第四十二章 決勝戦 vs千葉 隼人4
白濱 大我の能力は、僕自身に対する全ての能力の低下、というマイナス面しかない能力だった
これには、監視室の解析班も、監視員も、所長も、上層部も、見ているであろうお金持ち達も……司会者や初老スカウトマン、紀美代……そして何より、近くで聞いていた千葉 隼人が一番に溜息をする。
「当たってほしくない考えだ」
「君が中々強いから、ゆっくりと、ゆっくりと解いていったんだ。そしたらそっちは強くなっていくから、そういう能力なんだって分かったよ。そんな事まで簡単にやるなんて、千葉 隼人って少年心を持ってるんだね」
「普通はお前みたいなガキが持つべきなんだけどな。だけど、それが分かればこっちも戦いようがあるってわけだ。ただ、こっちは頭を使うから普通に辛いんだけどな」
「ぶー! 僕だって使ってるんだから」
「そうです――、」
か、と返答をする前に大我が鉄の棒から降り、千葉が電気を纏ったハンマーで攻撃をするが、即座に鉄の棒で叩き壊され、拳銃も横に叩かれた。どちらも、叩かれる速度が先程の非じゃない。それを察知したのか、接近してきた。
先程よりも速く、三メートルの距離を一瞬にして無くすほどに。それを見た千葉は、覚悟を決める。
「(ここからが本番だ。さっきのじゃ遅すぎるから、もっと速く!)」
下から大楯を出し、その後に棒を出して掴み、背後へと伸ばして飛ぶが、伸ばしている途中で盾が壊される。が、棒だけは伸ばし続けた。
「千葉 隼人! こっからちょっとだけ本気で行くから! よろしくぅ!」
「(よろしくじゃねぇよ、この悪童が! わざと俺を逃がしやがったな)」
距離を十メートル程離れたのを確認した千葉だが、大我は笑顔で両鉄の棒を軽く振りながら走り出してきた。その速度だが、子供が出せる速度ではなく、大人でも出せない。
「このガキが!」
両手で拍手すると大楯が十六枚並んで出現し、棒が大楯から出現して大我を襲うだろう。だが奥では、破壊されている音が聞こえる。真直ぐにこちらに向かって、
「(この場合は想定されてないが、ちょっくら化け物退治といくかって考えであってるのか?)」
人間が単体で襲い掛かってくるような音じゃない破砕音の連続に、千葉は思考と実行を開始する。盾を足元から出して空中へ移動し、上から確認する。上からの棒も破壊しているが、途中で真直ぐに切り替えているのが分かる。
このまま盾から出ている棒へ飛び降り、斜めに滑りながら、再び太い棒を出現させ斜め上へと上がる。そして片方に大きなハンマーを持ち、雷属性を付与する。
「(これはどうするよ! 悪童!)」
思い切り大きなハンマーを投げると、途中で巨大化する。破壊して登場した大我が一瞬見えたが、ハンマーで見えなくなる。
「(雷属性が付与されているから、普通は触れないだろうと考えるんだろうが――)」
そんな考えも虚しく、衝撃と共にハンマーが打ち上げられた。途中で手を放したが、棒の上から見る大我は、一本の鉄の棒を野球バッドのように大きく振った状態でいる。やっぱりなと考える。
「(素材は鉄なんだろうが、電気が流れたとしても構いやしないくらいには度胸がある。そして何より――)」
打ち上げられたハンマーを見れば、同じ鉄の部分が完全に陥没している。
「(威力が違い過ぎる! なら、これならどうだ!)」
棒に触れると、棒の左右から大量の太い棒が出現し、中が開いて銃が出現する。それを即座に放つ。
銃弾が大我の元へと向かうが、構わず跳躍し、こちらに向かって棒を伝って走って来る。銃弾が落ちた場所では爆発が起きているが構わず、全ての銃弾を避けて来ている。
「(銃が駄目なのか慣れているのかと問えば慣れているが正解だなこりゃ! だったら次!)」
立っている場所から即座に飛び降りると同時に棒から斜め下に向けて棒が射出され、それに乗って下降。同時にその棒から再び大量の棒を出現させ、先端に爆弾を作り出す。
大我が全ての銃弾を回避したであろう無傷の状態で飛び降りようとした瞬間、こちらではなく爆弾を見た――、
「(驚いてねぇってか! 驚けよ糞が!)」
途中で大我が空中で停止し、そのまま後ろへと戻り消える。と思えば、真横から落下してきて、滑って降りている千葉に向けてターザンでやってきた。
「(折角爆弾作ったんだぞ? 浴びて来いよ!)」
そう考えながら盾を空中に無数に出し、剣山のように盾から出現させた。が、それらが全て、一撃で内側に向かって穿たれ、そして割られた。
「逃げないでよ~~、なんてねぇ~~?」
