AS版その1『不測の事態』-2
――光り輝く3人――
そして現れたのは、
「未来を詠むは姫巫女の力、偉大なる星占の末裔翡翠瑠璃、ここに推参!!」
巫女衣装に身を包んだ瑠璃が、可愛らしいポーズを決める。
「闇を生きるは忍びの定め、皇賀忍軍六家新浪家長女新浪魅咲、ここに見参!!」
いつものグルグル眼鏡がなく、その下にあった鋭く光るきつい瞳が見える。逆に口元や髪の毛を覆う忍者衣装なので魅咲とはわからない、が力強くポーズを決める。
「さあ、さっさと飛雲を使って上に出るぞ!」
所々に戦国時代の武将がつけていた甲冑を模した防具をつけた公家の様な服装、目の下につけられた隈取が目を引く姿の辰羅が、そう言って、術を使おうとする。
「ちょ、ちょっと辰君、ノリ悪いわよ!! 魅咲ちゃんだってしっかりとポーズ決めているのに!!」
瑠璃がポーズと決め台詞を決めなかった辰羅に文句を言う。
「あのなぁ、なんで化身後にポーズや台詞が必要なんだ?」
「アカリちゃんやコーヤ君がいてくれたら、きっちりとポーズや台詞をとってくれたはずだよ!」
「あの2人は別の中学校にいったんだから、仕方ないだろ。今度、同窓会でもしてポーズを決めてもらえよ」
辰羅はそう言って中断していた術を使おうとする。
「私も化身ができたら一緒にやってるんだけど……」
「綾花のアークは発動したら術者本体にかかっている物以外は吸い込でしまうんだから、どうしようもないでしょ。私と同じ忍化粧でも覚えてみる? これは能力によるものじゃなくてただの早着替えだから、能力は関係ないよ」
「う~ん、私には魅咲ちゃんみたいな身体能力はないからね……」
本当に残念そうに、只一人制服姿の綾花が言う。
「行くぞ、『黒飛雲』!!」
「でできて! 『白飛雲』!!」
そうこうしてるうちに辰羅と瑠璃が術を完成させ、空飛ぶ黒と白の雲を呼び出す――!!
「何あれ!? スクープ!?」
草薙苺は運動場に現れた怪物をカメラで捕える!
「どう見ても、作り物じゃないわね……魅咲の写真はどう見ても作り物だったけど」
編集長を名乗っていても所詮は女子中学生……まだまだ彼女は真実を見抜く目を備えていなかった。
「ええと、白鈴先輩いますか!?」
そんな苺に声をかけてきた者がいる。白鈴愛美を探している由良瀬里奈だ。
「――愛美? 愛美なら多分ラクロス部にいると思うけど?」
瀬里奈は苺が愛美と同じクラスという事を知らなかった。ただ、二年生を見つけたから声をかけただけだ。
「ラクロス部――それって、どこにあるんですか?」
「どこって……? ラクロス部はテニスコートの横に部室があるけど。運動場の方ね」
「運動場――」
「いくよ、パク」
「ああ、しかしなんで幻魔獣がここにあらわれるんだ?」
「また、天逆衆の仕業でしょう」
「……そうだな」
ラクロス部の部室の前で愛美はステッキをかまえる。その目には、ゆっくりと動く怪物の姿が映っていた。
その横で使い魔のパクが何かを考えるかのように目を細めていた。
「魔力解放・変身!! 『ベル・ホワイトフルスロット』!!」
リリリン!!
白鈴愛美の体が光り輝き、魔法衣装に身を包む魔法少女に変化する。
「鳴り響くは純白の音色、希望伝える音を運ぶ正義の使者ベル・ホワイト!! ここに見参!!」
「気をつけろ、ベル・ホワイト――見たところ弱ってると思うが、幻魔獣はかなり手強い……まあ、魔法少女なら大丈夫だろうがな」
「うん、いざとなったらロイヤルセレナもいるもんね!」
ベル・ホワイトは可愛い後輩を思い浮かべる。
「フフ……いくよ、『フライング』!!」
ステッキが箒に変化し、それにまたがったベル・ホワイトが宙を舞う!!
「あ、あれは――!!」
苺からラクロス部の事を聞いた瀬里奈は、慌てて校舎を出る。その時、テニスコートがある方向から箒に乗って空を舞う白い魔法少女の姿が見える――!
「ベル・ホワイトだ……」
「ボ~っと、している暇はないよロイヤルセレナ、君も変身だよ!」
「う、うん!」
周りに誰もいない事を確認する余裕もなく、瀬里奈はステッキをかまえる!
「魔力解放・変身!! 『ロイヤルセレナオーロラデビュー』!!」
キラキラキラ、バシュ~~ン!!
「光あまねく未来へ導く荘厳華麗な太陽の申し子、その名も尊きロイヤルセレナ! ここに推参!!」
とりあえずお約束としてポーズと決め台詞をやっておく、
「急げ、ロイヤルセレナ!!」
「う、うん! 『フライング』!!」
先ほど見たベル・ホワイトと同じように、ステッキを空飛ぶ箒に変え天に舞い上がる――
「遠くで見ても、怖そうな怪物だ……私、だいじょぶかな?」
まだ、自分に自信がない新米魔法少女は不安で押しつぶされそうになっていた……
ガサゴソ、ガサゴソ……
ロイヤルセレナが飛びたった場所のすぐ後ろで茂が揺れ、一人の男子生徒が姿を現す……
「魔法少女……俺達が、守られるだけの存在だと思うなよ!!」
そう言って、竹刀を片手に小鳥隆幸は走り出した!!




