クリスマス特別編
「魔法少女のステッキは、実に色々な形態があるの」
魔法少女ベル・ホワイトは、新しくできた後輩の魔法少女、ロイヤルセレナに魔法の授業をしていた。
(思い出すなぁ、私もサーヴィン・メプル先輩からいろいろな事を教えてもらったっけ)
昔の事を思い出しながら、説明をしていくベル・ホワイト。
「見ててね! 『ソード』!」
リン!
魔法の言葉によって、ベル・ホワイトのステッキが剣の形になる。
「『ランス』!」
リリン!
今度は長い槍のような形になる。
「『ウィップ-』!」
リリーン!
長くしなやかな魔法の鞭に変わる。
「どう?」
満面の笑みを浮かべ鞭を振るうベル・ホワイト。
「……なんか……十徳ナイフみたいですね」
「あ、あら……」
ロイヤルセレナの感想にちょっとずっこけるベル・ホワイト。
「何か、使ってみたい魔法はある? 難しい魔法じゃなければ、教えられるけど?」
気を取り直してそうロイヤルセレナに問い掛けるベル・ホワイト。
「そうですねぇ……この間の『キュアー』はものを治す魔法だったんですよね? 他の魔法は攻撃系……」
自分がどんな魔法を使ってどんなことをしてきたのか思い出していくロイヤルセレナ……そこでフト思いつく。
「空を飛ぶ魔法ってありますか?」
ロイヤルセレナは興味本位でそういった。
「空を飛ぶ魔法ね! 見てて」
そう言って再びステッキをかまえるベル・ホワイト。
「『フライング』!」
するとステッキが、箒の形に変わる。
「うわぁ!」
感嘆の声を上げるロイヤルセレナ。
「私、箒に乗って空飛ぶって結構あこがれていたんです!」
「じゃあロイヤルセレナもやってみてよ。空を飛ぶ魔法の形を思い浮かべてステッキに魔力を注ぎ込んだよ」
「ハ、ハイ!」
ロイヤルセレナはステッキを構えて力を込める――
「『フライング』!」
シャン!!
ロイヤルセレナのステッキが空を飛ぶ箒に変わる!
「おやおや、やっておりますね」
そこに三毛猫のヌイグルミがやってきた。
「あ、グレン・ナジャ!」
ワーボワールの預言者、グレン・ナジャだ。その後ろから、ベル・ホワイトとロイヤルセレナの使い魔であるパクとレオも何かの箱を抱えて現れる。
「空を飛ぶ魔法ですね。それならばあなた方にちょっとやってもらいたいことがあります」
「よう、これを見てくれよ!」
「おいらたちが一生懸命作ってみたんだよ」
そう言ってパクとレオがそんなに大きくない箱を開ける。
「これって?」
「うわぁ綺麗……」
中には小さなキラキラ光る石をつけた指輪やイヤリングが多数入っていた。
「ベル・ホワイト、ロイヤルセレナ。今日はこの世界では特別な日だと聞いています」
「あ、そういえば今日って」
「クリスマス……」
ロイヤルセレナもベル・ホワイトもそのことを思い出した。
「魔法少女は人々に夢と希望を与える存在。魔法少女とその友人たちの絆は美しく強いもの……それを強固にするために、この指輪やイヤリングをあなた方の友人や恩人たちに配ってみたらいかがでしょうか?」
「これを、私達の友達に配る?」
ロイヤルセレナがグレン・ナジャにそう問い掛ける。
「ええ、空飛ぶ箒の魔法を使って友人や恩人たちの元へ届けるのです。空飛ぶ練習にもなるからちょうどいいでしょう」
ヌイグルミ――みたいに見えるために表情がわかるわけではないがグレン・ナジャは微笑んでいるようだ。
「いこうよロイヤルセレナ。初めて空飛ぶからうまくいかないかもしれないけどおいらがちゃんとサポートするよ!」
パクがロイヤルセレナにそう言う。
「面白そう! 私も空を飛んでみたい!」
「じゃあやってみようか!」
ロイヤルセレナもベル・ホワイトもイヤリングと指輪を手に取る。
「気をつけていってらっしゃい」
グレン・ナジャは二人の魔法少女を見上げてそういった。
「じゃあ、行くわよロイヤルセレナ!」
「はいっ!」
「「『フライング』!!」」
リリリン!!
シャシャン!!
箒に乗った二人の魔法少女が夜空に舞い上がる。友人や恩人たちに渡すプレゼントを持って。
受け取った人達は、それが魔法少女から贈られたものだと気づかないかもしれない――しかし、心のどこかでは絆がある事を感じるのだ――
――今日はクリスマス。奇跡が起こってもおかしくない日――
夜空を舞う魔法少女からの贈り物。それを受け取れる幸運は実は誰にでも訪れる!!
魔法少女より愛をこめてメリークリスマス!!




