一段跳び~一歩目~
なんとかこの学校、流行《ながれ》高校に入学できた。
この学校、実は魔法学校なのである。
俺、伊勢屋恵祐はとある事情があってこの学校に入学した。
・・・その事情とやらは、また今度にでも話すとしようか。
入学式当日の登校途中そんな事を思っていると、
「おーっす!!」
肩を叩かれ心臓が飛び出るかと思った。
「お、おう」と、軽く挨拶を返した。
「燃えてっかー?つーか聞いてくれよ恵祐ー。魔法学校ってどんな魔法習うんだろーなー?」
こいつは金子光樹《かねこみつき》俺と同じ中学校で一緒によく悪戯した親友である。
「魔法か。確かにどーいうの習うんだろうな」「俺は、透明になる魔法使いてーなー。そしたら悪戯し放題だぜ?」
「おめぇよくドジっから無理じゃね?」
「あんだとー!?」
そんな感じに喋っていたら二人組と遭遇した。
薮坂真紀《やぶさかまき》と水谷彩乃《みずたにあやの》だ。
二人とも学校の制服であるセーラー服を着ている。
光樹や俺と同じ中学からの友達である。
「あっれ〜?恵祐と光樹じゃん。おっはよ〜」
「伊勢屋、おはよう」
真紀は、ウェーブのかかった茶髪。髪を後ろで束ねている少し変わった髪形が特徴だ。
彩乃の髪は青っぽく、左耳には銀色のイヤリングがついている。
「うぃーっす!おめーら今日もあちーなー?」「おっす。二人とも、朝から元気そうだな」
「あんたら、元気もなにも魔法習えちゃうんだよ?!わくわくしちゃって昨日は眠れなかったな〜」
「うっわ!中二病だなおめぇ」
「うっさい!バカ!!」
ドスッ!っと右ブローが腹にメリ込み俺は、のたうちまわった。
「―――げほっ・・・!タンマ・・!」
「うっさい!!」
ドスッドスドスッ・・・
―――――ああ・・新品の制服が・・・・!
あと、チラリと真紀のスカートがめくれ、見えてしまったがそれどころではない。そのことは絶対言わないが・・・
―――この光景を見ていた光樹はなんと、俺を見捨て先に逃げていた
その後、あいだに彩乃が割り込んできて真紀の猛攻を止めてくれた。
俺は先を行く光樹にエルボーを決めたのは言うまでもない。
俺たちでは日常茶飯事ある。
ダダダッと、俺たちは学校へと続く道を走っていた。
…遅刻寸前ってやつだ。
「―――遅刻しちまうよ〜!!」
「光樹が殴り返してきたからだろッ!」
「いきなりラリアットされたら殴り返すだろフツーはっ!!」
「――――どーでもいーけど、あんたらのせいで初日から遅刻したら極刑だかんねッ!!!」
やっべーよ!いきなり遅刻とか洒落になんねーぞッ!
校門が見えてきた。
『入学式』の看板が見えてきたところで、スーツ姿の男が仁王立ちしていた。
先生だろうか……190はありそうでガッチリした体格がスーツの上からでも分かる。
――しかし、奇妙ななりをしている。男の顔、首から上が綿あめになっているのだ。「急げ坊主どもー!!」
ぱたぱた校門を過ぎた時、痺れを切らしたのか綿あめ男が頭の棒を引き抜きながらこう言った。
「急げっ!!って言ってんだろぉーが!!!」
綿が伸び、大きなバットのようになって、そのままフルスイングした。
俺らを掬い上げる感じにキントーウンみたいな綿に全員乗せられギュオッと高速移動―――
ビゥゥゥゥウン!!!
というが一番わかりやすいかもしれない。
みんな顔が引き攣っていたが、俺は別の感想を抱いていた。
―これが魔法ってやつか!マジ、
すっげぇぇぇぇうぇぉおう!!?
