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第三十三章 準決勝戦 vs黒井 正弘4

 大我の真上で、ピエロの体液入りの大玉が爆発した。それに大我は――動かなかった。ピエロはとてもウットリとした顔で天井を見ていた。それは、果ててしまったという表現をする為。

 

 そんな中、外では違う事で大盛り上がりを見せていた。それはピエロ――いや、黒井 正弘にとっては、屈辱的ではなく、もはや生命活動に支障がきたす程だった。



            ▼▼▼


「(爆発した。体液爆弾が爆発した。今度こそ、濡れたに違いない。それだけで私は――)」


 ピエロは、匂いを嗅ぐ。いつもの部屋に漂っている匂いが――しない? そう思い大我を見れば、大我に体液が――かかっていない。


「――――え?」

「爆発して空気だけが出たけど、どうしたのぉ~~?」

「そ、そんな馬鹿な!」


 ピエロは慌てながらも二つの大玉を出し、大我の頭に向けて投げる。そして大我の頭の上で触れ、爆発する。だが、中から体液が出てこない。


「(何故だ!? 何故出てこないんだ!? 私の愛しい大我君……。君を私色に染め上げる為に必要な事をしてあげたいのに……何故、何故!!)」


 考える。考える。考える考える考える。何が起きたのか何が起きているのか何が原因なのか?


「(元に戻るという事は、この領域を壊す事になる。この状態だからこそ、最強の領域が出来るんだ。最後の最後に見せたがったが、つい見せてしまった……。大我君を私に染める為に)」


 黒井 正弘の能力は『奇術を扱える身体を作り出し、そちらに意識を全て送る』こと。デメリットは、本体は完全に動けなくなること。だが、だからこそ――この何処までも続く領域を作り出す事が可能となった。


「(……この領域内では不可能というわけか? ならば、ここは諦めよう。私ぃの性欲は何処までも湧くから、終わってからにしましょう)」

「そろそろ始めようかぁ~~、ピエロのおじさん。どうやら、ちゃあんと戦えそうだからねぇ~~」


 生意気な顔で言ってくる大我に、ピエロは笑顔になる。


「おじさんも、まだまだ分からない事があるそうだ。だけどね? 大我君。少しだけ被検体になってもらうからね~~!」


 大玉を大我の下から生やすと、大我は思いっきり両手で鉄の棒を持って振り上げて、


「今回はヤバそうだね!!」


 思い切り振り落とせば、大玉に触れて両足を上げる。直後、爆発する。その爆破に乗って大我が浮かび上がり、そのまま地面に向けて振り落とす。触れた箇所が陥没し、半径二十メートルは壊れる。が、すぐに元に戻った。


「成程ね!! 領域って事は、笑えるんだなぁ。面白いねぇ~~」


 地面に着地し、もう一つの鉄の棒を取り出して、思い切りお互いの鉄の棒を打ち付ける。それだけで振動が周りへと響く。その振動にはピエロの身体にも来たが、それだけ。本体ではないので、一切ダメージは与えられない。そう、与えられない。


「(地面にも影響がある振動を放てる力技。だけど?)」

「? この空間。おかしいね。すぐそこに客席があるのに、反射がない。他の所もそうだ。返ってこない。地面だけだ、返ってくるのは。つまり、ある程度の領域に行くと、進まなくなるのかな? それとも進行が遅くなるのかな?」

「頭がいいねぇ~、大我君。まさかたった一回で、この領域の一種のタネを見抜くなんて」


 空中にピエロ達が出現する。数は十人。喋っているピエロを含めれば十一人が同時に拍手をする。それに大我は、二つの鉄の棒を一定のリズムを当てて、周りをじっくりを見る。


「(何を考えているのか分からないけど、考えている大我君も可愛い……。おっと、いかんいかん。今となっては、体液は使えない)」


 だが、これは使えるか? と考えて一つのボールを全員が持ち、軽く投げる。大我には当たらないようにしている。ボールが地面に落ちると、水が出現してその場が濡れる。


「(おっと。これは可能か。だったら、色々と混ぜないといけないかな?)」

「成程ねぇ。ピエロのおじさんも、分かってないんだね? この領域ってのがどういう感じなのか。だとすれば……こうやってみよう!」


 即座に大我は突きで鉄の棒を飛ばし、ピエロが乗っている大玉に当てる。中身が空気だったらしく、破裂音と共にピエロが着地する。鉄の棒は即座に元に戻す。


「なるほどねぇ」

「何か分かったのかい?」

「出した物は途中で変更出来ないのと、本当にそれが出来るのかはまだ分かっていない状態。いやぁ、これはちょっとなぁ~~……考えないとなぁ」

「(彼にとって選択肢を与える事になる。その選択肢が、彼にとっては頭を悩ませる結果に繋がっているのだろうなぁ。だったら、こちらでもっと選択肢を増やしてやらねば!)」


