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第三十一章 準決勝戦 vs黒井 正弘2

 今日はとてもいい一日になりそうだ。可愛い男の子というのは、私の心の隙間を埋めてくれる可愛い子達。この二十数年間、捕まらずにここまで楽しく、己の欲望に抗いながら負けてきた。だが、負けた先にあるのは幸福だった。それが二十数年間続いたのだ。

 そして今回、私はとてもいぃ~~少年と遊ぶ事になる。それも、廃病院なんていう素晴らしい舞台で戦えるなんて……なんて良い日なんだろうか。私ぃ、病院、好きなんですよね?

 可愛く走り回る子供が、好きなんですよぉ。可愛くて~~。



             ▼▼▼


 ピエロは、手術室にて両手を振り、トランプのカードを出現させる。そして手術台に六芒星に置いていき、ブツブツと喋り始める。


『お互い、位置に付いたな。黒井 正弘、準備はいいか?』

「………………」


 司会者に言われて尚、ブツブツと喋ってカードを捲っている。


『おい、黒井。聞いているの――』

「黙っていろ!! 今集中しているんだ!!」


 その発言に、声のした方向から声が詰まる音がした。ピエロはブツブツ喋りながらゆっくりとカードを捲る。すると、ハートのエースが出てきた。それにはピエロはウットリとする。


「あぁ~~……いい結果だ」


 ハートのエースは、愛・情熱・無性愛の象徴。まさに今の私を表している。そう思いながら振り返り、口許でハートのエースのトランプを噛み、


「先程はすみません。いいですよ?」

『……分かった。大我君、準備はいいかい?』

『いいよぉ~~』


 あぁ、可愛いなぁ。おじさん、興奮してきましたよぉ。そう思いながら指を鳴らすと、カード五十一枚が空中に浮く。


『了解した。では準決勝!! 白濱 大我 VS 黒井 正弘!! ファイ!!』


 司会者の言葉と同時に銅鑼の音が鳴った。口に嚙んだハートのエースを右手で取り、


「先ずは小手調べから!」


 思い切り投げると、横回転して手術室から出て行く。他の五十一枚のカードも回転して出て行く。出て行く際に扉を切ったりして出て行く。切れ味はある証拠だろう。


「次だ。彼を見てみよう」


 両手を叩くと、一つの箱が出現する。ハテナマークが描かれた箱だ。そこに頭を入れると、とある部屋の隅に顔が出現する。そこには大我がおり、床を叩いていた。ピエロは分からないが、大我がいる集中治療室だ。そこに座って何かを考えている大我が見える


「(いる! 愛しい大我君があんな所に!!)」

「あれ~~? なんでそこにいるのかな~、ピエロのおじさ~ん」


 端っこにいるのに、直ぐにバレたらしい。顔がこちらを見ている。とても笑顔だ可愛い。


「ピエロは何処にでも現れ~る。そう!」


 ピエロが指を鳴らすと、手中治療室の至る所に箱が出現し、全てにピエロの顔が入っている。


「こんな風に、ね?」


 大我が即座に一つ壊すが、無駄な行為。全て同じであって同じではない、言うなれば、全ては嘘なのだ。だが、


「さて、どれが本物でしょ~」


 そう言いながら、選択肢を与える。これはトリックではなく、奇術でしかない。本当の顔は手術室にのみ存在しているのだから。


「どれが本物……って事は、全てが偽物の可能性があるわけだ。そして本来の狙いは~~~……これでしょ!!」


 大我が一郎と二郎を回転させて、飛んできたであろうトランプ五十二枚を全て叩き落す。それを見ただけでピエロはとてもいい笑顔をした。


「(成程~~。振動を使い空気を揺らして特定しましたかぁ~~。考えますねぇ? にしても、鉄の棒を回した時のチラッと見えたお腹、ヘソ、そして楽しそうな表情……。あぁ~~、凄く良い……)」


 ピエロは手術台に座って横になり、更に箱を出し、全ての身体を箱に包ませる。そうする事で、ピエロは全身を集中治療室へと登場させる。それも、複数体で。


「うわぁ~~。ピエロのおじさんばかりじゃない」


 トランプが全て破壊されている。だが、それは見えていた事。こちらとしては想定内。ここまで来たのだ、只の少年ではない事くらい想定できる。


「(只の少年ではない存在を、私のモノにしたいなぁ~~)」

「全て偽物なんだろうけど、本物なんだろうね。涎、出てるよ」

「おっとっと、これはこれはすまないね。けど、こうさせているのは君なんだ。少しだけ、遊んでいかないかい?」


 全てのピエロが大きな針の付いた糸を取り出すとそれを周りに向かって投げていく。至る所に。

 大我は部屋から出ようとするが、針と糸がそれを塞いだ。小さい身体でも通れるが、何か違和感を感じたらしく、糸に触らない。むしろ、気持ち悪そうにしている。


「(なんて感がいいんだろうか。そう、この糸に含まれている液体は、僕の体液だからねぇ。嫌がる君も最高だよぉ~~大我君……)」


 そう考えながらも至る所に張り巡らせ、止める。


「さて、大我君。君はこの状況からどうやって逃げるんだい? 能力を使って逃げるのかな?」

「ピエロのおじさん、趣味悪いよねぇ~~。こりゃ、ピエロのおじさんを攻撃しても、嫌な事が起きそうだなぁ、なんて」

「(本当に感がいい子だ。頭のいい子は、ナデナデしてあげたくなるよ。そう、偽物の私達は攻撃された瞬間に爆発する、爆弾ピエロ。だけど今回は、大我君の為に、特別に! 私ぃの体液爆弾を付与している。叩けば私の体液でべちょべちょ……。想像するだけで――――あぁ~~~~……いい)」


