最終決戦~魔法少女を取り戻すための戦い~-6
「神城、真一……? 懐かしい名前ね……彼は、元気?」
魔法少女エルドラーナ――神山桂花は、目を細め懐かしむように言う。それは、もう手に届かない遥かな過去を思い出すかのようだ。
「お兄ちゃんなら今、バミューダ海域の近くにいってるわ」
綾花はそれに答える――
「バミューダって、船や飛行機の墓場って言われているバミューダ・トライアングルのこと!? あなたのお兄さん、なんでそんなところに行っているの!?」
魅咲は興味を持って聞いてしまう――
「世界をつなぐ魔女、ワールドリンク、ファロ・ヴェルバーンの住む城がその近くにあるらしいの!」
「異世界を渡り歩くと言われている魔女、ファロ・ヴェルバーンが……」
「異世界に連れ去られた友人を助け出すために、その魔女の力を借りたいって言っていた……聖お姉ちゃんも一緒にね」
「へぇ、あの鳳凰寺財閥の令嬢か――」
次々と出てくる懐かしい名前に、再び目を細める桂花――
「ってわけで、こんな戦いやめて、同窓会にでも出てください、というわけで神山桂花さん説得完了! 魅咲ちゃん次いこ!」
「こらこらこら!!」
桂花が慌てて叫ぶ!
「そういう流れじゃないでしょう! あなた達は私達と戦うためにここに来たんじゃないの!?」
「いや、この世界に戻ってきてもらうよう説得しに来ただけだけど?」
「……それに、神山先輩……あなたはワーボワールのヌイグルミ達に洗脳されてる訳じゃないでしょう?」
魅咲が桂花を見つめて言う――
「……? 魅咲ちゃん、どういうこと?」
「……気付いてなかったの綾花……彼女、正気なんだよ。他の魔法少女達はどこかおかしなところがあった。何かが混じってるような……」
「多分それは、他の子たちがワーボワールの生まれって、いう設定になっているからでしょうね……」
綾花と魅咲の話を聞いていた桂花が口を挟む――
「……おかしいと思ってなかった? 他の魔法少女達が何故、自分は異世界で産まれた人間なんて思っていたと思う?」
投げつけるように問う桂花――
「――神山先輩――あなた、一体……」
その言動に疑問を感じる綾花――
「……あの娘達は、魂を混ぜられてるの。使い魔、って呼んでるヌイグルミをワーボワールは何で魔法少女につけていると思う? あれはね、ほんの少しだけあのヌイグルミの魂と魔法少女の魂を混ぜることによって魔法少女に自分は異世界生まれだって信じこませることができるようにしていたの――まあ、他にもその魔法少女の親しい人間を調べて記憶操作しなくちゃいけない人間を選ぶためでもあるんだけど――」
「……あなたは、そうじゃないですか!?」
魅咲が驚いて言う――もし桂花が本当のことを言っているならば、桂花はちゃんと真相に気が付いていて、黙っていたということになる――
「私は初めての魔法少女……色々と、向こうも手探り状態だったみたい。でもそれは、私が特別ってことでしょ?」
桂花は、にっこりと笑って言う――
「私は、媛崎中学校生徒の中でも、そして魔法少女しても特別――特別なオンリーワン! それがこの魔法少女エルドラーナ――神山桂花って、訳――!」
シャラリン! クルン!
そう言ってステッキを構えてポーズをとる桂花――
「つまり、魔法少女は特別な私一人で充分ってわけ」
「神山先輩……」
「他の魔法少女達を説得してこの世界に連れ帰えるのは構わない! 私だけは魔法少女として残らせてもらう!! 光の矢よ!! 『ライトニング・アロー』!!」
バシュウ!!
「『アーク』!!」
綾花がアークを発動させ、桂花の魔法を吸収する!!
「あ、あれ? 綾花ちゃん、って言ったわね……真一君の妹って事は……やっぱりあなたも能力者だったんだ……うらやましい……」
「――?」
「うらやましいわ!! 生まれついてそうだったってだけで能力を使うことの出来るあなた達兄妹や聖ちゃんみたいな人達がね!! 『ソード』!!」
ブン!!
再び魔法を使う桂花!!
「私やお兄ちゃんは覚醒型で生まれついて能力を持ってる訳じゃありません!!」
「聞いてないよこの人!!」
ブンブン!!
魔法の剣を振り回し襲いかかる桂花!!
「ええ~い!! こうなったら!!」
魅咲が懐から何かを取り出す――!!
「木遁・樹木奇呪!! 『縛樹呪』!!」
ピッ! ピピッ!!
何かの植物の種子が地面に蒔かれる!!
バシュ!!
そこから勢い良くなぞの植物の蔓が飛び出し、桂花に絡みつく!!
「な、なにこれ!?」
ガシャン!!
たまらず魔法の剣を落としてしまう桂花――
「いや! ちょっと! やめて!! いやあ!!」
叫び声をあげて本気で嫌がる桂花……彼女はこういっ触手物に弱かったようだ……
「……やっと一人捕獲成功ってところね……なんか前途多難だわ……」
「説得できなかったね……」
そう言って、 二人はため息をついた……




