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カケラ版-8『新浪魅咲』

 能力者には二つの種類がある。生まれついて能力を持っている血統型と、何らかの理由によって突然能力を持つことになる覚醒型だ。


 これは、能力を持ってる人間ならば当たり前のことだと思っていたけど実はそうではない。

 生まれつきであり、親兄弟が能力を持って指導してくれる血統型ならいざ知らず、覚醒型はそういうことを知らない人間が多い。


 だから、この学校に能力者を集めたクラスを作る、そして自分がそこに所属すると聞いた時も、覚醒型には期待をしないでおこう、そう思っていた。


 能力者として協力できるのは血統型だけであり、その中でも小学生時代から知っている御陵辰羅と、一年ほど前に知り合った翡翠瑠璃ぐらいのものだろう――


 ないしょで言っていくと、その2人の力など借りなくても自分だけで何とかなるかもしれない……そう考えていた時もあった……かな?




 自分の名は新浪魅咲――現代まで続く忍者の集団である皇賀忍軍の1人だ。


 忍者としての技術は師である安土桃香から習いそれなりのものになってると思っている。いざとなれば戦って切り抜ける自信がある――――


 誤解なきように言っておくが自分は能力者じゃない――皇賀忍軍の中には能力を持った人間がいないわけではないが、自分はそうではない。

 だからこそ何かの力を持つものが行方不明になってると言われているこの学校でその行方不明者の一人になる可能性が低いと思われていた。

 特殊な能力を持っている、またはまだ覚醒していないが持っていると考えられている少女が行方不明になる。その数ヶ月前に、魔法少女という存在が現れ人々の噂にのぼる――


 ――――魔法少女失踪事件――――


 それがこの媛崎中学校で起きていると言われている事件の名前だ。

 それを解決するために自分たちはこの学校に入学した――――――




「解決って言ったって、何も君たちだけの独力でやれとは言っていない。君たちは普通に学生生活を送ってくれればいい。そしてその中で起こった事柄を僕達に報告してくれればいいんだ――――ほんの少し変わった出来事、関係のなさそうな事柄でもいい。どんな情報でも良い。とりあえずそこから真実を割り出すのが僕達の仕事だ」


 自分達をこの学校に送り込んだ張本人はそう言っていた。


「ま、言ってしまえば僕はシャーロック・ホームズで君たちはベイカー街チルドレン……もしくは僕が明智小五郎で君たちは少年探偵団って、ところかな?」

「あなたがそんな器とは思えないわ」

 冗談を言いながら奥さんに突っ込まれていたあの人姿を見てそう切迫した事態とは思えなかったが……




「情報にはまず情報が集まるところに行かないと……というわけで新聞部に入ることにしたの。あなた達も一緒に入らない?」


 これは自分が忍者として与えられた初めての任務――失敗するわけにはいかない。だから、何としても成功させる。

 どんな些細な情報も集めて見せる――

 そう意気込んで新聞部に入ることにしたんだけど――


「いや、俺達一応演劇部に入ることにしたから」

「なんで!?」

「本当は、奇術部とか手品部とかがよかったんだけど、なかったからさ、近いものにしたの」

 辰羅も瑠璃も、やる気があるんだか……ないんだか……


「いや、だって能力者ってばれたら困るだろう。うちのクラスの大半の生徒が能力者だから問題ないかもしれないけれど他のクラスはそうじゃないんだろ? だったら、能力使っているとこを見られたらヤバい!」

「でも、そういう事! でも、そう言った部活に入っていれば、そう言う物だっておもってくれるでしょ?」

 ヒーローカードを繰りながら、瑠璃が言う。

「私のこれだって、予知能力を占いって言ってごまかしているんだから」

 出たカードはスカイフレイムという、マイナーヒーローのカードだった。


「ねえ、私も演劇部に入ろうと思うんだけど、あなた達と一緒にいっていいかな?」

 そんな自分たち3人に、声をかけてきた人がいた。


 ――神城――


 胸元の名札にはそういう名前の書いてある名札がある。同じクラスの人間で私達の会話に入り込めたという事は――――


「地獄耳とかそういった能力者じゃないよね。何の能力を持っているわけ?」

 ここには、幻術使いたる辰羅がいる。

 幻聴を操って他者に会話がもれないようにしているはずだし、もしもそういったものを聞き取ることのできる能力だとしても、シックス・フェイクの能力によって嘘の情報しかわからないはずだ――それを、正確に聞き取れるということは……


「ええっと、相手の持つ能力の吸収と封印――それが私の能力……一応、覚醒型、で……、あなた達は血統型でいいんだよね……」

「私は違うけどね」

 にべもなく自分はその女子生徒に答えた。

「私は星占部の翡翠瑠璃、こっちは天逆衆の辰君と、皇賀忍軍の魅咲ちゃん!」

 瑠璃が横からそう答えてしまう。

「星占部って、聖お姉さんの?」

「あれ? 聖お姉様を知っているの?」

 瑠璃がその女子生徒の手を取って答える。


 星占部で最も高名な鳳凰寺家の一人、鳳凰寺聖――その知り合い、か。


 会ったことはないが、その噂は聞いたことがある。確か、魔法少女失踪事件が初めて起こった当時……3年前には、この媛崎中学校の一年だったはずだ――


「もしかして、あなたもあの事件のことは聞いているの?」

「あ年々、魔法少女が行方不明になっているって……いう事件のこと?」

 先入観を持たせてはいけないということで、事件の詳しいあらましについては自分たちも聞かされていない――自分たちで情報集めるしかない――


 この、神城という女生徒と自分も今まだ同じ立場にいる――


 だけど自分はこのままその他大勢の生徒で終わるつもりはない。

 この魔法少女失踪事件は自分――新浪魅咲が解決して見せる!!




 これが次期皇賀忍軍の長となる新浪魅咲の最初の戦いになるはず……だった……


 首尾よく魔法少女ベル・ホワイトとロイヤルセレナに接触することができた。

 深く関わることをせず、情報だけを集める――そして、事件を解決へと導く答えを探りだす――




「ねえ、見てコレ!!」

「ワーボワールを一匹、捕まえることができたんだ!」

「どう見ても、うさぎのヌイグルミにしか見えないけどな」


 瑠璃と綾花が、最も重要な手がかりを手に入れた時、自分は大した情報を得ていなかった……

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