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第七章 二回戦 vs小田 耕三1

 盗みで数回逮捕され、釈放された前科者。彼の名前は小田 耕三。コロシアムの出場者だ。いつもは鉄筋屋で働いており、今日も変わらぬ一日を過ごした。休日には、殺し合いにも発展する出来事があるかもしれないのに。

 仕事終わりでアパートの101号室へ帰り、コンビニで弁当を買い小さなちゃぶ台に置き、洗面台へ。そして自分の姿を見る。髪の毛はそんなに無く疲れた顔、お腹も出ている。着ている服も普段着が工事で働いていると分かるような服装で、ビール腹。

 そんな彼の元へ、スカウトマンと名乗るサングラスを掛けたスーツ姿の男性が現れた。次の、対戦相手の情報を持ってきて。



            ▼▼



「子供じゃないか!?」

「子供だが、先の戦いで人間を一人、殺している。その映像を見たが見事だった」

「対戦相手は?」

「三木島 裕也だ」

「……あの元ひきこもりの爆弾作りの奴か」

「知っているのか?」

「喋った事がある程度だが、まさか出場していたなんてな」

「元々奴は、去年のコロシアムでもベスト8まで昇りつめた男だ。ただ残ったと言っても、当時は運が良く戦いに勝利し、調子に乗ったところで実力差を見せつけられ、涙や小便を垂らしながら助けを請うっているがな」


 その時の映像を、携帯で見せて来る。確かに助けを請う姿は、なんとも惨めだ。だが、去年となるとすでに耕三は刑務所におらず、現在は真っ当に働いている。

 耕三は紙に書かれている情報を見る……が、殺した経歴が少しあるだけで、あとは普通の子供のように見える。


「どうして12才の子供が……こんなコロシアムなんかに……」

「経緯は分からないが、子供ながら既に何人にも手を掛けている小さな殺人者だ。甘く見ていたら、お前が死ぬぞ。小田 耕三」

「分かっているよ。だが……話し合いで解決出来ないかな? こんな子供を、俺は殺したくない」

「だったら直接言うんだな。ただ、こちらから言える事は一つ……。ただの子供じゃない、それだけだ」


            ▼


「いぶし銀の耕三? なにこれ」

「あだ名みたいなものね、昔からの盗みの常習犯で、昔の刑事からはそう言われていたらしいわ。犯罪歴は長いけど全て窃盗罪で捕まっている。殺しの経験はなし。一回戦の戦いでも殺しはせずに生かしているわ」


 白嵜公園にて、椅子とテーブルが執事によって用意されており、その椅子に座っている二人。メイドが紅茶を入れて紀美代の前に置く。どうも、と軽く会釈すると、メイドも会釈を一つ。


「この情報って、最低限の情報しか載せられてないんだよね?」

「えぇ、そうね。大我君が武器を使う子供とか分からない様に、向こうも何か習っていたのか分からないのよ。勿論、私達スカウトマンもね」

「ふぅ~~ん」


 大我はクッキーを食べて、じっと小田 耕三の写真を見ている。紅茶を飲んでクッキーを流し込み、


「”盗み”に関する能力って考えた方がいいのかなぁ。それとも、格闘技を習っていたと考えてそっち方面で考えた方がいいのかなぁ。それか両方か。対峙してみないと分からないなぁ~~。ん?」


 ふと、職業欄を見る。鉄筋屋と書かれているのを見て、首を傾げる。


「紀美代さん、鉄筋屋ってな~に?」

「簡単に言えば、工事現場とかで足場があるでしょ? それを組み立てている人達よ?」

「つまり、結構な体力や筋力を使うんだよね?」

「そうね。そっか、そこから盗みに関する能力とは別のが選ばれる可能性はあるわね」

「前の戦いだと、爆弾を作ったってところを考えたんだけど、実際はビー玉サイズの物体に漫画やゲームのような四大元素みたいなのを内包するか、地面や壁に叩きつけて使っていたから、引きこもり中に得た知識とか願望が表に出てたっぽいんだよねぇ。この人は、ちょっと距離感気を付けないといけないかもぉ~」


 椅子の背もたれに身体を預ける大我。紀美代はふと、周りの執事やメイドを見る。この人達は、必ずというわけではないが、大我の周りにいる人達であると分かる。最初と二回目、そして今回でも同じ人がいる。お金持ち……の子なのだろうか。

 が、気にしない事にする。どうやら、色々とわけありのようだからだ。


「大我おぼっちゃま。私達が更に調べてきましょうか?」


 執事の一人がそう言うと、大我は、うぅ~~ん……と首をひねり、


「いや、大丈夫。多分必要はないと思うよ。頭使えば~~多分行けるかなって。それに、これだけでも色々とやれる事はありそうだ。問題は、スタジアムが毎回変わるってところかなぁ。僕は次が二回戦で違うステージに行くって言われても地形やら建物が分からないからなぁ。それに、コロシアムの簡単な説明で引っかかるのが……いや引っかかる項目は複数あるけど、これ」


