第10話 兄の帰省と、空を駆ける風
冬休み。
久しぶりに、お兄ちゃんが帰ってきた。
「カイト、おかえり! 学校どうだった?」
「友達できた? 授業は難しい?」
「寮はどう?」
お父さんとお母さんは質問攻めにしていたけれど、
お兄ちゃんはずっとそわそわしていた。
僕の方をちらちら見ている。
「……ヒロ。召喚魔法、見せてくれない?」
やっぱりそれが気になってしょうがなかったらしい。
僕たちは庭に出た。
「じゃあいくよ、お兄ちゃん!」
僕は手を前に出し、深呼吸した。
「来て、風の精霊――ヒューイ!」
風が巻き起こり、
小さな竜巻の中心からヒューイが現れた。
「よっ、兄ちゃん! 俺がヒューイだ!」
「うわっ……本当に出た……!
ヒロ、すげぇ……!」
お兄ちゃんは目を丸くしていた。
「ヒロ、風魔法も使えるんだろ? ちょっと見せてよ!」
「うん! いいよ!」
ヒューイが肩に乗ると、
僕の体の中に風が流れ込むような感覚がした。
「こう!」
ふわっ――
僕の手の前に、強い風の渦が生まれた。
「おぅ……ヒロ、詠唱してないってことは俺と同じように感覚でやってるのか!?」
「うん、ヒューイに教えてもらってイメージしてなんとなく……?」
「まぁ俺がいないと使えないけどなぁ」
「ヒューイ! 言わなくていいのに!」
僕はぷすっとした。
お兄ちゃんは笑いながらも、
どこか悔しそうに僕の風の渦を見つめていた。
「兄ちゃんの風魔法も見せて!」
「おう、任せろ!」
お兄ちゃんは手を前に出し、
詠唱もせずに風を巻き起こし、庭の木の枝を落とした。
ヒューイが感心したようにうなった。
「人間のくせに……やるじゃねぇか。
お前、センスあるな」
「だろ?」
お兄ちゃんは得意げだった。
「よし、兄ちゃん。
お前には特別に風魔法で“空を飛ぶ魔法”を教えてやる!」
「えっ、飛べるの!? というか空を飛ぶ魔法って風魔法だったの? ヒロのも?」
「ヒロのは違うな。あれは空間ごと浮いてんだ」
「そう……なのか……?」
「僕はこんな感じに……よっと」
僕はふわりと浮かび上がった。
「もう箱無しでも飛べるんだな」
「飛びたいって思ったら飛べるようになったんだ〜」
「参考にならねぇ!!」
お兄ちゃんは頭を抱えた。
「兄ちゃんは風で体を支えるんだ。
ほら、風を下に流して……」
「こうか……? うわっ!!」
ドンッ!!
「いってぇぇぇぇ!! あごが!!」
「そりゃ最初から上手くいかねーよ」
ヒューイはケラケラ笑っていた。
僕は空中でぷかぷか浮かびながら、
お兄ちゃんの練習を見守った。
お兄ちゃんは何度も転んで、
何度も砂まみれになって、
それでも諦めなかった。
冬休みの終わりが近づくころ。
「……できた……!
ヒロ、見てろよ!」
お兄ちゃんはふわりと浮かび、
空中で姿勢を保った。
「すごい! 兄ちゃん飛んでる!」
「やったぁぁぁぁ!!」
そのうち、十数メートルの上昇と下降もできるようになり、
僕たちは一緒に空から景色を眺めた。
夕焼けの街が、
いつもよりずっと広く見えた。
「次帰ってくるときはさ、街まで空飛んで行こうね」
「おう! 絶対練習してやる!」
僕はニヤニヤが止まらなかった。
ここまでお読みいただき、ありがとうございます!
本日の「一挙10話公開」はここまでとなります。
明日からは、毎日7:00または18:00ごろに、1日1話ずつ更新していく予定です!
これからヒロがどうやって神々の搾取に立ち向かっていくのか、
そして新しい精霊たちとの出会いや、規格外の魔法修行……。
行けるところまで全力で投稿し続けますので、ぜひお付き合いください!
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