第四十一章 決勝戦 vs千葉 隼人3
「素の力か!!」
千葉 隼人はとうとう、辿り着いた。この戦いにおいて白濱 大我のこの力の秘密を。一撃喰らい、盾を壊されかけて、ようやく辿り着いた。
「(クソガキじゃねぇ、アイツは選ばれた側の人間ってやつか? はっはっは、笑えるぜ。能力の戦いにおいて素の力で俺の盾を壊してくるとは)」
千葉 隼人の能力は単純明快、”武器の生成と破壊された場合の強化値の上昇”である。そしてこの、武器の生成という範囲はとても広く、漫画やアニメのような表現も可能。光の斬撃を使えたのも、そういう剣を使用したという理由であるが、所詮は真似事であり、限界がある。
「(このコロシアムにおいて能力の限界ってのは存在する。だから俺は考えて考えて、肉体を鍛えて能力に合わせにきたってのに、あのクソガキは生まれた時から持ってやがるってことか? いや、使い方を教えたやつがいる。ソイツの存在がでけぇなぁ!! 糞が!!)」
盾に入るヒビがデカくなり、もう数秒で壊されるという所で、千葉は考える。どうすればいいかを
「(力関係の能力じゃないのなら、今までのシミュレーションは意味がねぇ! 一度全部破棄して、戦いながら構築し直しだ。その為にはまず――)」
盾がとうとう壊れて、大我の姿が見えた――瞬間、大我の目の前に盾を三枚出現させ、棒による押し出しで無理矢理大我を引きはがした。
盾の向こうでは大我の声で、あはは、という笑い声が聞こえたが、今はそれを考えている場合じゃない。適度の距離を稼いだと考えたと同時に千葉は、全ての能力を解除した。
大我は奥にいる。だが、千葉がゆっくりと立ち上がり、歩き始めた事で大我はその場から動かずにニコニコと笑っているだけ。
「(確かにアイツは、誰かにこいつを殺せと言われたら殺すタイプだが、一回戦の相手を殺したのはなんでだ? それは、アイツにも殺すべきだという考えが育てられているからじゃねぇか。そして今、俺を相手にその考えが、精神が鍛えられている。嫌になるぜ、本当に。俺が悪者で向こうが正義の構図だとしたら全然ちげぇな……。悪者と悪童との戦いじゃねぇか)」
千葉 隼人の能力は、効果付与も可能である。つまり、
”電気が流れている大きなハンマー”を作り出す事も可能。
それを見た大我は、楽しそうに笑う。
「それってあれでしょ! 有名な作品の、トールハンマーってやつでしょ! 電気が流れているけど、それで戦うのかな? ねぇ」
「黙れ! 少しは考えさせろ! これはちょっとしたパフォーマンスだ楽しんでいけ!」
もう片手にはハンドガンを作り出し、弾を”着弾したら爆発する”性質に変える。
重さは感じるが、そんなに重くはない。それが能力の限界に直結している。が、しかし、だ、が、
「お前は、全てを素の力で乗り越えてきた悪童だな?」
「あれ~~? なんでそう思うのかな?」
千葉は、大我との距離が三メートルになった地点で足を止める。いつでも攻撃は可能だが、それは大我も一緒であり、大我の距離でもある。
ハンマーも普通に振れば間に合わないだろう、銃も撃つ前に近付くだろう、そう考える千葉だが、構わなかった。
「俺の能力の耐久値の限界を知っただろ。普通はな、そうやって限界があるんだよ。なのにお前の力には限界があるどころか、俺の能力の耐久値を超える攻撃でここまで俺を追い詰めた」
「そういう能力かも知れないよ?」
「俺もそう考えたい。だが、明らかにおかしいと思ったのは、お前のその武器だ」
千葉が見たのは、大我の持つ鉄の棒、一郎と二郎だ。
「それは明らかにお前の攻撃の耐久値に耐えられるように作られている。簡単に振っているが、とてつもねぇ重さの筈だ。だからちょっと触れただけでも”本来は死ぬ”威力だ」
考えながら、千葉は恐ろしい事に思い至った。それは、この戦いではあってはならない能力。
それを分かってなのか、大我は笑みになった。
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監視室では、皆が戦いに声をあげたりしていたが、突然の膠着状態……いや、会話による戦いの停止に戸惑いを出した。だが、千葉 隼人から出されている言葉は、大我の説明である。
モニターには上層部四人も映っており、見守っている。所長は机に肘を置き、千葉の言葉に耳を傾ける。
『千葉ナントカさんさぁ、何が言いたいの?』
『お前は悪童だ、それも最高のなぁ。だからこそ、多分だが、俺だけが辿り着いた答えがある』
『答え? なんの?』
『クソガキ、テメェの能力だ』
その発言に、誰もが動いた。分かったのか? 能力が。誰もが辿り着けなかった答えが今、一人の人間によって……しかも、十数分という時間の間に、理解したのか?
