第二十七章 優雅な昼下がり4
今日の一日は、朝の六時から始まる。朝起きて、歯を磨き、料理をして、前とは違う騒動が起きているテレビを見ながら食事をする。そんな一日の始まりが私にとってはとても嬉しい。
朝の七時頃には外を散歩して、いつも歩いている道で警察が歩いているのを見ながら、変わらない日常を感じて、
七時半には大人たちが校門にいる小学校の前を通りながら、横を通り過ぎる大人と共に投稿する小学生と棒を二つ持った少年を見ながら、今日も元気だなぁと考える。
そんな事を考えながら八時には自宅に帰宅し、朝からシャワーを浴びて軽く汗を流して、身体を拭きつつもリビングで一つの資料を見て、準決勝の相手を見て、笑顔になる。
そんな、最高の始まり方が暫く続くのだ。その日が来るまで、私は待ち遠しい。
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「こんにちは」
あ、こんにちは。
「今日はお隣のお肉屋さんがお休みになってましたし、オーナーや店長もいなかったみたいですが、何かあったんですかね?」
どうやらお話しでは、子供達がいなくなったらしいんですよ。
「え!? あのお子さん二人がですか!?」
はい。いや私も、ここに来る前に、その店長とオーナーさん、そのご家族が張り紙を配られていたのを見まして。ほら、こちらです。
「……まさか、そんな事が。だから店員さんもソワソワしてたんですね。紙にはなんと?」
簡単に言えば、行方不明になった二人を探しています、誰かこの子達を見ていませんか? という内容でしたね。
「まぁ、それしか書けませんよね。私も協力したいところですが、警察が捜査している可能性もありますね。だったらむやみに動くのは良くないですね」
えぇ。それにしても吃驚しましたよ。通っている場所から、まさか行方不明が出るだなんて。
「そうですね。ただ、誘拐されたってだけなんでしょうかね。お金が絡んでないのであれば、警察も特異行方不明者として扱われて、捜査している可能性が高いでしょうから」
特異……行方不明者?
「十三歳以下、もしくは警察が”人命に関わる”と判断して、緊急性の高い捜索が必要とされた行方不明者ですね。ほら、誘拐とか自殺、殺人といった、自力で救助できない状態で、かつ通常の福江不明者届とは別に、警察が重点的に捜査をするって意味が含まれているんですよ」
へぇ~~。それじゃ今回の行方不明は……。
「前の高校生の件もありましたから、模倣犯……みたいな扱いになるかもしれませんが、少なくとも、何かが起きているのは確かですね。ただ、紙が配られていたとなると……お金は要求されてない可能性がありますね」
た、確かに。その特異~~行方不明者? という扱いで、かつ金銭が要求されていない状態ですからね。だとすると……。また怖い事件が発生してしまいましたね……。
「えぇ。私は親しくさせていただいていたので、酷く驚いています。今すぐにでも探すのを手伝った方がいいんですかね…?」
いえ、それこそ怪しまれてしまいますよ。こういうのドラマとかで見ると、知り合いだの仲良くしていたから探す手伝いをしてくれていただので、余計な捜査がされて疑われる可能性が高いですよ。ここは、私達が出る幕じゃないです。悔しいですが……。
「……そうですね」
話しを変えましょうか。そういえば、ずっとダージリンですね。他の紅茶はお飲みにならないんですか?
「え? あぁ、はい。気に入っているのと、リラックス効果があるので重宝しています。こういう場合でも落ち着かないといけませんからね」
確かにそうですね。リラックスしないと、いけない日もありますからね。そうそう、私、そろそろ勤務先が変わるので、あと少ししたら貴方とはお別れになっちゃいますね。
「おや、転勤ですか?」
えぇ、本部の方へ異動になりました。やっと私の頑張りが実ったみたいで。
「それはおめでとうございます!」
いえいえ。前に貴方から、ビシッと! を教わったでしょ? あれが役に立ちまして。今では営業部のエースなんて呼ばれてしまいまして。
「やったじゃないですか! 結構いい地位に就いたのでは?」
えっへへへ。実はそうなんですよ。これでやっと、本部にいる彼女に告白が出来ます。
「告白ですか~~。いいですねぇ~~」
はい。ここに異動した時は、何としてでも本部に行ってやる! って決めてましたからね。あれから数年間でしたが、頑張りました。けどやっぱり、最後の交渉は貴方のおかげですよ。
「私なんてなんにもしてないですよ。ただただ、お話しをしていただけです」
そのお話しがいいんじゃないですか。こういう場所って、一人で過ごす事が多いじゃないですか。それで色々と抱えちゃって、外に吐き出せないって言うんですかね? 同じ仕事仲間にも打ち明けられないといいますか。
「確かに、そういうのがありますね」
けど、それとは全く関係ないところでお話しをしてくださるので、非常に助かりましたよ。あの時、貴方が私にお声をかけて下さらなかったら、今の私はいません。そう断言できます。
「そう言われると、こう、むず痒いですねぇ。でも、私はただ貴方が疲れてそう、行き詰っているなと思って、お邪魔かと思いましたが、声をかけさせてもらいました。その結果、今に至ったのでしたら良かったです。最後にどうです? ダージリンでも。リラックスできますよ?」
……確かに。けど、私は最後の最後まで珈琲で行かせてもらいますよ?
