最終決戦~魔法少女を取り戻すための戦い~-7
ヒョイ、ヒョイ!
2人の魔法少女が放つ魔法弾を、軽やかにかわしていく瑠璃――
「ま、簡単そうに見えてそう簡単なことじゃないんだけどね……」
今、瑠璃は四次元の視点で物事を見ている――
『安西先輩の魔法弾は跳弾するから、それは右にかわして、道堀先輩の魔法弾は――』
「『白飛雲』!!」
ぶわっ!!
地面から這い出るように現れた魔法少女クインローズの魔弾を、白飛雲に乗り上空に飛んで逃れる――!!
「――くっ!!」
悔しそうにステッキをかまえ直すクインローズ――
「うう、私一人だけ二人も先輩魔法少女を相手しなきゃいけないなんてきついよ、やっぱり――」
魔法少女リザ・クルージュ――そして、魔法少女クインローズ――安西薫と道堀万由子――この二人はコンビで動く――
もともと同じアパートの同じ階にそれぞれの家があった二人は、幼い時からよく遊んでいた。
小学校時代もほとんど同じクラスで、中学校に上がっても同じ部活に入るような仲だった――
二人は、グレン・ナジャによって暴走させられた入田凛華を華麗に倒した魔法少女エルドラーナ――神山桂花に憧れ共に魔法少女となった。
その時、エルドラーナの有能性を実感していたワーボワールの者達は――二人に使い魔と偽って自分たちの仲間を生活を共にさせた――
魔法の才能は、誰しもが持っている――いや、それは魔法だけじゃない様々な能力の才能と言った方が正しいのだろう――
辰羅や瑠璃のように生まれついてそれを行使できる人間は、教育によって能力が変わる――辰羅は妖術、瑠璃は仙術――
綾花のようにある出来事によって能力が目覚めたものは――それでも周りからその能力を認めたとき名前が決定する――
そして――魔法少女は――そういった能力が存在すると知ったとき――覚醒が起こる――もし、別の場所で別の条件で覚醒が起こっていたら、また別の能力として行使することになっただろう――
彼女達は、魔法という能力を体感し、魔法世界の住人であったワーボワールのヌイグルミ達と過ごすことによって魔法少女という存在へとなったのだ――
そしてそこには、ワーボワールの……グレン・ナジャの、そしてタビノ・キングの……邪な意思が……秘されていた……
「逃がさないわよ!! 私たちをからかってただで済むと思っているの!?」
「お仕置きよ! お尻ペンペン、してあげるんだから! あなたや、他の子達――もちろんシルバーファングやパープルフェニックスもね!!」
二人の魔法少女は、瑠璃をとらえようと共同魔法を使おうとする――
『ちょっと厄介なのが来る――』
人よりも高いところにある意識を、さらに上へと登らせる――そうすることによって、二人の魔法少女が何をするかがはっきりする――
『なんかやばい――私の行動は――!!』
数十秒先の未来で瑠璃がとってる行動は――
『魔法を、そのまま受け止める――!?』
とんな理不尽な行動でも、予知した未来の自分がとってる行動だ何かしら、意味というものがあるのだろう――
間違った未来が見える時は――自分の想い人、そして天逆衆でありシックス・フェイクという、予知妨害の能力を持っている御陵辰羅が関わっている時ぐらいのものだ――
『――!!』
瑠璃の意識は一気に低いところまで降下する――そこから見える未来はほんの数瞬――1秒にも満たない未来だ。
そして、今から起こる事――そして、瑠璃、自分がとる行動を――絶対に間違えてはいけない――!!
「「合体魔法――『セイント・ホーリー……ハリケーン』!!」」
グオオオオオン!!
夜空が――星々が――大気が――そして地面が――細かく震え出す――!!
幾重にも降り重なった二人の魔力が強大な力の本流となって瑠璃に襲いかかる――!!
「だけどそれは、人が造りしもの――そして、自分では無い人間との共同作業――いくら仲の良い親友同士だからと言って完璧な物など、ありもしない――必ずどこかにほころびがある――!!」
数瞬後の瑠璃はそのほころびを見つけ、魔法の激流を片端から解体していく――!!
両手で!! 言葉で!! 自らの持つ仙力で!!
ほころびを1つずつ、素早く、的確に、壊し、ほどき、当たれば大ダメージを受けてしまうであろう魔力の本流を!
意味を変え――砕き、消し去り、無効化していく――
「うそー!!」
「何、それ!?」
リザ・クルージュとクインローズ……薫と万由子は2人揃って驚きの声を上げる――
無理もないだろう、渾身の力で放った最強魔法が瑠璃にダメージを与えられずに全て無効化されてしまったのだから――!!
「あ、綾花ちゃんがいればこんな苦労しなくてすんだだね……」
ほんの数瞬の未来でやっていることを完全にトレースする――難しい技術だがやってやれないことはない――
高位から見たとき、瑠璃は失敗していなかった――だからこれは成功するのだ――
「では、先輩方、説得に応じてくれますか? たぶんこれ以上争っても無駄だと思いますから――」
瑠璃は呆然としている薫と万由子に、ぺこりと頭を下げた――




