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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
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歯のない絵本

作者: 風風風虱
掲載日:2026/08/07

「ママァ、ママァ〜」


  かおりちゃんがお母さんを呼んでいます。


「 はい、はい。なぁに」


  お母さんは、やれやれ、さっきまでおとなしくリビングで絵本を読んでいたのに、 と思いました。

 鍋の火を止め、手をタオルで拭きながらリビングへ向かいます。

 かおりちゃんは、えんえんと泣いていました。


  新しく買った絵本が気に入らなかったのかしら、と思いました。


「あらあら、いったい、どうしたというの?」


  お母さんが聞くと、かおりちゃんは言いました。


「わたし、この絵本、嫌い。嫌い。大嫌い」


 やっぱり、絵本が気に入らないようだ、とお母さんは思いました。


「まあ、まあ。その絵本のなにがそんなに気に入らないの?」

「わたし、歯のついた絵本なんて要らない!」


  お母さんは、思わず笑いそうになりました。


「歯なんて……絵のまちがいでしょう?

なにか怖い絵でもあったのかしら?」

「ちがうわ」


 そう言いながら、かおりちゃんは両手をお母さんの目の前に差し出しました。

 お母さんは、ぎょっと目を見張りました。

 かおりちゃんの両手は、手首から先がありませんでした。


「……かおり、手をどうしたの」


 お母さんは声を上げました。

 

「絵本がわたしを噛んだの」


 お母さんは絵本へ目を向けました。

 開かれた絵本には、きれいな花がページいっぱいに描かれていました。

 そして、その絵の真ん中に、小さく可愛らしい二つの手が、ちょこんと置かれているのでした。

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― 新着の感想 ―
うわー、日常的な風景と異質な絵本とのギャップがすごかったです。まさかそうくるとは、驚きました! 面白かったです!
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