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第24章 自分の居場所

挿絵(By みてみん)


日曜日の朝日が、錆びついた防虫網の隙間から差し込んでいた。


光に照らされた無数の埃が、まるで私の不運を嘲笑うかのように空中で踊っている。


私は奥にある部屋の入り口に立っていた。


いや、部屋というよりは、無理やり居住スペースに仕立て上げた物置と言ったほうが正しい。


広さはせいぜい四畳半ほど。


窓はなく、湿気で剥がれかけた壁紙の隙間から、どす黒いコンクリートの肌が覗いている。


床はサスキアの持ち物である靴の空き箱や古いスーツケース、正体不明のガラクタで埋め尽くされていた。


「これぞインダストリアル・ラスティックよ、エララ。今、ジャカルタのお洒落なカフェで流行ってるスタイルなんだから」


背後でサスキアがニヤニヤしながら、もっともらしい嘘をついた。


私は無表情で彼女を振り返る。


「これはただのゴミ屋敷っていうのよ、キア」


サスキアはケラケラと笑い飛ばすと、足元にあったインスタントラーメンの空き箱を隅へ蹴り飛ばした。


「ごめんって。独身女の一人暮らしなんてこんなもんよ。この部屋はね、『捨てるのは惜しいけど一生使わないもの』専用の聖域だったんだから」


私は溜息をつき、尖ったものを踏まないよう慎重に中へ足を踏み入れた。


古い埃とカビの混じった匂いが鼻を突く。


かつての私の部屋に漂っていた高級なアロマの香りとは、天と地ほどの差がある。


けれど不思議と、悲しくはなかった。


規律と監視に縛られたブラウィジャヤの屋敷に比べれば、この狭い空間のほうがずっと呼吸がしやすい。


「今夜、埃で息が詰まる前に、まずはここを片付けないとね」


私は袖を捲り上げ、居間に置いていた仕事鞄から白い封筒を取り出した。


昨夜、ディオから受け取ったものだ。


「でもその前に、軍資金が必要だわ」


サスキアがその封筒に目を留めた。


厚みを見た瞬間、彼女は目を丸くした。


「それ……ディオさんから?」


私は頷いた。


「四百万ルピア。全額現金よ。ライラの家庭教師代、一ヶ月分を前払いでくれたの」


サスキアはあんぐりと口を開けた。


彼女は恭しく封筒を受け取ると、中身を覗き込み、感嘆の声を漏らした。


「信じられない……」


「小学二年生に読み書きを教えて、一緒に遊ぶだけで四百万?エララ、ちょっと聞いてみてよ。追加の講師は募集してないかって。ライラちゃんにオンラインショッピングのコツとか、服のコーディネートとか教えるから。私の車のローン、マジでやばいのよ」


私は思わず吹き出した。


「今度聞いておくわ。ライラのクマのぬいぐるみのファッションアドバイザーが必要かもしれないしね」


サスキアは首を振りながら封筒を返してきた。


「決まりね。あの人、ただ者じゃないわ。普通の金持ちはもっとケチよ。これはもう、慈悲深さが桁違いね」


私は微笑み、封筒を鞄にしまった。


この金は、今の私にとっての命綱だ。


「さあ、動くわよ。ここが片付いたら、表の鶏粥を奢ってあげる」


「了解、ボス!」


• • •


二時間後。


ハックション!