「ほう。こだわり、ですか?」
一度決めた事は曲げずに、真っ直ぐ行くぞという意味を含めての、こだわりですね。今の言葉、漫画かなんかで聞いたことあるなぁ。
「あははは。どんな言葉でも、有名な言葉になってしまいますよ。それが大事な場面で言われて、聞いた側が”た、確かにそうだ”とか”かっこいい”とかで使ったりしますからね」
ですね。
「そうだ。栄転する貴方に一つだけ。前にお話ししたように、ゲーム機の件は大変参考になりましたよ。おかげで、私の心のモヤモヤが取れました」
本当ですか? それは良かったです。何か楽しいゲームでも?
「そうですね。こう、四人対戦とか、カードゲームとかは非常に参考になりました。なんとお礼をすればいいか」
いいんですよ。私にはそれくらいしか出来ませんから。あ、今日は……そっか。今は大変ですからね、お礼に何かプレゼントを、なんてのは出来ませんね」
「確かに。いいんですよ、気持ちだけで。それよりも、彼女さんとは付き合ってどのくらいに?」
もう直ぐで五年になりますね。
「おや? 結構早めの栄転ですな。向こうも成長した貴方には吃驚するでしょうね」
そうなってほしいです。あいつ、俺の事を待っててくれるって言ってくれましたからね。来週にはこの街からも出て行かなくちゃならないですが、貴方とはここでお別れですかね。
「そうですね。いや、最後の最後に、貴方のおうちで乾杯でもしますか? 実は株がいい感じになったので、使うお金に余裕が出来たんですよ。ですので、お祝いさせてください」
えぇ~、本当ですか?
「えぇ、本当ですよ。なんだったら高いお酒に高いお肉、買っちゃいましょ。勿論私が出しますよ」
それ言われると考えちゃうなぁ~~。分かりました、では……こちらの名刺に書かれている電話番号におかけください。そうすれば、当然ですが私が出ますので。
「分かりました。ほぉ、いいところで働いている方だったんですね。これを見てからだと、栄転も栄転、大栄転って感じがしますよ」
そう褒めないでくださいよ。最後の最後にってわけじゃないですが、ここのお子さん達が見つかる事を祈るばかりですね。
「確かに。今回ばかりは言葉の通りに受け取り、私は動きません。ただ、他の奥様側にも聞いて回るくらいなら、してもいいかもしれませんかね」
私の大栄転前に、警察の厄介にはならないでくださいよぉ? 折角できた友人が、本部に行く私を見送らずに消えるだなんて、考えたくはないですからね。
「た、確かにそうでした。いやぁ~、また前に出過ぎちゃうところでした。ありがとうございます。この件は私達には関係ない、でしたね」
関係ない、とは言い切りたくないですが、そうですね。けど、怪しい人物がいたら即座に捕まえましょうね。
「い、いやぁ、それは怖いなぁ。私ぃ、足は当時よりは遅いかも知れませんが、持久力には自信がある……と言いましても、やっぱり速度には敵わないですからね」
成程。いや、冗談ですよ。それじゃ今日はここまで、ですね。私が異動する日が決まりましたらお電話致しますので、宜しくお願いします。
「はい、分かりました。頑張ってくださいねぇ~~」
はい! 頑張らせていただきますよぉ~~。それではまた、ここでお会いしましょう。
「本当に、最後まで頑張ってくださいね」