 手術台にいるピエロは、身体を震わせている。腰を動かしているのが、他のピエロにも出ているらしく、皆が腰を動かしている。それに大我は心底気持ち悪い顔をしている。


「(駄目だ、ちょっとガマン出来ない!)」


 そう思ったピエロ達が、全員で大我に向けて飛び出す。


「大我君ごめん! おじさん我慢できなくなっちゃったよ!!」

「あっそ!」


 大我が思いっきり鉄の棒を床に叩きつけると、床が破砕され穴が開く


「(なんと!! 大我君は力関連の能力者だったか!! 強引なのも大好きだぞ!!)」


 三階へと落ちる大我。ピエロ同士がぶつかり、白い体液がその場で爆散、床と大我が開けた穴に零れる。大我は当たらない様に移動したが、三階のリハビリ施設に既に居たピエロによって見抜かれて大我の前に現れる。


「三階に降りて来るだろうと思ったけど、こうやって降りて来るんだね~~。おいたはいけないぞ?」


 全ての視覚、聴覚、味覚、触覚、聴覚は本体と同期しているが、ダメージは本体には入らない。


「おじさんも本物じゃないね。本体は別室だろうねぇ~~。どこか考えないと!」


 下に振り落とそうとするが、その真下にピエロの顔が出現する。


「真下から見る大我君も可愛いねぇ~~」

「おっと!」


 落とす方向を斜めにして叩き、反対方向へと飛んで回避する。同時に、大我の下に出現したピエロの顔がその場で爆発し、炎を出現させて床を燃やす。それらを見ていたピエロは、笑顔で大我を動きを見ている。

 大我の着地した背後の床にピエロの顔が出現する。


「いいお尻だねぇ、大我君」

「気持ち悪いなぁ~~」


 その場で飛び上がり天井を叩き、吊り下がる大我。服が落ちてお腹が見える。それだけでピエロは股間を大きくさせ、満面の笑みになる。しかし大我は、何かを考えている。何を考えているのだろうか?

 しかし、


「(そんな風に考えている大我君……。真剣な顔をしている大我君……。是非とも、そんな君の口も堪能したいよぉ)」


 恍惚な笑みになる。ふと、大我が何かを思いついたのかその場から外に向かって飛び出した。何をしようとするのだろうか?


「逃がさないよぉ~~!」


 ピエロが即座に大我の真横に付くが、そのまま大我は外へと飛び出した。何故?

 

 その答えが、目の前で起きた。


 先ずは、鉄の棒を天井に刺しそのまま外へ。二つに割れた鉄の棒によって軌道が代わり真上へと。


「(まさか、あの鉄の棒は仕込みか! 刃があり糸? いや鉄の糸か?)」


 ピエロが外に出て見る。刺した鉄の棒が天井を破壊して真上へと伸びる。追いかけるべきか? いや


「(そもそも私に飛行能力はない。ならば、どうしたらいい?)」


 直後、轟音と共に振動が起こった。それは、建物全体に響くほどの轟音と振動だ


「!?」


 その振動に本体が起き上がり、耳を塞ぐ。それ程の振動と、建物が崩れそうな音


「な、何をしようとするんだ! 大我君!」


 自身の声が聞こえないくらいの轟音に、膝を付く。瞬間――、


 廃病院が、倒壊を始めた。


「な!?」


            ▼


「マジか!?」

「大我君!」


 司会者は捉えていた。大我が屋上で一つの鉄の棒をぶっ刺し、それを思いっきりフルスイングをして建物全体に揺れを起こしているのを。それを何回も何回も繰り返し、やがて廃病院が倒壊を始めた。


 音が二人の耳を襲う。


「振動によるってのは見て分かるが、全体的に、しかも力技だからってこんな事、普通出来るか!?」

「あの子の異常な感知能力とかですかね!?」

「感知能力!?」

「一回戦二回戦三回戦とも! 何かしらを叩きながら動いていたじゃないですか! 特に三回戦なんて、会場を壊す程の事をやってのけた!!」


 紀美代の言葉に、司会者は、ハッとする。


「つまりだ!! 最初の動きは、元々倒壊させるために動いていたって事か!!」

「そうとしか考えられません!!」

「なんて事をするんだ、大我君はよぉ!!」


 そう言いながらも司会者は何処か嬉しそうな顔をしている。

 倒壊している廃病院で、大我が落ちながら瓦礫を踏んで移動しているのを見ながら。




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