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S版その2-3

 目をパチクリと瞬かせ、ロイヤルセレナがそう言う。

「なにって……悪い天逆衆と戦うのが魔法少女の使命だろ?」

「え……? そんな……無理よ! 怖いもん!」

「ロイヤルセレナ……」

 ロイヤルセレナは、周りを見渡す。


「「一番!! 一番!!」」


 全く同じような動きをし同じ台詞を繰り返すB組の生徒達、そしてそれを指揮している夏樹陽子――

「こんなことをする天逆衆って一体なんなの?」

「この学校を支配して、この世界を征服しようと企んでいる悪の集団だよ。欲望が強い人間に欲望の仮面と力を与えて、自分達の先兵としてしまうんだ。ロイヤルセレナ達魔法少女は、欲望の仮面に支配された人間を救い助けるのが役目なんだ」

 レオがそう言ってくる。

「魔法少女って異世界ワーボワールから赤ん坊の頃にこの世界に避難させられた少女だって言っていたじゃない……魔法の異世界から来た私達が、なんでそんな事をしなくちゃいけないの?」

 ロイヤルセレナはレオに詰め寄る。

「恩返しだよ」

「恩返し?」

「ああ、魔女ジョアンナによってもたらされた被害によってこの世界に避難されてきた君達が、元の世界に戻るため、この世界の悪を一つでも減らしておく。それが、この世界にできる魔法少女の恩返しだ」

「そんなこと、私がしなくてもいいじゃない……」

 ロイヤルセレナは恐る恐る夏樹陽子を見る。陽子は仰々しいポーズを取り、

「一番になる私を無視して話してるじゃない!!」

 陽子が再び他者を操る波動放つ。

「ボーッとしてたらやられるよ」

 今まで黙ってレオの説明を聞いていた魅咲がその波動をかわしながら言ってくる。

「立つんだ、ロイヤルセレナ。魔法少女である君は戦わなければいけない!」

「そんな……怖いよ……!」

 ロイヤルセレナはギュッと体を抱きしめる。その体は震えていた。

「……無理ないよね……ついこの間まで普通の小学生だったんだから」

 魅咲が何かを悟ったような口調で言う。

「天逆衆なんて凶悪な連中と戦えっていう方が無謀だよ」


「私を称えなさい!!」


 陽子が動けないロイヤルセレナに向かって波動を放つ!!

「立ってくれ、ロイヤルセレナ!!」

 レオが叫ぶ。が、ロイヤルセレナは動けない……

「『バリア』!!」

 ロイヤルセレナの前に光の壁が現れて陽子の波動を防ぐ!!


 リィーン!!


「大丈夫!? ロイヤルセレナ!!」

「ベル・ホワイト!!」

 ステッキを変化させた空飛ぶ箒に乗って、窓から白い魔法少女が入ってくる! ロイヤルセレナの先輩魔法少女、ベル・ホワイトだ!

「なにか異変が起こっているって聞いたけど……やっぱり天逆衆の仕業のようね!!」

 ベル・ホワイトは陽子の顔についている仮面を見てそう言う。


 リン!


 ロイヤルセレナと美咲の横に降り立つベル・ホワイト。

「……? どうしたの!?」

「初戦闘なんで呆けてます」

 震えて動けないロイヤルセレナを指さしてそう言う魅咲。

「しっかりしろよ、だいじょぶなのか? お前のパートナー」

 ベル・ホワイトの使い魔パクがレオにそう言う。

「大丈夫!?」

「ベル・ホワイト……」

 ロイヤルセレナが顔を上げる。

「……」

 ロイヤルセレナの表情に何かを思い出すベル・ホワイト……

「ロイヤルセレナ……無理に戦えとは言わない……でも、天逆衆の仮面に操られた生徒をそのままにしておくわけにはいかないの!」

 そう言ってステッキをかまえるベル・ホワイト……

「私が一番になるのを邪魔する難敵のようね……皆、そいつを排除しなさい!!」

 陽子の号令で、「一番一番」と叫んでいた生徒達の一部が動きを変え、ベル・ホワイトに向かってくる。

「悪いけど、ちょっと我慢してね……『ウイップ』!!」


 リリン!!


 ベル・ホワイトのステッキが鞭に変化する!!

「「一番!!」」

 迫ってきた生徒達に対し魔法の鞭を振るうベル・ホワイト!

「ハッ!!」


 リン!!


 体を半回転させて鞭を振るうベル・ホワイト!! その鞭が、 一人を除いて襲ってきた生徒達を絡め取り、動きを止める!

「ロイヤルセレナ、あなたのステッキを貸して!!」

「ああ!!」

 ベル・ホワイトが動けないロイヤルセレナの横のレオから、ステッキを受け取り、

「『マジカル・ソード』!!」


 リン!!


 必殺の魔法剣を作り上げるベル・ホワイト!

「一番!!」

 鞭を交わした一人の男子生徒が立ち上がる。

「私の一番になる野望を邪魔するものを倒しなさい、私の一番の部下よ!!」

「一番!!」

 陽子の号令の下立ち上がるその男子生徒。

 その手にはなぜか竹刀が握られている。

「一番!!」

 竹刀を片手に襲い掛かってくるその男子生徒……ベル・ホワイトはマジカル・ソードを構えて相対する。

「はっ!!」


 リン!!


 ばし!!


 マジカル・ソードと竹刀が打ち合う。

 その男子生徒はなかなかの腕前でかなりの強敵だ!

「あれ? コトリ君?」

 魅咲がそう言う。

「コトリ……?」

 その男子生徒の名札には『小鳥』とある。

「いちば……」

 コトリ、と聞いたその男子生徒の動きが止まる。

「どうしました? 私の一番の部下?」

「いちば……いちば……」

 コトリ、というらしい男子生徒は動きを止めながら、プルプルと震えだす……

「……?」

「お、俺は……『コトリ』じゃない……『オズ』、だ!!」


 ブワァ!!


 小鳥隆幸が、そう叫んだ途端、その体から陽子が放った波動が飛び出る……

「おやおや、自分の意志で解除できるんだ」

 魅咲がいつも通りののほほんとした口調で言う。

「お前は……そのグルグル眼鏡は……確か、A組で見かけた……」

「新浪魅咲だよ」

 隆幸にそう返す魅咲。

「そうだったな……で、そっちは……?」

 隆幸の視線の先には魔法少女姿のベル・ホワイトとロイヤルセレナがいた。

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