十回目のくしゃみが出た。


不織布のマスクは、すでに汗と埃で湿っている。


私たちは、ようやく床が見え始めた部屋の中央で胡坐をかいていた。


サスキアのガラクタの山は、「捨てる」「残す」「寄付する」の三つの山に仕分けられている。


サスキアが、埃まみれの真っ赤なハイヒールを掲げた。


十二センチはあろうかという、凶器のようなピンヒールだ。


「見てよこれ、エララ。二〇一九年のセールで買ったんだけど、五分履いただけで小指がもげそうになったの。でも、限定品だから捨てるのはもったいないでしょ?」


私はその靴をひったくり、「寄付・売却」の箱へ放り込んだ。


「執着を捨てなさい、キア。もっと足を労わってあげなさい」


「でも、これ高かったのよ!」


「高くても履けないならただの置物よ。箱に入れて」


サスキアは不満げに唇を尖らせたが、渋々従った。


「はいはい。家庭教師になると厳しくなるんだから」


ようやく、部屋が空になった。


壁を拭き、床は三回も雑巾がけをした。


相変わらず壁紙はボロボロだが、少なくとも人が住める状態にはなった。


問題はあと一つ。寝具がないことだ。


私は冷たい床に座り込み、手の甲で額の汗を拭った。


スマートフォンを取り出し、通販アプリを開く。


検索欄に「格安 折りたたみマットレス」と打ち込む。


ずらりと並んだ検索結果を、慎重に精査する。


かつての私はブランド名しか見ていなかった。


けれど今は、一万ルピアの差が死活問題だ。


選んだのは、厚さ十センチの四つ折りマットレス。


青地に真っ赤なバラが描かれた、なんとも野暮ったいデザインだ。


価格は四十万ルピア。即日配送のオプションがある。


私は購入ボタンを押した。


銀行口座が凍結されているため、支払いは近くのコンビニでの現金払いを選択した。


「何買ったの?」


サスキアが背後から覗き込んできた。


「マットレスよ。四十万ルピア」


サスキアは画面を見つめた後、優しい眼差しを私に向けた。


「足りるの、エララ? もし足りないなら私のを貸すわよ。あんまり薄いのだと腰を痛めるわ」


「大丈夫よ。これでも五年間の品質保証がついてるんだから」


私は笑って彼女を安心させた。


「それに、今は高級なベッドなんていらない。私が、私の力で手に入れた居場所が欲しいだけだから」


私は立ち上がり、ディオの封筒から赤い紙幣を一枚抜き取った。


「コンビニに行ってくるわ。支払いを済ませないと」


家を出る足取りは軽かった。


これは、自立した女性としての初めての買い物だ。


父のクレジットカードも、母のコネも関係ない。


私自身が働いて得た、誇りある報酬だ。


• • •


昼過ぎ、バイクの配達員が大きな包みを抱えてやってきた。


ビニールを剥がすと、マットレスが勢いよく膨らんだ。


派手なバラの模様が目に飛び込んでくる。


量産品特有の、安っぽい手触り。


けれど、それを床に広げた瞬間、まるで王宮の絨毯を見ているかのような高揚感に包まれた。


私はその上に身を投げ出した。


フワッ


ウレタンは柔らかすぎて、背中に床の硬さを感じる。


ブラウィジャヤにある、体を包み込むようなキングコイルのベッドとは比較にならない。


私は染みのついた天井を見つめた。


「これが、私のベッド……」


ぽつりと呟いた言葉が、胸の奥に深く沈んでいく。


自然と口角が上がった。


四十万ルピアの、世界で一番心地よいベッドだ。


• • •


夕刻。