「趣味悪いよなぁお前は!」
真上から爆弾が降ってきて、千葉と大我の間を隠すと即座に爆発。その爆風に乗って千葉は吹き飛ばされ、棒を地面から出して伸ばし、それを掴んで撓らせながら着地する。
「(能力バトルってのは、こうやって頭を使い相手を出し抜くゲームだってのに――)」
すぐ近くで、地面を陥没させて着地する大我が――いや、怪物がいる。鉄の棒を持って。
「(頭脳戦じゃなく脳筋戦で来やがった。めんどくさいったらありゃしねぇ。こういうのも黙らせるのも俺のやり方で持ってこれるんだが――)」
「よいしょっと!!」
大我が鉄の棒を振り上げ、地面に向けて一気に振り落とすと、地面が更に陥没して揺れる。足場がグラグラとしている所を、横薙ぎで仕込み鉄の棒を伸ばして千葉に攻撃をする。
「(今回は一撃喰らっちゃまずいが――避けるしかねぇ!)」
その場で身を伏せて回避する。が、そのまま真上へと振り上げ、そこから真下へと落とす――軌道が見えたので横へ飛ぶ――だけでは足りないと直感で感じた千葉は、太い棒を出現させ、押し込むように自身を飛ばした。
直後、轟音と共に地面が陥没。その攻撃力だけは先程の比じゃないと考えた。
「(能力を下げるってのは武器にも適用されるのか! それじゃあ、まだ全開放されてるわけじゃないんだな! だったらどうする俺!)」
千葉が考えた事で、行動したことで、まだまともにやっていない事がある。それは、
接近戦。
「(いけるか? いけるのか? 俺が接近戦を。無理だよなぁ普通は。だが勝機がそこにあるとしたらどうなる? どうなるんだ?)」
一瞬だけ考えてしまった。再び横薙ぎが飛んできた。分かれ道は、ここ。身を伏せて、前へと直線に走り出す。
「成程ね!」
大我が何かを理解したのか、真上からの振り落としはせずに一つの鉄の棒にし、二つの鉄の棒を地面に刺した。こちらが接近戦を仕掛けてくる事を予測していた? それは違うと判断する千葉。
「(さっきの成程ねって言葉は、単純に言えば、接近戦を仕掛けてきたと考えているだけ! ここで勝機を見出すか? 千葉 隼人!)」
即座に飛び出したまま、両手に剣を出現させて距離を一気に縮める。大我は、待っていました! と言いたそうにその場で数回飛んで前に飛び出す。
「(剣は――駄目だ!)」
剣を捨て、拳にメリケンサックを装備し、全身に鉄の紐を巻き付け、電気を付与する。
「うわぁ! 速そう!」
「速そう――かよ!」
大我よりも素早く前に出て、左ジャブを放った。それを大我は、
じっくりと見ながら、内側に避けた。
「(こいつ、今の冷静に見たのか! 動体視力どうなってやがるんだ!)」
すぐに引っ込め、左ジャブの連続を大我に向けて放つが、全て紙一重で回避して見せている。その行動に千葉は、試していると分かった。途中から速度を上げたが、速度を上げる瞬間を見られたのか合わせられている。右ストレートも、左フックも右フックも、アッパーも、全て回避されている。止まっているわけではない。ちゃんと動いている。動いているからこそ、
「(動いているからこそ、こっちの攻撃が当たらねぇ理由が分からねぇ! 本当に能力低下の能力なのか!? 実は上げる方なんじゃないのか!?)」
千葉 隼人に焦りが出てきた。それを大我はニンマリと笑い、そして舌を出した。
「(舌を出した? なんだ? なんの理由がある――)」
直後、千葉の腹部に痛みが生じ、動きが止まった。
「が……あぁ、はぁ……」
「今、油断したでしょ? 駄目だよ油断したら」
「(油断した? 違う、油断させられた……。くっそ! 接近戦にしたのは間違いだったか!)」
「間違いじゃないよ」
返答した。その返答に千葉は、舌打ちをする。嫌な事だなぁと感じて――、
「!?」
千葉はそこで気付いた。今、騙されているのだと。
「てめぇ……。嘘ついたな……」
後ろに下がりながら、倒れそうになるのを必死に堪えながら、千葉は痛みに耐えながら口にした。大我は楽しそうに笑顔で、
「僕が本当の能力を喋るわけないじゃん! 駄目だよぉ、これは能力バトルなんだよ? ちゃんと能力で戦わないと! 僕はちゃんと能力で戦ってるよぉ?」
その発言に、再び全員が黙る。目の前にいる千葉 隼人を除いて。
「悪童がぁ……。いったい何の能力を使ってやがる!! 身体能力向上? 全体能力向上? 能力向上? なんでもいい! テメェの能力は、なんなんだ!!」
イラついた顔で叫ぶ千葉に、大我は楽しそうに、
「僕の能力は、――――――――、だよ」




