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第三十九章 決勝戦 vs千葉 隼人1

 ついにこの日がやってきたとばかりに、監視室はザワザワし始めている。それは、いつもならいない他の者達も見に来ているのだ。働く場所にも設置されているが、監視室の方が大きくいろんな角度から見れるとの事で、こういう場合は大体の者達が来ている。

 それは上層部の四人も見ており、そこから別々のお金持ちたちも見ている。名も顔も知らぬ世界のお金持ちが。

 

 そして現場では、既に戦う会場前に到着した大我と千葉 隼人が対面している。千葉の両手には、手錠がない。それでも千葉は何もしてこない。紀美代と初老のスカウトマンはそれぞれの選手である二人の背後に立っており、これから始まるであろう決勝戦の緊張感を、味わう。


            ▼▼▼


 司会者は、お互いにお互いの顔を見て笑っているだけで会話を中々しない時間が数分続いている事に、少しながら考えてしまう。事前情報として、この二人は会って会話をしたというのを知っている。だが、今回はお互いが最後……というよりも、言ってはなんだが殺人鬼同士ではある。

 なのに、その二人がどこか清々しい表情を作っている。穏やかだ、だからこそ不気味さがある。


「(この男が、千葉 隼人。兄さんを殺した……犯人)」


 紀美代の睨みに気付いたのか、千葉は紀美代を見る。


「お前があの男の妹か。悪いな、俺がお前の兄を殺した」

「ッ!」


 前に出そうになるのを、大我が鉄の棒を振って止める。


「今日だけは僕だけを見ておいた方がいいよ? どうせ最後なんだしさ」

「っお? そうだなぁ。過去の遺恨とかを全部背負ってるんだろ? いや、背負わされたってのが正解かな?」

「僕は勝手にやっているだけだよ」

「違うなぁ。お前は目的を持って殺しに来る奴だ。俺とは違う。子供が親に言われて行動しているに過ぎない。俺は自ら行動して殺しを行っている。大きな違いだ」


 千葉 隼人が両手を広げると、鉄の棒を二つ振って笑顔で左右に身体を動かす。楽しそうに。


「さて……入ろうか、千葉ナントカさん。僕と貴方が、ここでどちらが死んで、どちらかが死ぬ。それだけ、それだけだ」

「それもそうだな。じゃあ俺が先に入るか」


 千葉 隼人が先に会場へと入る。


 今回の会場は、平原。それが戦いの場として相応しいと判断された。


 司会者は、千葉 隼人の能力を知っている。知っているからこそ、この場所は千葉 隼人にとって相応しい。それでも白濱 大我ならやってくれると皆が考えている。心配ではあるが、殺しに関しては異常者ではある。だからこそ……期待値が高い。


「紀美代さん」

「……」

「紀美代さ~ん」

「え? あ、なに?」

「目で追ってたよぉ~~」


 紀美代が険しい顔で千葉を見ていたのを大我に指摘されてしまった。気付かなかったくらいには。


「後は僕がやるから、大丈夫大丈夫~~。そんじゃ、行ってきま~~すぅ。司会者さんも、よろしくねぇ~~」

「お、おぉ! 頑張れよ!」


 大我が鉄の棒を振りながら会場へと向かう。千葉は会場に入ると、そのまま止まらずに中央へと向かう。


「お互いに、結果がどうなろうとも……祈りましょう」


 初老のスカウトマンが紀美代の傍に行き、会場へと入って行く大我の背中を見る。大我も続けて中央へと向かって歩いている。多分だが、お互いに殴り合いをしたいのだろうかと考えてしまう。いや、そういう戦いを望んでいるのだろう。

 大我の行動が全て、物語っていた。何度も自身の攻撃を確認するように、訓練していたように。


「えぇ、祈ります。今はただ、大我君が無事帰ってくることだけを」


            ▼


「千葉さんさぁ~~」

「なんだぁ? クソガキ」

「これから僕に殺されるのに、なんか楽しそうじゃん」

「逆だよ、逆。俺がお前を殺せるから楽しそうにしているんだよ」


 中央に辿り着いた。お互いが距離をあけて見ている。


『お互いに、準備は出来た感じかい?』


 お互いの中央にモニターが出現し、司会者が映し出される。


「僕はいいよぉ~」

「……俺はちょいと待ってほしいな」


 そこで千葉 隼人は右手で頭を掻く。


『なんだぁ? 俺が折角、今回のコロシアム最後の司会者をするってのに』

「悪かったな。最後に殺してやる奴の……いや、ほぼ同種である人間と出会うなんざそうあったもんじゃねぇだろ? だからよ、ちょいと会話がしたいわけよ」

『……って事だが、大我君はどう思う?』

「いいよぉ~~。会話くらいしてあげるよ」

『……はぁ~~。その会話、聞かせてもらうからな?』


 モニターが上にあがると、大我と千葉は互いに見る。


「それで、なんのお話しをしたいのかな?