太陽がオレンジ色に染まり、居間に控えめな光を投げかけていた。


掃除の疲れを洗い流すようにシャワーを浴び、濡れた髪を拭いていると、テーブルの上のスマートフォンが激しく震えた。


画面には、ディオ・アトマンタの名前とビデオ通話のアイコンが表示されている。


心臓がわずかに跳ねた。


指先で髪を整え、緑色のボタンをスライドさせる。


「もしもし?」


画面いっぱいに、ライラの丸い顔が現れた。


病み上がりで頬は少し赤いものの、瞳は生き生きと輝いている。


「せんせーい!」


甲高い声がスピーカーから弾けた。


私は笑い、カメラに顔を近づける。


「ハロー、ライラ。元気そうね? もう熱は下がったのかしら」


ライラは勢いよく頷き、前髪を揺らした。


「うん! お薬いっぱい飲んだから強くなったの! 先生、こっちに来て……パパと人形遊びしても全然面白くないんだもん」


背景から、ディオの抗議する声が聞こえてきた。


「おい、パパなりに努力しただろ。クマの声も低くして演出したじゃないか」


ライラは振り返り、唇を尖らせた。


「でもパパ、ボボにサンバルを食べさせようとしたでしょ! ボボはハチミツが好きなんだよ!」


私は思わず吹き出した。


「お父さんは少し変わっているのね、ライラ。クマに激辛調味料をあげるなんて」


画面が大きく揺れ、持ち主が変わった。


ライラの顔が消え、代わりにディオの顔が映し出される。


白いTシャツ姿の彼は、どこかライラックスした様子だった。


目の下にはわずかに疲労の影があるが、カメラを見つめる眼差しは温かい。


「日曜の午後に邪魔をしてすまない、エララ」


彼の低く心地よい声が響く。


「ちびっこボスが君を要求してきかないんだ。パパの読み聞かせは株主総会の報告書みたいに硬くてつまらない、だそうだ」


私は微笑んだ。


「邪魔なんてしてないわ。ちょうど落ち着いたところだから」


「今から迎えに行ってもいいか?」


単刀直入だった。


迷いも、遠慮もない。


「えっ?」


私は壁の時計に目をやった。午後四時。


「わざわざ悪いわ、ディオ。バイクタクシーで行けるし、サスキアに送ってもらっても……」


「拒否は認めない」


ディオが優しく、けれど断定的に言葉を遮った。


「引っ越し直後で疲れているだろう。そこで待っていてくれ。二十分で着く」


こちらの返事を待たずに、通話は切れた。


私は暗転した画面を見つめたまま、呆然と立ち尽くした。


「おやおや……」


台所の方から、長く尾を引くような声が聞こえた。


サスキアがグラスを手に、ニヤニヤしながら近づいてくる。


その目は、好奇心で爛々と輝いていた。


「ちょっと待って、今の聞き捨てならないわね……」


サスキアは指を立てて、私に詰め寄った。


「今、あの人あなたのこと『エララ』って呼んだ? あなたも『ディオ』って呼んだわよね? 先生とかパパとか、そういう肩書きはどこへ行ったのかしら?」


顔が火照るのを感じた。


「い、いいじゃない。ライラの前で親しみやすいようにって決めたのよ」


サスキアは目を細め、さらに怪しげな笑みを浮かべた。


「エララ……」


彼女はおどろおどろしく囁いた。


「あの四百万ルピアの前払い……名前呼び捨て……そして送り迎え……」


彼女は芝居がかって口を押さえた。


「まさか、身を売ったんじゃないでしょうね!?」


私は目を見開いた。


無意識に、ソファの上にあったクッションを掴んでいた。


ボフッ!