 大我がコロシアムの簡素な説明の紙を見せて、指で差す。

・コロシアム自体、とある犯罪者が作り出しており、誰なのか知ってはならない。知った者は問答無用で殺す。

 この文に違和感を持ったのか、口をアヒル口にする。


「この”とある犯罪者が作り出しており、誰なのか知ってはならない”って文だけどさ、この二つ上の”呼び石から力を得た人間は、欠片がある場所でしか発現出来ない”って文と掛かってるよね。更に一つ目の、”コロシアムが作られている場所には、呼び石の欠片が埋め込まれている”って文にも掛かってる。ってことは、あそこには少なくとも、”地下に呼び石の欠片と能力を得た犯罪者がいる”事を示唆しているようにしか思えないんだよねぇ」


 大我はその説明の紙と、小田 耕三の資料をテーブルに置く。


「きっと過去にも僕と同じように考えた人がいるだろうけど、戦いながら探す事は出来なかった。んで、このコロシアムがどのくらい長くやっているのか分からないけど、少なくとも12年前まで以前もやっていた可能性がある~~よね?」


 真剣な顔をして紀美代を見て言う。紀美代は大我の言葉に、突然の考えに飲み込まれる。これはそう、初めて会った時に語った、お義父さんと兄の事を話していた時と同じ、あの状況と同じだ。


「だから一回戦目、建物だったから重点的に調べてみたんだけど、どこにもそれらしき人物が近くにはいなかったんだよねぇ。ただ一か所、地面だけを除いて」


 地面だけを除いて?


「建物って、建てられている構造的に地面にも色々と打ち込む作業があるんでしょ? 前の戦いの時もそれが反映されていたんだよねぇ~~。それって、普通の人は考えるのかなって」


 大我の手にはいつの間にか鉄の棒を持っており、椅子を一定のリズムで叩いていた。


「それってつまり……建物を作っている人は、建築物に対して何かしらの関りがある犯罪者の可能性が高いってこと?」

「かなぁって思ったりしたり。今度の戦いと、その次の戦いで、ある程度は絞りたいよねぇ。それと、上層部っていうのも気になるし……。気になる事だらけだなぁ~~」


 そう。大我の言う通り、所長よりも上である上層部というのが、どういう者達なのか知らない。そもそもどうして呼び石というのがあるのか。そこを気にしたらいけないのだろうが……つい考えてしまう。

 考え方、思考が大我に近付いてしまったようだと途中で気づく紀美代。大我は難しそうに考えている。


「まぁいいじゃない。優勝して賞金得る時に聞いてみたらどうかしら?」

「優勝か……。確かにそれもアリかもねぇ~~。賞金はどうでもいいけど、千葉ナントカは殺しておきたいし、上層部ってのにも会ってみたいし。人間だと思いたいけどねぇ~」


 最後の一文だけ、ちょっとだけ引っかかる。人間だと思いたい?


「ほら、呼び石なんていう石を見つけたのか分からないけど、こんな事をしているんだから、ろくでもないでしょ? だから、本当に人間なのかなって。実は宇宙人だったり」

「あぁ~~。SFみたいな話しね。けどそうだとしたら、私達人間は宇宙人の実験台にされてるわけじゃない? アメリカが関わってそうね」

「関わってない日本独自って可能性もあるよねぇ~~。だとしたら、結構僕、楽しくなってきたかも。まぁいいやぁ~~」


 大我は鉄の棒をテーブルに置き、紙を一枚取る。そこには、次の対戦日と予定地が書かれている。


「対戦日は今週の日曜日の午後二時、戦う予定地の場所は前と同じで、前と違うのは時間だけ。体調が悪いのかなぁ? なんて」


 悪い顔をした大我に、軽くチョップをする。ろくでもない事を考えたなと思ったからこその配慮。大我はもはや受け入れるだけで、笑って返すだけ。それだけで、この子はまだ子供なんだなと思う。


            ▼


 戦う日当日。本当に子供なんだなと、耕三は大我を見て思った。戦う建物は小学校。それもコンクリートで作られた立派な、新しい小学校。出入り口は大きく、その前には鉄の門があり、その門の前に大我と耕三、そして双方のスカウトマンがおり、現場スタッフが鉄の門を開ける。

 一人の司会者が大我と耕三を見る。


「今回のフィールドは見ての通り、小学校です。高校と違うので、耕三選手にとっては廊下や教室が小さく見えるでしょうが……」

「問題ないよ。君も、その、大丈夫かい? 大我君」

「大丈夫だよぉ。ありがとうね、おじさん」


 双方問題ないと発言したのを聞いた司会者は、背後を見る。


「では、最初は耕三さんが入って右側へ、暫くして大我君が入って左側へ歩いて、お互いに距離をとった状態になって下さい。それが確認次第、戦いを開始させます。宜しいでしょうか?」

「いいよぉ~」

「私も、問題はないです」


 紀美代は、とても低姿勢な男性だなと思いつつも、ベテラン犯罪者……と評していいのか分からないが、そういう類の人なのだと理解する。向こうのスカウトマンはサングラスを軽く上げてこちらを見ている。

 昭二さんの代わりになったとも受け取られてもおかしくないから、悪い印象を与えているのだろうか。


「では耕三さんから移動、お願いします!」



 第二回戦、白濱 大我vs小田 耕三の戦いが始まる。

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