それは所長も、上層部四人も、そして……、
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現場にいる司会者、紀美代、初老のスカウトマンも映像を見ながら、千葉 隼人の言葉に耳を傾けていた。
『僕の能力の答えって事かな?』
『そうだ』
千葉が一度深呼吸をしたのちに、口許を笑みにして笑う。
『あっはっはっはっは! これが答えだったとしたら、お前はこの戦いの中でとんでもねぇ事をしていたことになるぜ! こりゃ上の奴等も、想像だにしなかっただろうなぁ!! なんせお前は、常に能力を使い続けているんだからよぉ!!』
その発言に、モニターに映っている監視室の人間達が、司会者が、初老のスカウトマンが、そして紀美代が怪訝な顔をする。
”常に能力を使用し続けている”
『どうしてそう思ったのかな?』
『これでも俺は、こういうコロシアムの戦いで、能力戦ってのをやってきたんだ。それだけ……アニメや漫画みたいな発言をするが、能力については分かっているつもりだ。能力の性質、何処までが可能で範囲的にどうなるのか、メリットデメリット、応用、それらを分かっているつもりだ。だがな、お前だけは明らかに違った』
そう言うと、千葉は両手に持っているハンマーと銃を見せる。
『能力ってのは限界がある。これだって、相手を殺す威力はあれど止められる程度の力しか引き出せねぇ。だから頭を使って足し算していくんだ。だがお前の場合、明らかに足し算じゃない。上がり方はむしろ……引き算だ』
『引き算……』
大我が言葉を開く。それだけで、悪戯っ子みたいな……悪童のような笑みになった。
『分かったんだ~! 千葉 隼人! 君だけだ~よ! 僕の能力の根幹に触れたのは!!』
とても嬉しそうに一郎と二郎を振って喜ぶ。千葉 隼人は唾を地面に吐き捨てて、睨む。
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「大人をあんまりからかうんじゃねぇぞ!」
「からかってないよ! 皆が必死になっているのを見るのが好きなんだよ! 必死こいて必死こいて、僕の能力について調べているんだろうなぁって思うと、本当に笑えるんだ!」
そう言って大我は、一郎と二郎を地面に刺し、跳躍し、その上に乗る。
「千葉 隼人。アンタはもう分かってるみたいだから、僕の口から言うよ。ドローンを通じて見ている人達も、上層部の引きこもり四人も、司会者さんや紀美代さんも、ちゃんと聞いてね~~」
両手を振って周りにアピールをする。それだけで千葉は、額に汗を流す。そう……引き算だ。
あっちゃならねぇ引き算だ。
大我は仁王立ちになり、空を見る。そして両手を広げて笑顔で、
「僕の能力! それは!」
そこで言葉を止めて、視線をゆっくりと千葉 隼人へと向ける。とても楽しそうに、とても楽しそうに、
そして告げる、能力を。
「僕自身に対する全ての能力の低下!!」
――――――その発言に、
上層部が、
監視室が、
現場にいる紀美代たちが、
静かになった。




