺に相談してきた。だから占ってあげてほしい。こいつと仇花理沙子の相性を……」
薔薇の花をくわえながらそいう遠藤晴夢。
ちなみに、仇花理沙子とは、一年、いや、この媛崎中学の生徒全員の中で最も体重の〝重い”女子生徒である。
「ち、違う! 俺が好きなのは同じD組の、垣根空奈だ!!」
「おいおい、垣根空奈は俺のハーレム・エンドの一員となるべき一人だぞお前なんかに取られてたまるか!!」
「こ~言うのいるから、早めに告白するのがおすすめよ」