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第15話 神々の世界

 ――意識が落ちていく。


 体があるのかないのかも分からない。

 さっきまで雨の中にいたはずなのに、

 冷たさも痛みも、何も感じない。


 ただ、

 遠くで雷の音だけが響いていた。


 ゴロ……ゴロゴロ……


 暗闇の中で、その音だけが近づいてくる。


(……ここ、どこ……?)


 意識がぼんやりと浮かび上がった瞬間――

 視界が一気に開けた。




 僕は、雲の上に立っていた。


 紫色に光り、

 ところどころから雷がほとばしっている。


 空はどこまでも暗く、

 でも夜空とは違う。

 光が渦巻き、

 雷が縦横無尽に走っている。


 風はないのに、

 空気が肌を刺すようにピリピリしていた。


(……僕、死んだのかな……?)


 そう思った瞬間――


「ヒロ!!」


 僕の胸からヒューイが飛び出してきた!


「ヒューイ……!?」


 びっくりしていると、

 ヒューイが僕の肩に飛びついてきた。


「なにがあった!なんでこんなとこ来てんだよ!」


「え、えっと……ピカって光って気づいたら……」


「ここは俺たちが来るべき場所じゃねぇぞ……!」


 ヒューイの羽が震えている。

 普段の軽口とは違う、

 本気の焦りが伝わってきた。



 そのときだった。


 さらに上空の紫の雲が裂け、

 そこから巨大な“影”がゆっくりと降りてくる。


 人の型をしている。

 でも、人じゃない。


 雷を纏い、

 その存在だけで空気が震えていた。


 僕は息ができなくなった。


(……こわい……)


 影が僕たちの前に降り立つと、

 雷鳴のような声が響いた。



「奇妙な力をもつ人の子よ」


 声だけで、

 胸が押しつぶされそうだった。


「我は雷を司る神だ

 古来より、汝ら人に恵みと発展をもたらしてきた者なり」


 雷が足元を走り、

 雲が震える。


「ゆえに――

 汝は我らのために、その力を使え」


 命令だった。

 そこに優しさも、選択肢もない。


 ただ、

 “従え”という圧だけがあった。



「はぁ!? 何言ってんだテメェ!」


 ヒューイが前に飛び出した。


「神ごときが偉そうに言ってんじゃねぇよ!

 お前ら神はいつもそうだ。

 下界を見下して、利用して、

 自分の都合で動かそうとする!」


 雷がヒューイの足元に落ち、

 雲が弾けた。


 でもヒューイは怯まない。


「真に人に寄り添ってきたのは、

 俺たち精霊のほうだ!」


 僕も前に出た。


「僕の魔法は……僕のために使う。

 僕が守りたい人のために使う。

 神様のためじゃない!」


 声は震えていたけど、

 気持ちははっきりしていた。



「……身の程をわきまえよ」


 雷神の声が低く響いた。


「人の子が……精霊ごときが……

 我らに逆らうか」


 空が一斉に光り、

 雷が八方向から走った。


「虫けら風情が!!」


 雷撃が僕たちに向かって落ちてくる。



「ヒロ!! 逃げるぞ!!」


 ヒューイが僕の腕を掴んだ。


 次の瞬間、 高速で雲を突き抜け視界がおいつかない。


 雷が迫る。

 空が裂ける。

 雷神の怒号が響く。


 ヒューイが叫んだ。


「精神世界を通って元の世界に戻るぞ!

俺を召喚するときみたいに自分を召喚するイメージを持て!」


 僕はヒューイの手を握りしめた。


 光が弾け、

 世界が反転し――





「ヒロ!! ヒロ!!」


 誰かの声が聞こえる。

 

 ケホッケホッ


 まぶたを開けると、

 お父さんが僕を抱きかかえていた。


「大丈夫か!? しっかりしろ!」


「……ごめん……

 神様……怒らせちゃったみたい……」


 そう言った瞬間――


 空が轟いた。


 雨は嵐に変わり、

 風が木々をなぎ倒す勢いで吹き荒れる。


 そして――


 ドォォォォン!!!


 巨大な雷が、

 祠の前に落ちた。


 その雷の中から、

 “何か”がゆっくりと姿を現す。


 依代に宿った雷神が――

 地上に降臨した。

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