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第四十三章 決勝戦 vs千葉 隼人5


 千葉は、聞こえなかった。確かに言葉を発したのだが、それを言葉として認識されなかった。それには大我もキョトンとしており、喉の調子の悪さかと声を出して調節する。


「あ~、み~”―”~、あ、この時点で反応しているのか。ヤバいね」

「……なんだ? 今の声? は。なんか耳鳴り…、いや合成音? が聞こえたぞ」

「僕にもさっぱりさ。どうやら、僕の能力は認識した時点で言葉として弾かれるみたいだ。だけどそうだね。これだけは言えそうかな? 僕は能力を使用している。君との戦いでは常に能力を使用しているのさ。勿論、僕の身体能力が加わっているから、どんな能力になるのかは分からない……のはフェアじゃない。だから、そうだねぇ~~」


 大我が何かを考え始める。それを見た千葉は能力を全て解いて、深呼吸に入る。それを聞いた大我だが、何もしてこない。余裕の表れなのだろう。ゆっくりと痛みを深呼吸で引かせてつつ、全身に紐を先程とは違いサポーターのように巻き、両腕にもバンテージが巻かれている状態でやや構える。


「(フェアじゃないと考えているあたり、俺に対しての攻撃は全て試していた可能性があるのか。嫌になるよ本当に。ただここで分かった事は何個かあるな)」


 一・白濱 大我の能力は複数持ちである。

 二・その能力名は言葉に発する事が出来ない(厳密には、知られてはならない)

 三・この戦いでずっと使っているという事は、全体的な能力向上の可能性がある。

 四・心を読む能力を有している。この時点で二つはあると考える。


「(戦いの最中に俺の考えを読んでいたか、その動きを先読みしている可能性がある。だとしたら三つが使用されているようだが、これじゃチートじゃねぇかよ)」

「確かにチートだね」


 大我が心の中で考えていたことを口に出して答えた。これは千葉の考える四つのうちの四番目が確定した。大我は考えるのを止めて、両拳を作る。


「フェアじゃないから、僕はこれから能力を使わないよ。読む事もしないから安心して。あ、これは言えるんだ」


 その言葉に、千葉 隼人の額に血管が浮かび上がる。怒りの顔にして


「――自分の能力の可能性をここで閉ざしてんじゃねぇぞクソガキが!! 能力をフルに使え!!」


            ▼


 司会者がその言葉を聞いて、疑問の顔を作る。


「おいおい、本当は連続殺人犯の奴が、何を言ってるんだ? いっちゃなんだが……チャンスだったろ?」

「確かに。今までの彼の過去の言動から見れば、それを受け入れて容赦なく戦っていたでしょう。しかし……」


 初老のスカウトマンが何かを疑問に思う。紀美代は初老のスカウトマンを見て、疑問の顔を見た。


「……何かあるんですか?」

「いえ。私は彼の戦いを長くとは言いませんが、出場をして無慈悲に殺してきましたからね。彼があんな事を言うとは、正直信じられないんですよ」


 紀美代は、千葉を見る。大我のおちょくりに猛反発しているようにも見えるが、こちらのスカウトマンから見れば、異例中の異例のようだ。


『おかしいなぁ~~。僕が能力を使わない事で、君に勝機が来たんだよ? 君は連続殺人鬼、しかも現在も人をこうやってコロシアムで殺している人間だ。だったら尚更、喜ぶべきじゃない? まさか、本気出されない状態で戦うのが嫌いだからなんて、清廉潔白みたいな事を言わないでよ? もう君の手ってさぁ、汚れてるんだから』

『んなの分かってんだよ。俺だってなぁ、今までなら能力に振り回される奴や、能力を使いこなした奴でも殺してきたんだ。能力を使わないってのは有難いさ。けどなぁ……千波 道只の復讐の為にテメェは代理で来てんだろうが!!』


 怒り顔で大我に接近し、高速のジャブからの右ストレートを放つが、それら全てを紙一重で躱した。


            ▼▼


 監視室では全員が黙って見届けているが、大我は躱し続けながら、溜息をした。


『確かに代理だよ? けどさ、どうこうしようが関係なくない? 使わなくても、実力差はあるんだよ? それに身長にも差があるんだからさ。ほら、蹴りも入れないと』

『言われたら出せねぇだろうが!』


 全てが高速なのだが、身体を壊さない程度の高速なので、大我は飽き飽きとしている。それが分かるように、大きな欠伸をした。


『うちのお兄ちゃん達の方がもっと速いかなぁ? これ、僕が楽しめないや。接近戦はゼロ点って感じだね!』


 左ジャブ、右ストレートをそれぞれ受け止めて握る。


『!?』

『はい、甘い』


 直後、電気が大我に流れたのか電気が走るが、構わずに両手に力を入れて、


 握り潰した。


『ぎ!? がぁぁぁ~~~~!?』


 離れようとするが、更に力を入れて、両手を完全に潰し砕く。それには監視員の者達が、特に慣れてない者達は痛そうな表情をする。

 所長は千葉 隼人を知っている。だからこそ先程の言動にキレた理由が分かった。


「大我君は人の逆鱗を逆撫でするのがうまいようだな。千葉 隼人のプライドに見事、傷を付けさせた」

「プライド……ですか?」


 隣に立っている一人の女性監視員が所長に聞き返す。


「千葉 隼人とは、考えて行動する、直感ではない利己的な犯罪者だ。だから千波 道只を本来見つける事が出来なかっただろう事態にも、その頭脳で対処してきた。が、それがこうもおちょくられているんだ。本人も嫌になるだろうな。だが、大我君はそこを楽しんでいる」


