A版その3-2
「すいません、ここにうちのクラスの小鳥隆幸は来ていますか?」
そう言って一人の女子生徒がA組の教室に入ってきた。
それを見た晴夢が立ち上がり、
「うん? あれは……B組で一番に愛を捧げる一番大好き少女……夏樹陽子!!」
入ってきたのはB組の夏樹陽子だ。陽子はA組のクラスメイトをざっと見逃したと隆幸を見つけて歩いてくる。
晴夢は完全にスルーされていた。
「夏樹さん? どうしたんだ?」
「いえ、あの時私、クラスの皆に迷惑をかけちゃったみたいだからさあ……謝りに回っているんだ」
あの時というのは、 B組のクラスメイト全員が「一番一番」と叫びまくっていたいわゆる〝B組一番事件”の事だろう。
「あれは……悪いのは天逆衆だ。君が悪いんじゃない」
「……天逆衆が悪い……?」
辰羅が低い声でそう言うが、隆幸は気にしなかった。
「……天逆衆っていうのが、何なのかわからないけれど……一番と言えば私の事だから謝っておこうと思って……ごめんなさい!!」
そう言って夏樹は隆幸に対して頭を下げた。
「いい心がけですね夏樹さん」
それを見ていた鈴鹿先生がにっこりと微笑んだ。
「確かにあの一番一番ゴールは大迷惑だったもんなぁ」
「なんであんなことをしたんだろうねB組は」
周りのA組のクラスメイトもそう話している。
「とりあえず、これで私の気は済んだわ。じゃあ、別のクラスメイトに謝りに行くから」
「ああ、頑張ってな」
「お前もB組に帰えれよ、小鳥……」
陽子を見送ろうとする隆幸に対し辰羅が突っ込む。
「そうだよ、辰君はこの私と同じ演劇部なんだから、剣道部には入らないよ!」
瑠璃も辰羅に賛同する。
「――!」
その言葉を聞いたときにいきなり陽子が立ち止まる。
「……あなたは……もしかして、翡翠瑠璃?」
陽子の声のトーンが下がっている……
「へ? そうだけど?」
「この間の中間テストで学年一位だった、翡翠瑠璃?」
ぎぎぎぎぎ…………
壊れたロボットのようにゆっくりとした動きで、瑠璃を見る陽子。
「私の、一番のライバルだと思っているあの翡翠瑠璃!?」
すごい勢いで瑠璃に詰め寄る陽子!
「あなたがいるから私は成績じゃ一番になれないのよ!!」
「いや、それは私が占いで山を当てられるからなんだけど……」
「なにそれ!?」
瑠璃の何気ない返事に叫ぶ陽子。
「占いなんかで成績一番になれるわけがないわ。裏で猛勉強をしているのでしょう。……でもいいわ、次のテストではあなたを破って私が一番になる!!」
「う~ん、私はそういうものあんまり興味ないだけどね」
テンション高く叫ぶ陽子に瑠璃は完全に気をない返事を返す。
「なんかみんなストーカーに狙われた人みたいだね」
綾花は一歩離れたところでにこやかにそういう。
「あれ、綾花ちゃんそんなこと言ってていいの?」
「――?」
陽子に詰め寄られている瑠璃が一枚のヒーローカードを綾花に渡す。
「? これは……『擬音戦隊ドンレンジャー』?」
ヒーローカードには5人のヒーローが描かれている――
「「神城綾花はここにいますか!?」」
その時、A組の教室に5人の上級生が入ってきた!




