開店準備
いらっしゃいませ。
重厚なドアを開くと突如として、無機質な音が耳に触れた。
いつもの事ながら、この店の店主は無愛想である。
アンティーク調な家具に、照明、細部に至まで大正浪漫を思わせる。
店主の趣味かと問えば、どうやら老舗らしい。
そもそも、この職に老舗も何もあるのだろうか。
卓上に置かれた西洋ランプが揺れる。
「また君かい」
白麻のシャツに濃紺なベスト、朱色のタイを締めた店主が現になる。
この店の店主、名前は知らない。
曰く、情が移るので名前は交換しあわない主義らしい
歳の頃は20代をやっと、越えた様にも見えるし、屈託の無い口調を漏らす時は学生にも見える。
しかしとて、一度職に専念すれば、熟年された表情を浮かべる。
「本日は如何様で?私の店へ?」
黒い瞳が僕を捕らえる。
「いつもの品を見せてくれないかい?」
僅かな期待を胸に焦躁を彼にぶちまけてやる
一つため息をつき、目を通していたであろう洋書に栞を忍ばせる上質な和紙で用いられたアンティークな品だ。
やれやれと、首を傾げさせる
「私の店は見世物小屋では、ございません」
どうやら彼にとって僕は招かざれる来客のようだ。
残念ながら僕は、この店に何かを買いに来た訳ではないのだ。
と、言うよりも未だ決心が着かないが故に足しげく通っている。
店主は店の奥に一度入ると、ガラスケースに鎮座させられている商品を手に取りもどってきた。取り出したばかりの、商品は白い冷気を撒き散らせている。
私が欲しいもの、魅了してやまない
「やはり美しい」
僕は枯木を括り付けただけの、無骨な右腕でガラスケースに触れる。
慎重な扱いで、木目調のカウンターに店主はそれを取り出す。
「えぇ、こちらは掘り出し物です。右上腕にございますよ。」
そう、この店主の店は人体をパーツで小売りをしているのだ。
一昔前迄は非合法な闇取引だとか、あまり良い印象を受ける事はなかった。
しかし、そんなモラルは曾祖父の世代迄であろう。
僕の様に右腕を枯木で、補う者。眼球をビー玉で賄う者、臓器を牛や豚の臓物にする者も少なくない。
勿論通常のパーツを持って、生まれる者もいれば、
機械で構成されている者もいる。
この、ご時世人間に近い者程、良い生活が送られるのだ。
僕の右耳は申し訳程度に空洞が空いている。そこに電化屋で仕入れたイヤホンを突っ込んでいるし、右腕は肘の先からは空虚なのだ。
枯木屋で買ったワンコインの見切り品である、小枝をガムテープで三重巻きにして代用している。
同情を買わない様に告げるので、あれば僕は何等不自由は無いのだ。
僕より下層な出で立ちは幾らでも、存在する。
言ってしまうのであれば、肉塊に毛の生えただけの人間も存在するし。
店主の言葉を借りるのであれば、車のカスタムと何ら代わらないのである。
マフラーやハンドルを良質な者に変え、塗装をより好みに変える。
それを扱うのが、
この店の店主が経営する
模造店である。
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