クッションはサスキアの顔面にクリーンヒットした。


「サスキア! その口を閉じなさい!」


顔が茹でダコのように赤くなる。


「そんなんじゃないわよ! あなた、変な小説の読みすぎよ!」


サスキアはクッションを抱えたまま、腹を抱えて笑い転げた。


「だっておかしいでしょ! 進展が早すぎるのよ! 昨日は『私・あなた』だったのに、今日はもう呼び捨て? 明日は何? パパ、ママって呼び合うわけ?」


「うるさい! 準備してくるわ!」


私はサスキアの笑い声を背に、逃げるように自分の部屋へ駆け込んだ。


心臓の鼓動が激しい。


恥ずかしさのせいか、それとも……期待のせいか。


• • •


二十分後。


私はサスキアの部屋の鏡の前で、自分の姿をチェックしていた。


ベージュのワイドパンツに、シンプルなネイビーのブラウス。


髪は下ろしたまま、左側だけをクリップで留めた。


派手なジュエリーも、ブランド物のバッグもない。


「ヒューヒュー、ベビーシッターを口実にしたデートね」


ドアにもたれかかったサスキアが茶化してきた。


「仕事よ、キア。仕事」


私は安物のショルダーバッグを肩にかけ、言い聞かせるように答えた。


サスキアは肩をすくめた。


「はいはい、仕事仕事。あ、そうそう、『イケメン荷運び人』によろしくね。お礼はあのカフェの高級なクロワッサンがいいって伝えておいて」


「現金なやつね。伝えておくわ」


表の通りから、控えめなクラクションの音が聞こえた。


「白馬の王子様が、軽自動車でお出ましよ!」


私は苦笑しながら、外へ出た。


門の前には、白い小型車が停まっていた。


ディオは助手席のドアを開けて立っていた。


お抱え運転手のような仕草だが、漂うオーラは隠しきれないほど気品に満ちている。


今日の彼はチェックのネルシャツの袖を捲り、濃い色のジーンズを履いていた。


「準備はいいか?」


彼は柔らかく微笑んだ。


「ええ」


私は車に乗り込んだ。


ディオが運転席に回り、シートベルトを締めようとしたとき、ふと私の手に視線が止まった。


つられて自分の手を見る。


手の甲は乾燥し、段ボールを運んだ際についた小さな赤い擦り傷がいくつかあった。


手入れの行き届いていたはずの肌が、今は荒れている。


ディオはエンジンをかけなかった。


ダッシュボードの小物入れから、除菌シートのパックを取り出す。


一枚引き抜くと、彼はごく自然な動作で私の手を包み込んだ。


「えっ?」


驚いて手を引こうとしたが、ディオの握りは優しく、けれど拒絶を許さない強さがあった。


彼は除菌シートで、私の手の甲を丁寧に拭い始めた。


シャワーで落としきれなかった微細な埃を、慈しむように取り除いていく。


シートは冷たいはずなのに、触れられた場所から熱が広がっていく。


「工事現場にでも行っていたのか?」


彼は手元に集中したまま、静かに尋ねた。


私は唾を飲み込み、至近距離にある彼の横顔を見つめた。


睫毛が驚くほど長い。


「物置を片付けたの。埃がすごくて」


ディオは両手を拭き終えると、一瞬だけ私を見た。


そこには同情の色があったが、彼はそれをかすかな微笑みで覆い隠した。


「カフェに着いたら、洗面台にあるハンドクリームを使ってくれ。傷にならないように」


彼は私の手を放した。


「よし、行こう。ちびっこボスが首を長くして待っている」


車は夕暮れの街を走り出した。


私は除菌シートの冷たさが残る手の甲をそっと撫でた。


不思議と、そこだけがまだ、熱を帯びているような気がした。


• • •


カフェ・アークス、二階。


「せんせーい!」


部屋に入るなり、ライラが私の腰に抱きついてきた。


「ハロー、プリンセス!」


私は彼女を抱きしめ、イチゴのシャンプーの香りがする頭にキスをした。


「もうお熱はないみたいね?」


「うん! 私、強いんだもん!」


ライラは得意げに、小さな腕の筋肉を見せつけてきた。


その後の時間は、あっという間に過ぎていった。


私は居間のカーペットに座り、ライラに「白雪姫」の絵本を読み聞かせた。


少女は私の肩に寄り添い、真剣な表情で物語に聞き入っている。


その間、ディオはキッチンと居間を行き来していた。


時折、下のカフェの様子を見に降りては、お菓子や飲み物を持って戻ってくる。