―――急停止
その反動で投げ出されたが怪我らしい怪我は誰一人していなかった。「―――かっけ〜!燃える〜」
「ちょーびっくりしたわ〜」
あれだけ飛ばされたにも係わらず意外にも、みんな無傷だった。
余り時間がないと気づいて、光樹や真紀が急いでいる
俺もさっさと降りねーとなっ、と考えていたが
不意に、「………伊勢屋」
と、下から声が聞こえる。
―――?なんだ?と声が聞こえたほうを見ると、
セーラー服に指が引っ掛かり、上のほうまでめくれ上がっている光景―――
馬乗り状態でした。
しかも、彩乃のぷにっとしてそうなおへそが見えてしまっている。
彩乃はかぁーっと顔が赤くなって俺を睨んでいた。
「え、あ――――!!?」声を出す前に、視界がスライドした。
「朝っぱらからこんなんだと死刑もんだなぁ〜!!」
「あ、ああああんた…朝から何やってんのよ!極刑だかんね!!」
真紀と光樹に殴られたという事に気づくのに数秒必要だった。
真紀は彩乃を起こしつつ顔を赤くしていた。
…痛ってー、容赦ねぇな。不可抗力だろこれ!!
しかし、俺がとにかく、何を言っても無駄なので素直に謝るしか選択肢はない。
「あ、あやの!悪かった!俺が悪かったー!!」
ザッ、と
土下座モードに入ったが
「・・・・」
彩乃がジト〜〜〜っと、睨んでいた。
―――こーいう視線ニガテなんだよ!
なんとかしようと脳内辞典で検索した結果で出した言葉は
「――な、なぁ、俺が奢るからさ今度もんじゃ食いに行こうぜ!」
とは言ったものの
んなもんじゃ無理に決まってんだろーがっ!
一人ツッコミをかましていたが
「べつに………ぃぃょ」
と、予想外だったので何か恐ろしい事をやらされるのではないか冷や汗だらだらだったよ。
そのあとは、まぁ、許しを得たあとはちゃんと式に出れたよ――二人からパンチもらって・・・
始業式にはなんとか間に合って、校長の長い長いはなしが終わり、恵介や真紀らは自分達のクラスを確認していた。
下駄箱前にはガラス製の分厚い扉があるのだが、そこに各クラス分けの用紙が貼ってあった。
フツーは入学式が始まる前に確認しておくものなのだが、
恵介らは遅刻しそうだったのと、綿あめ頭の男に強制移動させられた為そんな余裕はなかった。
「みんな同じクラスなんだな。」
「どーした恵祐?俺らとじゃ不満だったのか?」
と、問いてきたので
「いや、またこのメンツでやってけるのが嬉しいっつーかなんつーかよく分からん。」
苦笑しつつ
「なんじゃそりゃ。」
と光樹は言っていた
その後、自分達のクラス、5階にある教室に行きHRが始まった。
担任はまたスゲーやつだったよ。なんたって
「あー俺が、このクラスの担任の宇佐見だ。
特に話すことはないが、そうだな〜まぁ強いて言うなら…退学しないようにガンバレや。
以上、今日のHRは終わりだ。
…あぁ、明日から魔術学校らしく基本的な知識から学ぶっつー事だけ頭にいれとけな。はい解散」
(適当だな…)
っていう感想がベストな第一印象をもつこのクラスの担任の宇佐見先生。
外見を説明すると、オールバックにサングラスをかけていて、ゴルフをする時のような格好でポロシャツの胸の部分には「卯」の文字が印刷されていた。
…とまあ説明した訳だが、この学校は変わった教員が多いの?大丈夫?
なんて入学早々不安になってきた。
「昼食いに行こうぜ恵祐ー!」
俺はそんな不安をごみ箱に詰め込んで光樹や真紀らと昼飯を食いに行った。
「――今日はあたしの奢りだから食ってけ食ってけ」
「「いただきます!」」
この気前が良い人は赤松 紅《あかまつ―くれない》(通称べっさん)さんである。
べっさんは、真紀のいとこにあたり居酒屋を営んでいる。(あまり人が来ないが)
2階は住居になっており、居酒屋兼住宅になっている。
真紀はそこに住んでいて、俺は真紀ん家に下宿させてもらっている。
実は、下宿先のべっさんは魔術学校出身の魔術師であり恵祐や真紀、光樹や彩乃も知っている
本人も隠す気はなく、自ら制作した術などの書物が家で散らばってたりしていることもあった
魔術自体は出回っていないが容認されている世界である
それでもまだ人数は少ないが、、、
(べっさんのはほとんど書きなぐり状態のもので読めないし読む気にもならないし)つまり三人暮らしなのである。その夜、はしゃぎ疲れてしまった俺は、軽くシャワーを浴びてベットにねっころがっている。
入学するにあたって3月頃に引っ越してきたということだ。
まあ実家からでも通えるっちゃ通えるが遠いし、前からべっさんに「部屋余ってるし来い来い」と勧誘されていたのでお言葉に甘えさせてもらった。
同じ屋根の下やはりお店の手伝いをするわけだが、手伝いをした当初は分からない事ばかりで困っていた俺を真紀が色々教えてくれてた。
実はあまり言っていないが真紀には感謝している。
べっさんにも感謝しているし退学なんてことにならないようにしないとな
「がんばるぞー!!」そんな決意とともに夜は更けていった。
――朝方――
!!