 千葉が目を見開き、砕かれた手を無理矢理鋼鉄の糸で戻し、歯を食いしばって剣を指と指の間から出現させる。


            ▼▼


「やっぱり、そういう事が出来るじゃん千葉 隼人~」

「殺す」


 突きや横薙ぎ、斜め下からの切り上げといった方向から攻撃をするが、それら全てが避けられ、腹部を殴られる。それも先程のダメージの比ではない、内臓に響きながらも背中にも影響を与える程の威力だ。


「殺すって言葉をちゃんと使ったね? それじゃ、僕も、殺すね?」


 大我が笑顔で言うと、足を掴まれ、思い切り振り回される。それも怪力による振り回しだ。千葉は頭に血が昇りながらも冷静になろうとする――、


「ほいほいほい!」


 が、怪力だったら出来るのか? と感じる地面への叩き付けに、防御が間に合わない。盾を出現させる前に移動して地面に叩き付けられている。身体から武器を出すか?


「(やるしか――)」

「身体から武器を出そうとしている可能性を信じて、もっともっと壊していこう!」

「!?」


 考えを読まれた? いや、感覚でそう感じただけか! そう思った時には、地面に叩き付けられ、両足が何かによって破壊される。


「ぎがぁ!?」


 千葉は上半身だけでも振り返って原因を見れば、大我が鉄の棒を二つ持っていた。


「(場所を移動させられたか。だったらどうする? やるしかねぇのか? 足を切断して、手を切断して、こいつを殺しに行くしかねぇのか!?)」


 覚悟を決めようとしたら、冷たい何かが両太ももを通り過ぎる。斬られたかとすぐに理解した千葉は、両太ももから棒を出し、鉄の塊を出し、鉄の剣を作る。


「わぉ~~、ちょっと離れた方がいいかなぁ~」


 その発言に千葉は立ち上がり、身体から剣を出して振り返って――、


「ほいほい」


 鉄の棒が両足を破壊し、仕込み刃が胸部に突き刺さる。その現状に、千葉が言葉を失う。


「やっと尻尾を出したかぁ~~。君って本当に演技がうまいなぁ~~。流石元プロレスラー。さっきの怒りの演技も良かったよぉ~。自分に対しても演技した君に僕は経緯を評して~~~」


 そのまま上に投げ、鉄の棒を地面に捨てて、殴る構えをする。ただの殴る構えだが、大我の身体の事を知っている者達からすれば――処刑台に近いだろう。それも、ただの構えじゃなく、円盤投げをするような構え。それに千葉は、身体中から剣を出現させ剣山状態にした。


「(考えろ考えろ!! 俺がここから逆転出来る事を考えて!!)」


 千葉は、周りが見えなくなった状態になった。大我はそのまま横殴りをして、一本の鉄の棒を掴み、伸ばして回転をし始める。そして真上に伸ばしつつ背後へと飛んで、


「潰す!!」


 剣山状態の千葉が地面に突き刺さる。その状態で考えが浅くなっているのに気付いた。


「(しまった! 今すぐ解いて――)」


 そう考えて――しまったが為に、真上から振り落とされ、剣山を壊し、頭に直撃した鉄の棒がめり込むのを感じる事無く、意識が途切れる。


            ▼


 司会者が映像を紀美代に見せない様にしようとするが、それを紀美代が手で司会者の手に触れて首を横に振る。


「大丈夫です。見せてください」

「……分かった」


 映像には土煙があり、真っ二つになったと思われる割れ方をした剣山が微かに映る。大我は仕込み武器を元の鉄の棒に戻し、もう一つの鉄の棒を持ち、思いっきり地面に落として地面を陥没させて、風を発生させる。


 晴れた先には、頭が潰され、身体が真っ二つになった千葉 隼人がいた。


 それを見た初老のスカウトマンは、溜息をする。小さく、終わったか、とこぼした。

 紀美代は、感極まって泣きそうになりながらも会場の中へと入っていく。


 司会者は映像に映っている龍宮寺 大門を見ると、頷いた。


「決勝戦!! 白濱 大我vs千葉 隼人!!」


 司会者が右手を上に、固く握り拳を作る。映像では紀美代が大我に近付いている映像が流れており、



 「勝者!!  白濱 大我!!」




 勝者の名をあげたと同時に、紀美代が大我を抱きしめた。



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