 そう考えると、地面にいるピエロがその場で飛び、十一人のピエロが空中に留まる。両手にボールを出現させ、一斉にボールを――、


「全部が見えているわけじゃなさそうだ」


 その発言と共に、十一人のピエロの顔が一斉に吹き飛ぶ。大我が鉄の棒を振って首を奇麗に一閃。吹き飛ばした。その後、大我は鉄の棒をある程度の長さにしたら回し始めて、口許を笑みにする。


「完全に見えているのは一人で、他は自由に動かしているだけ。しかも制限ありだ。皆が皆、ピエロのおじさんみたいに動いてくれるわけじゃない」

「(正解)」


 全員が元に戻り、ボールを投げるのを止めて話しを聞くことにする。


「そして、一定の距離に行けば遅くなるけど、実際は加速しているんだろうねぇ? 一定のこの空間の、外側は」

「(それも正解。私が設定した領域を完璧に見抜くその慧眼。恐れ入るよ。今日初披露なのに、もうそんな予測を立てて正解させるなんて……流石だなぁ~~)」

「さらに、この地面!!」


 回転させた鉄の棒を落とせば、地面が陥没する。が、一瞬にして修復する。


「こうやってすぐに修復する、しかも破砕して石礫が出来るわけでもなく修復。つまりは、一定の空間内は固定されていて、外側は一定の距離に入れば止まったかのようになる。ただ、移動は出来るんだろうねぇ。つまり、遠く振れば速度を加速させて相手へと攻撃が出来る……って事に繋がる。これっておじさんのボール攻撃にも活用されるよね? 離れた位置から発射して、ここに到達するまでが分からないんだから」

「お見事!! 君の想像力は素晴らしいよ!!」

「さっき、音が返ってきたからね。おじさんの居た方向から」


 指を差したその方向には、突然巨大なボールが出現し、大我の方へ向かっているボールが見える。


「成程。さっきの振動、もう少し考えて行動すれば良かったかなぁ? 大我君」

「初めてなんでしょ? だったらタイミング分からないのは仕方ないよ、ピエロのおじさん」


 そう言いながら大我はピエロ達を全員指差して、笑顔で――、


「!?」


 ピエロの背筋に悪寒が走った。ただ大我が笑っただけなのに、背筋が凍った。その意味が何なのか分からないが……少なくとも、大我の笑顔によって引き起こされた事に間違いはない。


「今から僕が始めるのは、イリュージョンだよ!」


 大我が走り始めて前に向かって飛び出す。それをピエロ達が見守るが――ある場所で急に方向転換を行い、ジャンプした。それも――ピエロ達がいるところまで。


「まさかここまで飛ぶのかい!?」

「飛んじゃうんだなぁ~~。そして、分かった事が一つだけあるんだよなぁ~!」


 地面で発射されていた巨大なボールがそのまま射出され、大我が居た場所に触れて爆発。その爆風に乗ると同時に、鉄の棒を一つ、伸ばして振り回す。それも、途中で引っかからずに。


「まさかもう見切ったのかい!? 距離を!」

「音でねぇ~~!!」


 全てのピエロがカード化すると、そのまま天井に向かって飛ぶ。そして身体の向きを、顔を下にして、二つの鉄の棒を突く構えをする。カードがステージの真ん中に集まり一人のピエロとなると同時に真上を見る。そこで理解する。成程な、と。


「(遠くにいる時は遅く動いている……と? こちらからだとそう見えるが、大我君から見れば普通に動いている。何か考えているようだね? だが逆もまた然り。向こうからでは私の動きは遅く見えている。先に行動した方が負け……じゃない!!)」


 ピエロがその場で飛び、地面に着地すると、一斉に大玉が出現し射出される。


「(私は本体が倒されない限り、負ける事は一切ない!! ここで私の敗北は、絶対にないのだ!!)」


 恍惚な表情をしながら上をゆっくりと向いていく。


「(勝つのは私だ、大我君。これで君は私のモノに……)」


 そして完全に真上を見て、両手を開く。なんという、素晴らしい事なのだろうと考えながら。


 そう、考えたのだ。今の状況を。


「―――――――――――――――」


 一瞬にして光が薄くなり、ピエロは――黒井 正弘は、目を見開く。今目の前で起きている――言葉に出来ない状況を


「な、ななななななななな、なぁ!?」


 目の前全てが、鉄の棒とその糸によって膜が作られ、大我が何十にも、何百にも重なっている絵が目の前で起こっている。


「なんなんだこれはぁーーーー!!!??」



 

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