ガバッと起き上がるとそこはベットの上、ではなくそこからずり落ちた床の上だった。
誰かにずっと呼ばれ続ける夢。でも、俺は何もできず動けなかった夢だった。
……なんだ今の夢は。目覚めが悪いとはこの事を言うのか?
よく分からない感想に浸っていた俺は時計を確認。「5時半か…まだ早ぇな」また寝る気にもなれないので、朝支度をさっさと済ませてしまうことにする。
「昔の魔術は呪文が長く、解読も大変だったんだが現代の魔術には詠昌なんてもんは必要ねぇ。全員に配布されてるこの指輪に呪文をインプットするだけだ。」
……今説明されているのは現代的な魔術の仕組みらしい。今日は魔術を実際にやってみよー的な感じである。
「このリングはマジックリングと言って、インプットされた呪文を記録でき、リング内で解読し圧縮変換してくれる。まぁ魔術用の変わったUSBと思えばいい。インプットされた呪文は簡単に消去可能だ。ランクによって容量が違い、ランクはF、E、D、C、B、A、Sと上がっていき、ランクが高いほど扱える呪文のデータ量が増える。全員に配布されたリングは一番ランクが下のFランクだからあまり長い呪文のものや効果が高いもの、魔術によって容量は変わるが簡単なもので三つ入ればいいほうだな。
そして入力方法はリングをバーコードみたいに呪文の上をなぞるだけだ。
あとは勝手に変換してくれ、一言でバーンって感じだ。」
……要約するとこのリングに魔術が入っちゃうスゲーってことなんだろ?
ここでスッと彩乃が手を挙げた。
「ランクは成績やテストによって上がるんでしょうか」
「……そうだな、ランクアップするためにはMポイントが必要でな、年5回行われる魔術テストがある。そして年3回リングのランクアップするチャンスが貰える。Mポイントは授業点やテスト点などで増減する。つまり、サボったり馬鹿やっているとポイントは貯まらないと言う訳だ。そんな訳でなんでもいいからインプットしてみろ。
それがこの時間の課題だ。
自分にあった術をみつけるのも大切だ。
ちなみに、人によって練られる魔力は違うから性質や効果が変わり、向き不向きがある。
そこらへんの話も理解してやってくれ。」
そして各々どんな魔術にするか選び始めた。
そんな中、恵祐はちゃちゃっとスキャンした光樹とだべっていた
「はー、決まんねぇなあ。」
「恵祐、まだ決めてねぇのかよ」
「んなの決まるわけないだろ。逆にすぐ決められたお前がすごいよ。」
「そうか?みんな少なからず決めてるっぽいぜ?趣味や得意なものから合ってるやつチョイスするだけだからな。」
「そんなもんかねぇ。」
そう言って一冊の魔術書を手にとり開いてみる
A4サイズくらいで厚みが5センチくらいのものだ
表紙には『操作系基礎』と書いてあった
半分くらいは知識がたくさん書いてあり、後半には呪文が記載されていた
『針を刺した対象物を操る』ものや『印しを付けた物を直線的に操作する』ものなどがあった
「あんまりグッてくるものがないな」
「なんでもいいから入れとけよ。この時間だけのやつ。いつでも消したり入れたり出来るんだからさ。」
「そうだな。そうすっか〜ってな〜んか、こういう文字見たことあるような気がする。」
そこでハタと、気がつき財布にしまってある一切れの紙を取り出した
その紙には、一言なにかが書いてあった
魔術書に書いてあった字と紙に書いてある字が似ていることに気がついたのである
「どこで手に入れたんだよ、それ。」
「いやちょっとな。」
ものは試しという訳でさっそくスキャンしてみると、ピーという音とともにスキャン完了という表示が浮かび上がった