けれど、彼がこの部屋にいるときは、決まって隅にある本棚の近くの椅子に座っていた。


手にはスマートフォンやタブレットを持ち、忙しそうに画面を眺めている。


けれど、彼が実際には何も読んでいないことに、私は気づいていた。


視線の端で、彼がこちらを見ているのがわかる。


ライラが私の魔女の真似に声を上げて笑うたび、ディオはタブレットをわずかに下げた。


その瞳は、深い慈しみを湛えて私たちを見守っている。


そして私が彼を振り返ると、彼は慌ててタブレットを上げ、咳払いをしたりコーヒーを飲んだりして誤魔化すのだ。


彼は私たちを観察していた。


疑っているのではなく、この家に長い間欠けていた、失われた光景を惜しむかのように。


そして正直に言えば……私はその視線が嫌いではなかった。


• • •


夕食の時間になった。


私たちは三人で円卓を囲んだ。


メニューは鶏肉のバター醤油炒めにチャプチャイ、炊きたての白いご飯。


ビ・ヤニの料理は、相変わらず絶品だった。


私は夢中で食べた。


一日中掃除をして、朝からパン一枚しか口にしていなかった体には、この温かい食事が染み渡る。


母と一緒にいた頃は体型を気にして控えていたお代わりまで、今日は自然と手が伸びた。


「口に合うか、エララ?」


私の皿が空いていくのを見て、ディオが尋ねた。


「すごく美味しいわ。死ぬほどお腹が空いていたみたい」


私は頬張ったまま、正直に答えた。


ディオは目を細めて笑った。


彼は自分の皿を見た。そこにはまだ手をつけていない鶏のもも肉が一枚残っている。


そして、おかずがなくなった私の皿を見た。


何も言わず、ディオはフォークでその肉を刺すと、私の皿へと移した。


私は目を丸くした。


「えっ? どうして私に? あなたは食べないの?」


ディオは平然と野菜を口に運んだ。


「コレステロールを気にしてるんだ」


彼は事もなげに言った。


「中年男が脂っこいものばかり食べるのは良くないからな」


私は疑わしげに彼を見た。


引き締まった体躯、健康そうな肌。余分な脂肪などどこにも見当たらない。


「これほど鍛えていて、コレステロール制限?」


ディオは少し決まり悪そうに苦笑した。


「老後のための投資だ。ライラの結婚式まで元気でいたいからな。食べてくれ、エララ。残すのはもったいない」


嘘だとわかった。


彼はただ、私に腹一杯食べてほしかったのだ。


「……ありがとう、ディオ」


私は小さく呟いた。


その肉は、これまでのどんな高級料理よりも、千倍も美味しく感じられた。


• • •


夜八時。


帰宅の時間だ。ライラはすでに欠伸を連発し、眠気で目が潤んでいる。


「明日も、また来てくれる?」


玄関先で、私の足にしがみついてライラが聞いた。


「もちろんよ。私はここで働いているんだもの」


私が答えると、ライラは満足げに頷いた。


ディオは車のキーを手に準備を整えていた。


左手には、アルシロン・コーヒーのロゴが入った大きな紙袋を提げている。


「それは何?」


車に乗り込む際、彼がその袋を差し出してきたので尋ねた。


「サスキアさんへの差し入れだ」


ディオは私のためにドアを開けながら答えた。


中を覗くと、驚いた。


二箱分のクロワッサンにパン・オ・ショコラ、シナモンロールまで入っている。


バターの芳醇な香りが鼻をくすぐった。


「こんなにたくさん? 彼女、一つでいいって言ってたのに」


ディオはエンジンをかけた。


彼は私を振り返り、薄暗い車内灯の下で不敵な笑みを浮かべた。


「休日に君を独占したことへの、口封じの賄賂だよ」


私はその紙袋を抱きしめた。


袋の温かさが、胸の奥まで伝わってくる。


この人は、すべてを見通している。


私の空腹も、私の疲れも、そして私の大切な友人のことまで。


すべてを失い、どん底に落ちたはずなのに。


私は隣で真剣にハンドルを握るディオの横顔を見つめた。


本当の豊かさとは何なのか。


それを、私は今、ようやく見つけ始めたのかもしれない。

ご一読ありがとうございました。皆様の応援のおかげで、ここまで書き進めることができました。未熟な点も多いですが、これからも心を込めて物語を紡いでいきたいと思います。本当にありがとうございました。

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