A版その1-1
A版その1
『魔法少女の活躍、ここに極まる』
媛崎中学校一年A組のお知らせボードに、そんなタイトルがつけられた学級新聞が、デカデカと貼られていた。
「ねえ、魅咲ちゃん。これって本当なの?」
一人の女子生徒が別の女子生徒に質問を投げかける。
「もちろん本当だよ。この新聞部新浪魅咲の記事に間違いは無い」
新浪魅咲、そう名乗った女子生徒が胸を張ってそう言う。
新浪魅咲――なんかもう漫画でしか見られないようなグルグル眼鏡が特徴の女子生徒。眼鏡を取ったら美人じゃないかともっぱら評判である――
「この写真を撮ったことによって新聞部の苺先輩も褒めてくれたんだ」
エッヘン、というような擬音でもあるかのように胸を張る魅咲。
「本当なのかしら……?」
「……綾花ちゃん……もしかして、疑ってる?」
綾花と呼ばれた、このクラスでいちばん背の低い、そしていちばんかわいい(自称)女子生徒が、首をかしげていう。
「まあ、そう思わないけどね魔法少女の噂は、お兄ちゃんがこの媛崎中学校にいた時からあったって言うし……でも、その本人に会ったとか、写真が残ってるっていうのはなかったって聞いてるけど?」
「あ、綾花ちゃんのお兄さんて、この学校のOBなんだ。じゃ今度取材に行ってもいいかな? 私達一年はこの学校についてまだ何も知らない事が多いから、少しでもいろんな事が知りたいんだ」
「それはそれはいいことだ? この俺も神城綾花嬢のお兄さんにご挨拶をしてみたいな。いずれは義兄になるかもしれないのだから」
二人の会話に、一人の男子生徒が口を挟んできた。どこから持ってきたのか一本の赤い薔薇を口にくわえた男子生徒だ。
「謹んでお断りします。遠藤君」
綾花は半眼でその男子生徒を睨み付ける。
「フ……もちろんその相手が君でも構わないよ新浪魅咲君。君のその眼鏡の下の素顔を赤く染めてやる」
パコ!
「どわぁ!!」
有無を言わせず放たれた魅咲の手が遠藤の額を打つ。
かなり痛かったのか口から薔薇を落とし涙目でうずくまる遠藤。
「あ~あ。フラれてやんの」
それを見ていた別の男子生徒がそう言ってきた。
「うるさい。あれは照れ隠しだ俺にはわかる……」
「そうは見えないなぁ」
笑いを含んだ口調で男子生徒が遠藤をからかう。
「うるさいぞ辰羅…このリア充野郎が……中一でもうすでに彼女のいるお前に、とやかく言われる筋合いは無い!!」
遠藤は声を荒げて自分をからかってきた辰羅と言う名の男子生徒に言う。
「いやリア充って……」
「辰君!! 私の事嫌いなの!?」
「どわぁ!!」
辰羅の背後から可愛らしい女子生徒が抱きついてくる。
「離れろ、瑠璃……!」
「好きって言ってくれるまで、離れないよ!」
「ケ……見せ付けやがって……お前のその彼女がいますよっていう態度気に食わないなぁ」
遠藤は肩をすくめてイチャつく辰羅と瑠璃を眺める。
「なあ、翡翠瑠璃……辰羅と別れたら、いつでも言ってくれ。俺が必ずその傷心をきれいにしてやるから」
「ムリムリ、私の占いでは、私と辰君が別れるなんて、出てないもん」
「お前の占いなんてあてになるわけないだろ」
瑠璃の重みに耐えながら辰羅はそう言った。
「相変わらず仲いいよね。御陵君と瑠璃ちゃんって」
「もう少し二人とも有名なってくれないと新聞記事にはできないだけどね」
綾花と魅咲が呆れながら、そう言った。
神城綾花、新浪魅咲、御陵辰羅に翡翠瑠璃、そして遠藤……遠藤……。……遠藤……何?
「俺の名は遠藤晴夢だ! ハーレムエンドを目指す男だ!!」
まぁこの五人が一年A組の中心人物みたいな感じだった。