渇いた骸骨、飲み干すは赤の葡萄酒
彼はまた栓を抜いた
瓶から溢れるとりどりの果実の香りが
たちまち色の無い部屋を彩る
彼は 一息に葡萄酒をかっ食らった
瓶から勢いよく飛び出す紫じみた赤の液体は
けれど彼の口内を満たすことはなく
とうに無くした喉を通じて
細い体躯を伝って
彼の足元に血痕を広げていく
やがて瓶の口から落ちる酒は一滴となり
それきり酒は出てこなくなった
彼はずいぶん軽くなった瓶を
深くへこんだ瞳で見つめた後
用済みとばかりに後ろに投げ捨てた
そして 彼はまた栓を抜いた
彼にまだ肉体が付いていた頃
渇ききった喉を高く香る酒で潤した
そのときの心地よさといったら!
彼はすっかり虜になり
以来かの快感を求めて酒を飲み続けた
だが 二度として彼がその潤いを得ることは無かった
しまいには物言わぬ骸骨と成り果て
いくら酒を飲んでも喉の渇きが潤わなくなった彼だが
それでも諦めきれず延々と飲み漁っている
彼は開けたばかりの瓶を手に取ると
一息に葡萄酒をかっ食らった
瞬間 手元が狂い
葡萄酒を 顔面に思い切りぶちまけた
空に向いた 落ち窪んだ眼窩から
葡萄酒が滴り落ちる
その一筋は
彼が生前流した
涙とやらによく似ていた
テーマは際限ない欲望です。
ワイン飲んでみたいです。グラス揺らしてみたいです。石原さんリスペクツしてみたいです。