エピローグ
次の手術に向け、主治医は衝撃の事実を私に告げた。
「まれに味覚神経の走行が違う人がいて、あなたも結構変な走行してたんですが、
この関係で意図せず切れてしまう事はあります」
いやまじで??!!
味覚神経が切れる事がある事よりも私の味覚神経の走行が人と違うことにびっくりなんですけど!
二週間後だ。次で長い長い闘病生活が終わる。
私は上機嫌に陽直に言った。
「なあ、髪だいぶ伸びたやろ」
一緒に歩んできて、絶対に同じ気持ちだと思っていたのだ。だというのに。
「んん?でもまたすぐ剃るやろ?」
彼はこちらを向く事もなく携帯ゲームをしながら言い捨てた。
え、ちょ。無神経か!!
良かったねとか言えなかったのか!
私はかねてより計画していた事を告げる。
「……どうせ剃られるから次はツーブロックにするわ」
「え?」
陽直は弾かれたように顔を上げた。
「冗談抜きでやるから。」
病気だから剃られるとか思いたくないし、術後に帽子とかかぶって隠すのもなんだかな。
美容院から帰った私に陽直は一言。
「……あんまり落ち込むなよ」
「嘘でも褒めろや」
私達は顔を見合わせて笑う。
「な。飯、いこ。次どんな味覚になるか分からんからな。今の味しっかり覚えとかな」
「そやね。私、カレーがええわ」
私は「痛み」という武器を失くした代わりに、
世界で一番美味しくて、それでいてちょっとだけ個性的な『普通』を手に入れた。