「お前、今までで何人殺した?」

「覚えてないよ。殺す奴は殺す。それをやっただけだよ」

「日本だけじゃねぇだろ? お前も、海外で人を殺してるだろ?」

「そうだねぇ。駄目だなんていわれてないからね」

「やっぱりな。人にアイツを殺すようにと言われたら殺すタイプってのは、容赦がねぇ」

「そっちだって自分で決められるんだから、容赦ないでしょ? 紀美代さんのお兄さんを殺しておいて、逃がさないよ?」

「だからお前は、誰かに言われて殺しているんだよ。俺からの有難い助言! 人を殺したいと自分で決められるようになれ!」


 楽しそうに言う千葉に、微笑む大我。


「その会話だけなら、僕と一緒に誰かを殺し合えたんだろうねぇ~~。だけど、やっぱり駄目だ。今の僕はそれに辿り着くにはもう少し時間が必要だ」

「……成程ね。教育はちゃんとされているわけだ。分かったよ、もう何も言わん」


 そう言って目線を、映像に向ける。


「終わりだ、司会者。始めてくれ」

『分かった。お前達の間では大事な会話だったんだろうな……。では!!』


 その言葉に、大我は両手を広げて鉄の棒を振るう。千葉は両手を振って、体勢を低くする。


『決勝戦!! 白濱 大我vs千葉 隼人!!』


 大我はゆっくりと息を吸い、両鉄の棒を握る。千葉は何かを握る動作をする。

 そして、始まる。


 始まる。


 始まる……、





























『ファイ!!!』































 大我は、両鉄の棒を地面に向けて叩き落し、千葉は指を鳴らして大我の足元に二つの十字の盾が出現、叩き落しによって破壊され地面を陥没させる。


「(馬鹿力め! 俺の盾を一撃で粉砕しやがった! これが能力? 試すか!)」


 両手に剣を出現させて、大我に向けて飛び、上から振り落とす。それを大我が振り上げて剣を壊し、身体を後ろに反らして――、


「(盾をいくつだ!?)」


 内心急ぎの判断をする。その証拠に鉄の盾を十個目の前に出現させた。だが、


「!?」


 嫌な予感を感じた千葉は、地面に着地後、後ろに飛ぶ。直後、鉄の盾十枚が地面に落とされ、割れる。


「今のを割るか!」

「逃がさないよ!」

「逃げ場はねぇよ! だが、作るもんだ!」


 目の前に剣の刃が十個出現し、交差して防御の構えを取る。


「なんか、あるよね!」


 大我が陥没した地面を蹴って、思い切り身体を反らして、剣を縦に割る。いとも簡単に。


「なんで簡単に壊れるのに何回も出しているのか考えないとなぁ~!」

「感覚で分かってるじゃねぇか――よぉ!!」


 更に離れた千葉が、離れながら下から鉄の壁を出現させながら背後へと飛び、離れる。だが、何かしらの攻撃をしてきたのか、轟音と共に二桁は出していたであろう盾の中央が全てにヒビが入り、割れる。


「(これでも強くなっていっているんだけど、これでも駄目か! 俺の能力からして、時間がかかるなぁ。だが、今の一撃は盾を強くするにはちょうどいい……んだけど!!)」


 大我がいる方向で轟音が聞こえたと思えば、斜め上へ飛んで、一直線に向かってくる大我がいた。千葉はそれを見て、鉄の盾と剣を交互に、それも巨大にして出して防ごうとする。


「(物体を大きくするって事が出来るが、何処にいるのか見えなくなるのが難点か?)」


 突きで破壊されたであろう盾が消滅する。地面を擦って停止し、鉄の棒を下から出現させて巨大な盾の背後を支えるようにする。普通ならば、これで耐えられ――、


「邪魔!!」


 再び轟音と共に、巨大な鉄の盾と剣が破壊され、鉄の棒には亀裂が入る。


「マジか!」

「大マジ!」


 巨大な盾を割って現れた大我の姿を見て、千葉は唇を舌で舐める。そして盾と剣、鉄の棒を消して再び鉄の盾を五個作り出して、鉄の棒を出現させて支える。


「君の能力を知ったよ!! 知って尚!! 真っ向から~~~~!!!」


 その言葉の後に、大轟音と共に盾がバラバラに破壊され、鉄の棒も縦に割れた。そして大我が、割れた盾の間から出現し、盾を蹴ってこちらに向かってきた。


「ぶっ殺す!!」

「お前!! やっぱり同種の人間だわ!!」


巨大な盾を三つ、鉄の棒を数十本交差させて強度を上げる。そして千葉は、盾の真下に人間が一人通れる隙間を計算して空けておいたので、そこに向かって走る。その間にも、大轟音が響く。だが今回は、盾が破壊されたが鉄の棒が破壊されていない。


「(盾の破壊された倍率を剣に注ぎつつ、鉄の棒はそのまま耐えてもらう!)」

「下からだよね! 分かるよ!」


 突如、大我が奥から出現し、こちらに向かって盾の下を通って来た。


「だよなぁ!」


 千葉が両手に刀を出現させると、大我も鉄の棒を左右に振る。


「いっくよぉ!!」

「こいやクソガキがぁ!!」


 二人の武器がぶつかり合う。剣が鉄の棒に壊されずに。



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