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最終決戦~魔法少女を取り戻すための戦い~-12

「銀河! 魔法少女達全員説得および捕縛完了!!」

 パープルフェニックス/七瀬紫鶴が夫であるシルバーファング/七瀬銀河に伝達する。

「そうか……というわけだ、残る敵兵力は君たちだけみたいだね」


 大量の魔獣達を、いともたやすく撃退し、タビノ・キングにチェック・メイトをかけていた銀河が、そう発言する――


「クフフフフフフフフフフ……」


 それに対し、ライオンのヌイグルミから返ってきたのはそんな笑い声だった――


「素晴らしい、素晴らしいなぁこの異世界の技術というものは――そしてここにはそれらがそろっているって――」

 タビノ・キングは、ゆらりと立ち上がる――


「魔力を集めろ!! ゲートを開き、ここにあるものすべてを我らが国、ワーボワールに持ちかえるのだ!!」


 タビノ・キングはそう高らかに宣言し、まだ無事なヌイグルミ達から魔力を集中し始める!


「悪あがきを――!!」


「楔の少女よ!! もう一度ゲートを開け!! 『オープン・ザ・ゲート』!!」


 タビノ・キングの魔法によって、媛崎中学校の夜空に亀裂が入り、空間の裂け目が出現する――!!


 その中心に……髪の長い少女の姿が見える――その少女中心に世界と世界をつなぐ空間の裂け目が展開している――!!




「あれって――……まさか……」

 空間の裂け目の中心にいる少女を視認した綾花が驚愕の声を上げる――

「まさか……嘘でしょう……ミリー……?」


「――!?」


「綾花ちゃん? ミリーって?」


 魅咲の問いかけに答えず、綾花はふらふらと空間の裂け目に近づいて行ってしまう――


「ちょっと!!」


 あわてて綾花を追いかける魅咲!

「どうした!?」

「何かあったの!?」

 それに気づいた辰羅と瑠璃も駆け寄ってくる――




「ミリー? ……ミリー・ダンドレイジーか!?」

 綾花の様子に気づいた銀河が何かを思い出したように言う。

「銀河。ミリー・ダンドレイジーって、まさか!?」

 紫鶴も何か心当たりがあるようだ。

「ああ、5年前、天覇の魔女が欧州で起こした事件――神城兄妹など数十人の少年少女が巻き込まれたあの忌まわしい事件の際、行方不明となり、未だにその所在が明らかになっていない一人の少女がいる……」

「それが……」

「ああ、ミリー・ダンドレイジーだ」

 真剣な表情で、空間の裂け目にいる少女をにらむ銀河。


「天覇の魔女ジョアンナは、あの時、潜在的に特殊能力を持った子供たちを集め、強制的に覚醒させようとした……綾花ちゃんや真一君の能力はその時に目覚めたものだ――そして、ミリーと言う少女は空間をつなぐ能力に目覚め、異界と異界を結ぶ空間の渡り廊下みたいな物の楔として世界の狭間に取り残されたと考えれば、説明がいく――」

「ジョアンナは、彼女を介してワーボワールに乗り込んだ……そしてミリーをそのまま放置しこちらの世界に帰ってきた……」

「そしてワーボワールは、空間の楔となったミリーを利用しこちらの世界に来て、ジョアンナと同じ魔女を――いや、それよりも御しやすい魔法少女を自らの戦力とするため暗躍を始めた――」

「真相は、そんなところか……ってことは、全部ジョアンナが元凶ってことだ……天覇の魔女め……」


「それにより、我らは素晴らしい戦力を手に入れられるわけだ――魔法少女といいお前達といい、かの魔女には感謝しないとなぁ――」

 タビノ・キングが大笑いする――自身も、被害者であることに気付いていないのか?




「ミリー……今助けるから!!」

 綾花は自分の危険も顧みず空間の裂け目に飛び込んだ!!


「おい!!」

「待ちなさい!」

「私たちも協力するから!!」


 続いて、瑠璃、魅咲、辰羅も続く!!


「ちょっと!」

「やめなさいって!!」

 陽子たちが止めようとするが遅かった――




「銀河――なんか、私達が解説してる間に大変な事態になってるんだけど?」

 紫鶴がそれを目撃して言う。

「――わかってる……いざとなったら僕も能力を使う――」

 パワードスーツ・シルバーファングを脱着し、銀河はそのまま地面に降り立った――

 その両の瞳が、淡い銀色に輝いていく――

 それは、シルバーファングだけでは無い、七瀬銀河という人物が超常自衛隊三佐という地位にいる確固たる理由である――

「シルバーファング、フライト形態――」

「パープルフェニックス、変形――」




「ミリー!!」

 綾花は、空間の裂け目の中を泳ぐように移動し、ついには楔の少女のところにまでたどり着いた――


「ミリー!! 動いてよ!!」


 空間の裂け目は少女を拘束している――綾花は必死でそれを外そうとする!!


「ええ、もう!! 『アーク』!!」


 ギュルルルルル!!


 人の持つ特殊能力を吸収するアークをミリー本人に使い楔の能力を弱まらせることでどうにかその体を動かす――!!

 しかしそれは、異常空間の中心を壊すことに他ならない!!


「急げ!! ここが壊れるぞ!!」

「出口が閉まる!! このままじゃ現実世界に戻れなくなる!!」

「下手をすればワーボワールに行っちゃうかもしれないよ!!」


 瑠璃達3人も協力し、綾花とミリーを連れて脱出しようとする――

 そこへ、


 バシュウウウウウン!!


「乗れ!!」

 パープルフェニックスと合体し、飛行形態に変形したシルバーファングに乗った銀河が到着し、5人をその上に乗せる。その銀色の瞳は、全ての空間動向を完全に把握している――どう進めば、脱出できるか――どうやればいけるか――


「いそぐぞ!!」


 シルバーファングがうなりを上げる!!


「大丈夫ですか!? 銀河さん!!」

「僕は、こいつを操ってすぐに脱出する!! だが、空間修正のスピードが速い――お前達の能力で力ずくで現状維持しろ!!」


本来、空間修正は正しい事で、それが起こらないと、世界そのものが時空の断裂に飲み込まれてしまう。

だが、今起こっているそれは、彼らの脱出を阻む障害に他ならない――!!


「『妖火・天狗』!!」


ドン!!


ミリーを抱きしめ、動く事が出来ない綾花を守るために、瑠璃、辰羅、魅咲が全力で能力技を放つ!!


銀河はシルバーファングを操り現実世界へ急ぐ!


「もう少しだ……――!? デカイのがくるぞ!!」


銀河の目が強大な力を見る!!


「皆! 力を合わせて!!」


瑠璃が叫ぶ!!

「落ちろ、落ちろ、落ちろ落ちろ落ちろ!! 天より落ちろ!! 『降龍図』!!」

 辰羅の妖力が天より落ちる光の龍を描き出す――!!


「皇賀流忍術、金遁――『金龍図』!!」

 魅咲が忍術で金色の光を放つ龍を描き出す――!!


「星占術秘技――『星龍図』!!」

 夜空に輝く星々が、瑠璃の合図で光の龍を描き出す――!!


「三大龍図――!!」


「「「咆吼!!!!!」」」


 3人の叫びと共に、光の龍の口から光の玉が放たれる!!


 ギュオオオオオーン!!


光りが、閉じかけていた空間の裂け目をぶち破り、それと同時にシルバーファングに乗った綾花たちが現実世界に飛び出した――!!

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